表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/132

33 赤の他人

 アパートに風呂がない。

 大の風呂好きのオレにとって、これはなによりも不満のタネだった。そこで、風呂付きの部屋を求めて引っ越したんだ。

 引越し先は六畳ひと間にバストイレ付き。

 学生の身分としては十分かな。でも、そのぶん家賃は高くなったけどね。

 収入は親からの仕送りだけ。それも決まった額だから、家賃の差額分、新しい生活は苦しくなったといえるけど……。

 不足分をバイトで稼ぐこともできた。

 でもオレは、働く気がこれっぽっちもなかった。あくせく働くぐらいなら出費を抑えて、生活費を切りつめた方がよほど楽というもんじゃないか。


 オレはさっそく辛抱を実行に移したよ。

 まずは食事を二度にしたんだ。腹がへっても死ぬことはないしね。

 さらに光熱費も節約した。

 電気、ガス、水道と、節約できるものはいくらでもあるんだ。

 風呂は水を減らし、沸かす時間も半分にした。それに食事を二度にしたことにより調理も減って、今のところガス代はかなり節約できているみたい。

 トイレは暗くても用がたせるので、いっさい電灯はつけていない。部屋も食事と本を読むとき以外はほぼ消しているんだ。

 近頃、特に節約しているのが水道だ。

 トイレの水は寝る前に一度だけ流してるし、三カ月前からは風呂の湯も交換していない。

 水は減ってゆく分だけ足しているので、たいして問題はないんだ。かなり汚れてはいるけど、がまんできないほどでもないからね。

 風呂に入るのは一人、使うたびに流すなんてモッタイナイじゃないの。おまけに水の入れ替えに掃除といった、メンドウな手間がはぶける。

 まさに一石二鳥というものだよ。


 生活は苦しいながらも快適だったよ。なんといっても毎日のように風呂に入れるからね。

 ところが最近。

 この快適な生活に突如として邪魔者が現れたんだ。

 で、ソイツは今、オレの部屋にずうずうしく居候しており、迷惑でしょうがないのよ。

 ソイツが現れた日。

 オレは朝から風呂にシャレこんでいたんだ。

 浴槽の底には、それまでの汚れがかなり沈殿していた。ブヨブヨしており厚さは十センチほどだ。それでもいつも足を置く位置、足形の分だけは薄い。

 右足を足形にそろりと踏み入れた。

 足の裏に、いつものヌルッとした感触が伝わってくる。続いて左足をそうっと……。

 足の位置は、いつもと一センチとたがわぬ場所にあるはずだ。わずかでもズレていたら、沈んだ汚れが巻き上がるはずだからね。

 浴槽の中央に縮こまって座る。それとともにゼリーのようなブヨブヨが尻に触れた。

 この感触がたまらなくいい感じである。

 ウヒッ。

 つい心の中でほくそえむ。

 そのときなんだ、ヤツが現れ出たのはね。

 どこからと思うかい?

 風呂、風呂だぜ。

 それも浴槽の足元からなんだぜ。

 ヤツは突如、浴槽の底からハガレルように浮いてきたんだ。

 ゲッ!

 もちろんオレは悲鳴をあげ、すぐさま浴槽から飛び出したよ。

 ところがヤツときたらな。

 よう、兄弟!

 なんて、オレに向かってほざいたのさ。それもいたって平然とした顔でだよ。

 それからさ。

 ヤツが同居人になったのはね。

 ヤツははじめ、コンニャクみたいにプニョプニョしていた。それが日がたつにつれ乾燥を続け、今では適度な硬さとなりつつある。

 色は黒っぽいけど。

 まあ、それはいいとして。

 問題は兄弟ヅラした横柄な態度なのさ。

 図々しさが鼻もちならないんだよ。

 ヤツはオレのアカから生まれたんで、兄弟って言われりゃ、たしかにそうかも知れない。

 でもね。

 がまんには限度ってもんがあるじゃないか。

 だから今日こそ、ヤツにこう言ってやるんだよ。

 オマエはアカの他人だ! ってね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ゴキブリが苦手なのでゴキブリが出てくるのではないかとドキドキしたのですが、あかから出来た謎生物でよかったです。
[気になる点] 前半と中半と後半。 個人的な感覚かもしれませんが、文体のちがいに、ビミョーな違和感を感じます。 後半があまりに読みやすいからかな、他の部分が普通に書かれているのに、なぜかかたく感じてし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ