21 不良娘
たびたび家出を繰り返す娘に、彼女の両親はほとほとこまりはてていた。
昨日も警察から連絡があった。これまで何度、頭を下げ交番まで迎えに行ったかしれない。
今日も日が暮れようとしているのに、娘はこれから町に遊びに出かけるのだという。
「この不良が!」
父は娘に怒鳴りつけた。
「ねえ、お願いだから家でおとなしくしてて」
母は泣き落としで言いさとす。
「いいじゃん。どうしようと、あたしの勝手でしょ」
娘は耳を貸さず、玄関を飛び出そうとする。
今日も夜の街を徘徊するつもりらしい。
だがこれ以上、警察にも世間にも迷惑をかけるわけにはいかない。それになにより娘自身が傷つくことになる。
「こんなことを続けていたら、強制的に施設にぶちこむからな」
父は強引に娘の腕を取った。
「そんなことしたら、もっとグレてやるからね」
娘がにらみ返す。
「施設は悪いところじゃない。同じような仲間がたくさんいるんだ」
「そうよ。一度、入所してみたら」
母も夫の後押しをする。
「イヤよ! そんな所、ぜったい入らないからね」
娘は父の手を振り切って、ついに家を飛び出してしまった。
この老夫婦には、もはや娘のあとを追う気力も体力もなかった。娘は達者で、とにかく走るのが速かったのだ。
七十歳にして、ボケてはいたが……。




