モンスタートラップ
これまでちらほらと出現していたゴーレムであったが、神殿に入った途端、そのペースが目に見えて上がった。
ざっと十倍ほどになっている。
頻度が高くなりすぎたせいで、まるで隊列を組んでいるかのようだった。
「侵入者が来たのを感知しているかのようですね」
「確かに。数が増えても弱い奴ばかりなら大したことないですが」
カントがノロノロと動く先頭のゴーレムを一蹴すると、ドミノ倒しのように奥のゴーレムまで概ね破壊された。
二人に十分な能力があるので、数が十倍になっても手間はそれほど増えていない。
それでもアクアゴーレムは破壊されないし、途中に結晶ゴーレムがいると速く動くため隊列みたいにはならないので、そこでドミノが止まってしまう。
これらを個別に対応しつつ、少しずつ神殿の奥へと進んでいった。
「この神殿の中ではゴーレムの残骸が消えるようになってますね」
これまでは破壊したゴーレムが土や岩となってもそのままそこに残っているだけだった。
しかし、この神殿に入ってからはゴーレムの残骸が間もなくして消え、神殿の中は整然と保たれている。
頻繁に出てくるゴーレムを片っ端から破壊していれば、神殿内がすぐに残骸の山で溢れ返ってしまうのでその対策がされているようだ。
暫く進むと、小部屋の入口が見え、ゴーレムの隊列が途切れた。
小部屋の入口から中を覗くと、部屋の中心に開けられた宝箱が置いてあった。
「どうやら、ここが話に聞いていた場所のようだな」
二人は周囲を警戒しながら部屋に入り、箱の中を覗いた。
「空ですね」
箱の中には何も入っていなかった。
「子供たちがここから何か持ち出したという話もないですし、ここで行き止まり。これからどうすれば……」
エリザベスがそんなことを呟いた時、部屋の四隅に魔法陣が出現し、そこからゴーレムが現れた。
「なるほど。こうやって出現していたんですね」
召喚術式の一種によりゴーレムを発生させているようだった。
「モンスターハウスのようなトラップかな」
土、水、木、岩――と続くが既に対処方法が分かっているので、二人は苦も無くゴーレムを倒していく。
部屋の四隅から中央に寄るまで待機するほどの余裕があった。
直に四体の結晶ゴーレムが出現したが、カントは炎属性が付与された剣で、エリザベスは土属性の付与された短剣でそれらを切り崩した。
「さて、次は何が出てくるかな。エリザベス姫、ここまでは雑魚しかいませんが、新種が出てくるかもしれないので念のため注意してください」
「ええ、本番があるならここからですね」
現時点で一番の難敵は、結晶ゴーレムであった。
魔法陣から順繰りに様々なゴーレムが出てきたが、結晶ゴーレムが登場したとなると更なる強敵が出てくることが想定された。
部屋の四隅に魔法陣が出現する。
やはり終わりではなかったようだ。
「さて、どんなのが出てくるやら……」
二人は背を合わせ、それぞれの剣を構えた。
「また、クリスタル?」
目の前に現れたのは、今倒したばかりの結晶ゴーレムであった。
「ネタ切れみたいだな。警戒して損したぜ」
カントは向かってきたゴーレムの一体に剣を振りかざした。
カキン
乾いた音が部屋中に鳴り響いた。
これまで易々とゴーレムを切り裂いていた炎の魔法剣が弾かれた結果だった。
「嘘だろ?!エリザべっふ、ぐふっ!!」
エリザベスに注意喚起しようと慌てて振り向こうとしたが、傍にあった宝箱の存在を忘れて体をぶつけたのであった。
エリザベスはというと、土の魔法剣で一体を切り崩したところであった。
残りの三体も同じように切り伏せた。
「見た目は変わりませんが、どうやら今のゴーレムには炎耐性が付与されていたようですね」
「なるほど。そういうことか」
それならばカントの剣のみが弾かれたことも説明がつく。
これまで結晶ゴーレムが全属性に耐性がなかったのは、このような展開を想定していたためということになる。
(本当にゲームみたいだな)
侵入者を試すために作られているようにも思えたのであった。
「それと」
エリザベスは付け加えて言った。
「私のことはエリザと呼んでください。戦闘中にエリザベスなんて言ってたら舌を噛みますよ。あと、堅苦しい敬語もやめませんか?歳も近いですし、私たちは「戦友」ですからね」
エリザベスは満面の笑顔を見せた。
この時、カントに余裕があったならエリザベスの申し出を断っていたかもしれない。
だが、丁度その時、次のゴーレムが出現したこともあって、深く考えるよりも先に既成事実が出来上がった。
「エリザ、次が来るぞ!」
「ええ!」
後世の聖典で、エリザベスがエリザとして語られているのは、この時からカントがそう呼ぶようになったのが原因である。




