55 夏祭り息止め大会
とある町内。
夏祭りに合わせて、今年は「夏祭り息止め大会」なるイベントが開催される運びになり、今回は記念すべき第一回大会ということで、優勝者にはビール三カ月分の賞品が贈呈される。
いよいよ準備完了。
会場内のテーブルには水が満タンに入った洗面器が十個並べられ、老若男女十名の強者たちがそれぞれの洗面器の前に立った。
ルールは単純明快、一番長く洗面器に顔を突っ込んでいられた者が勝者である。
初めての大会ということもあり、集まった観客たちはみなが興味津々に見ている。
「それではこれより、第一回夏祭り息止め大会を始めます」
町内会長がルールを簡単に説明してから、ピーッと開始の笛を吹き鳴らした。
参加者十人がいっせいに洗面器に顔を突っ込んだ。
一分経過。
半分以上の者が顔を上げていた。
二分が経過。
息が続かず顔を上げた者が九人となった。
最後の一名が決まったので、町内会長がその者の耳元に向かって勝利を告げた。
「優勝ですよ」
最後まで残っていた者が洗面器から顔をゆっくりと上げた。
お婆さんだった。
お婆さんがニコリと笑う。
「お春さん!」
町内会長がお婆さんを見て驚きの声をあげた。
昨年の暮れ、お春さんは九十歳であの世に旅立っていたのである。
大会終了後。
町内会長からルール改正の発表があった。
「これまでのルールに加え、来年からは息をしていない者の参加は不可にします」
次回は「第二回夏祭り息止め大会」です。




