43 ポチのごはん
愛犬ポチを前にして、おじいさんはたいそうこまっていました。
「なんでも食べなきゃダメじゃないか」
「……」
ポチが首をふります。
「野菜は体にいいんだ。それに、いつもドッグフードじゃ味気ないだろ」
「……」
ポチがまた首をふりました。
「好き嫌いは体によくないんだぞ。さあ、食べてしまうんだ」
おじいさんはニンジンとピーマンが残っている皿をポチの前に置きました。
ポチは見向きもしません。
「オマエを拾ってやったのは、このワシなんだぞ。恩を忘れてはなかろうな」
「……」
ポチが皿に鼻を近づけます。
それでも食べる気はなさそうです。すぐに皿から顔を上げ、こまったようにおじいさんを見上げました。
「これを食べてしまわないと、次はドッグフードもやらんからな」
さあ食べろといわんばかりに、おじいさんは皿を手に取ってポチの口に近づけました。
ポチがキッチンへと逃げてゆきます。
キッチンからおばあさんが顔をのぞかせました。
ポチはおばあさんのうしろにかくれています。
「またポチに食べさせようとしたでしょ」
「ふむ」
おじいさんはプイと横を向きました。
「ポチのご先祖様はオオカミ。肉食なんですから野菜は食べないんですよ」
「ふん、進歩のないヤツだ」
「そんなことを言って。あなた、ちゃんと野菜も食べなきゃ」
「オレもご先祖様はオオカミだ。だからニンジンとピーマンは食えんのだ」
「よーく、わかりましたわ。次からは食事、ドッグフードにするわね」
おばあさんはあきれたように言って、スタスタとキッチンにもどっていきました。
ポチがニヤッと笑います。




