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誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第2章 第1編 魔剣との出会い
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授業初日①

「私がこのクラスの担任のホフマンだ。もうすぐ今学期最初の授業が始まることになるが、それぞれ各講義室に移動してもらう。通常のホームルームは週明けの放課後に行うので、各自忘れずに集合するように」


 この王立魔術学園では、便宜上、学年ごとにホームルームが編成されるが、授業とは直接関係しない。

 普段は事務連絡がホームルームを通じて行われるほか、学校行事でもこのホームルームが活用されることがある。

 カントは1-Bに振り分けられた。

 一年目のホームルームはランダムに振り分けられることになっているそうだ。

 周囲には知らない生徒しかいないが、次の講義でアイリスと待ち合わせをしているため、特に気にする必要はなかった。


 その一方で、他の生徒の一部は、カントがアイリスの取り巻きと知っていたため、カントは密かに注目を集めていた。

 カントは知らないが、先日、ジェシカ一派との間で一悶着あり、新学期開始早々に双方の仲に亀裂が入ったとの噂が既に流れている。

 このため、皆、まだ様子見といったところで、カントに声を掛ける者は誰もいなかった。


「必修の講義の教科書は、全員分用意されている。まだ受け取っていない者は、授業開始前に必ず教務係で受け取ること。それでは解散」


 欠伸を堪えながら、カントは講義室へと移動し、アイリスの姿を探した。



  ※  ※  ※  ※  



 がやがやとそれぞれの生徒が会話している中、講義室の扉が開き、担当教官が姿を現した。

 まだ、室内が静かにならない中、説明はすぐに始まった。


「えー、この講義は『理論魔法Ⅰ』です。担当教官のカーノよ」


 カーノが話し出したので、講義室内は静まり返った。

 声は、彼女一人のものが響いている。


「この講義は必修ですので、教科書は全員に配布されます。また、履修制限はありません。毎年受講生が多いので、週3回同じ講義を行います。都合の合う時間に出席してください。もちろん試験だけでも構いません」


「想像以上に機械的な説明なのね」


 アイリスは、小声で隣に座っているカントに話しかけた。


「ああ、そうだな。味気ない気がする」


 この王立魔術学園は、いわゆる単位制を採っている。

 1科目につき1単位が与えられ、150単位以上取得して申請すれば卒業できるシステムである。

 講義形式の科目は試験さえ合格すれば単位が貰えるので、授業に出席する義務はない。

 魔法関連の講義は、初めて学ぶ生徒が多いので受講生が多いものの、聖典言語を始めとする言語学は初級科目を試験のみでパスする者の方が多かった。


「では、まず魔法の体系から説明をしていきます。この辺りは知っている人も多いと思いますが、魔法には火、水、木、金、土の5系統があります」


 そう言いながら、カーノは黒板に五芒星を描いた。

 その後、説明に合わせて図に色々と書き込んでいく。

 カントは、黒板に文字を書かれてもわからないことが多いので、聞き取ってメモすることにしていた。

 聞き逃せない分、難易度は高いが、不幸中の幸いといったところか、学習効果は高い。


 基本的には、10歳が受ける授業であるため、それほどレベルは高くないはずであるが、異世界人というハンディキャップはかなり大きいものであった。


「ふう、ずっと集中してるとすごく疲れるな」


 授業が終わると、カントは机に顔を伏せてため息をついた。


「この科目の試験合格率は7割らしいわよ。基礎科目なのに最初から容赦ないわね」


 受験資格がある試験をとりあえず受けておこうとする生徒もいるため、合格率は低くなる傾向にあるが、基本的に教科書の指定範囲を勉強すれば合格できる内容になっているという「優しい」設計である。

 選択科目は、単位が取れなければ諦めるという方法もあるが、必修科目はそうはいかない。

 何回も試験を受験して合格する者も珍しくなかった。

 後ろからはこんな声が聞こえてきた。


「お前、この科目は合格してたよな?再履修か?」


「ああ、基礎科目が評価Cでは就職先に優秀とは見てもらえないからな。もう一回受けることにしたよ」


 この部屋にいるのは新入生だけではないのである。

 一度、単位を取った講義科目でも再度試験を受け、良い点数が取れれば成績を上書きすることができた。

 中には全て評価Sを目指して卒業申請しない猛者もいるらしい。

 この学園を卒業すれば「エリート」と呼ばれるようになるそうだが、それは本当に勉強した結果といえるのだろう。


 しかし、肝心のカントは少し自信を取り戻していた。


「でも、この内容なら大丈夫そうだ」


「今はそうかもしれないけど、教科書の内容のうち、授業で話が出ないものが増えていくらしいわよ。教科書が読めなくては駄目になっていくと思うんだけど」


 アイリスは、簡単にその自信を打ち砕いた。

 試験の範囲が最初から決まっているため、授業ではその一部を掻い摘んで説明することになる。

 従って、教科書を読んで自分で勉強する必要があり、授業で習っていないという言い訳は通用しない。


「あと、前も言ったような気がするけど試験で字が書けるかも、問題よね?」


「うへえ、そういえばそうだった。当分の間、合格(パス)できないかもしれない」


 カントは頭を抱えた。


「さて、次は実技の時間ね」



次回実技編です。

現段階で座学は見せ場がありませんでした。

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