強制終了
「くそ!こいつらいつまで湧いてくるんだよ」
カントたちは現れたゴーレムを倒すという作業を繰り返していた。
当初はゴーレムの魔力耐性は一属性しかなかったのが二属性になり、弱点となる属性も個々で異なるようになった。
いつからか出現数も四体から八体に増え、難易度も倍増では収まらない。
二人とも得意とする属性以外の魔法も、一通り扱うことはできたので何とか打ち払うことができていた。
新たに周囲に十六個の魔法陣が出現する。
「また増えやがった」
「きりがないね。また弱点も減っているかもしれないし、それに数がこれ以上増えたら……」
結晶ゴーレムは、加速魔法【アクセル】の二重詠唱と同等のスピードを誇っている。
これまではサクサクと倒せていたから問題なかったものの、耐性の増えたゴーレムがこれ以上一気に出現したらエリザベスでは対応できなくなる。
「エリザは魔力を温存しておいた方がいいな。よし、ここからは俺に任せろ!【アクセル】三重詠唱!!」
エリザベスとて三重詠唱ができないわけではないが、魔力量に難がある。
ここで無理に力を行使するよりも、魔力に余裕があるカントが多めに片付ける方が合理的であると判断したのである。
三重詠唱によるスピードは圧倒的だった。
ゴーレム十六体ではカントの元に集まって袋叩きにする暇もない。
カントは、エリザベスに向かおうとするゴーレムを優先しつつ、炎の魔法剣を放っていった。
火属性に耐性がなければゴーレムは土塊へと返り、耐性があったとしても斬撃の物理的な衝撃までかき消されるわけではないため、壁際へと叩きつけられる。
炎の魔法剣を放った時点で残ったのは六体のみとなった。
エリザベスも、手を休めているわけではない。
残ったゴーレムを他の属性魔法で叩き壊していった。
ゴーレムが全て消滅すると、また正方形に近い部屋の淵に魔法陣が並んで出現する。
一辺当たり八個、計二十八個の魔法陣が二人を取り囲んだ。
「ああ、やっぱりまた増えた!」
「いつまでも同じゴーレムで引っ張りやがって」
カントとエリザベスの力を合わせれば対処できないことはないが、いつまでも同じようなことを繰り返してはいられない気がしてきた。
そして、カントには一つ気がかりなことがあった。
「ねえ、カント。ゴーレムの耐性、一体幾つまで増えると思う?」
カントの頭にもあった一抹の不安はそれだった。
ゴーレムの耐性が一つずつ増えていっている。
現段階では、弱点の属性があるから良いが、耐性が五属性となった時、それは別次元の話となる。
魔力完全耐性――もともと物理攻撃耐性があるこのゴーレムに魔法の弱点が無くなったらどう対処すればよいのか。
その状況が実現するかどうかは不明であるにしろ、それはカントにとっても恐怖であった。
それに、カントが絶大な魔力量を誇るとは言っても、やはりその量は有限である。
ずっと三重詠唱で魔法を維持し続ければ、いずれは底をついてしまうだろう。
二十八体のゴーレムが出現と同時に部屋の中央にいる二人に向かってとびかかる。
カントはジャンプして回転しながら円状に一閃を放つ。
崩れ落ちたゴーレムは四分の一にも満たない。
おそらく耐性が四属性になったのだろう。
(これはまずい。何か方法はないのか)
最近は魔法の扱いにも慣れ、危機的状況に陥ることなど無かったので、まだ余裕は残しているものの久々にピンチ到来の予感がした。
ただ、退路を断たれているわけではないので、いざとなったら退却することもできる。
自分たちの身の安全は確保できるが、強化されたゴーレムが鬼の里や山の麓の村などを襲ったら、壊滅は免れないので、実質は退却不可能であることを意味していた。
エリザベスが最後の一体に止めを刺すと、二人の努力をあざ笑うかのようにまた魔法陣が現れた。
(数はもう増え無さそうだけど、やっぱりまだ出てくるんだな)
想像どおりの展開にゴーレムの出現を待ち構えるカントであったが、あることに気が付いた。
(あれ?よく見ると魔法陣に赤い線が)
地面に浮かび上がった魔法陣をよく見ると、それぞれの中心に細い赤い糸のようなものが見えた。
(今まで気が付かなかったな。こんなの見落とすものだろうか?)
糸の先を目で辿っていくと、どの糸も部屋の入口の反対側にある壁へと集約されている。
そこにはビー玉のような小さな玉が埋め込まれており、赤々と光っていた。
「そこか!【ファイア・インフォース】三重詠唱!」
カントは可能な限り剣を属性強化して玉に突き刺した。
ガキンッ
部屋に鈍い大きな音が響き渡った。
その小さな玉は縦に亀裂が入り、急速に光を失っていく。
そこから伸びていた糸も次第に薄くなり消えていった。
そして、魔法陣は新たなゴーレムを吐き出すことなく、静かに消滅した。
「終わった……の?」
何が起こったか分からないエリザベスは茫然としていた。
「ここに埋め込んであった玉が魔法陣を発生させていたみたいだ」
「へえ、よくわかったね。全然気が付かなかった」
「なんか赤い糸みたいのが魔法陣から伸びてただろう?それを辿ったのさ」
「糸?そんなのあったかなあ」
(エリザベスには見えていなかったということか?)
「まあいいか」
首を傾げるエリザベスの反応に、まさか幻覚でもみたのではとの考えが浮かんだが、今の結果があるだけに幻でなかったことだけは確かだ。
深く考えることも必要ないと、思考を手放したカントであった
>「いつまでも同じゴーレムで引っ張りやがって」
耳が痛い痛い




