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誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第2章 第1編 魔剣との出会い
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授業初日②

 新入生は、全員初めての実技演習ということで、演習場は賑わっていた。

 実技の授業は、通常30名程度のグループが編成され、それぞれに1名の担当教官がついて行われる。

 特に説明はなかったが、この前測定した魔力量を参考に編成されていることは暗黙の了解となっていた。


 演習用の服に着替えを済ませたカントとアイリスは、指定の場所へと向かっていた。

 二人は噂が広がっていることもあり、各グループの近くを通り過ぎる際、アイリスはこちらに視線が集まっているのを感じていた。


「なんか私たち見られてない?」


「そうか?」


 カントが彼らに目を向けるとさっと目を逸らす。

 確かに見られてるような気もするが、カントに理由は分からなかった。



  ※  ※  ※  ※  



 指定の場所に行くと、そこには4人の生徒が待っていた。

 男子生徒2名、女子生徒2名という構成である。

 女子生徒の1名はあのジェシカだったが、その他の生徒は知らない顔だった。


「これで全員揃ったな」


 男子生徒の一人が言った。


「あれ?俺たちのグループだけ6人しかいないのか?」


 カントがそんな疑問をアイリスに向かって投げかけると、その男子生徒はやれやれといった表情で代わりに答えた。


「まったく、これだから平民は困る。ここにいるのは、魔力量が上級魔術師の基準以上の者か、またはそれに近い者だけだ。この年齢で上級魔術師がそんなに沢山同じ学年にいるわけがないだろ」


 これは例年のことらしいが、この人数でも通常より多めで、教職員からは豊作の年だと言われているようだった。


(ああ、そういうことね)


 ようやくカントも理解した。


「お前みたいな平民無勢がジェシカ様と同じグループに潜り込めたからといって、肩を並べられたなんて変な勘違いをするんじゃないぞ!お前とジェシカ様では、魔力量に天と地ほどの差があるんだからな!」


 どうやら、この生徒はジェシカ一派の一員のようである。

 先日もそうだったが、この派閥勢は余計なことまで口に出す傾向がある。

 こんなことで今後貴族社会を生き残っていけるのか、カントですら不安になる。

 しかし、自分が10歳だった頃を振り返ってみると、大して何も考えていなかったような気もするし、似たようなものだったのかもしれない。

 ただ、この男子生徒の発した言葉は、ある意味間違っていない。

 そんな気がしたカントであった。



「全員揃っているようね」


 そこに姿を現したのは、学園長のアリッサ・バロネ・メーデーであった。

 今朝、全生徒が一度に会した朝礼で短い激励の言葉を述べていたため、それが誰なのかを、全員が理解していた。


「基礎演習に学園長が担当教官として付くなんて聞いたことが無いわ」


 ジェシカは怪訝な顔つきでそれを口に出した。


「基礎だからこそ必要なのよ。貴方たちならこの意味が分かるでしょう?」


「暴走防止か」


 誰かが呟いた。


「そのとおりよ。少なくとも魔力量だけはエリートの貴方たちが入学早々事故を起こさないように私がいるというわけ。当面の間、基本魔法の使用は禁止。いいわね?」


「「「はい」」」


 全員が返事をした。

 カントとアイリスは、それだけが理由ではないことに薄々勘付いていた。

 カントたちは、まだ直接学園長と話をしたことがなかったが、学園長がカントの事情を知らないはずがない。

 通常の魔力暴走のリスクなら毎年のようにあるわけで、それが本当の理由ではないことは明らかであった。


「さて、この授業は魔法基礎演習。必修よ。基本的に全部の授業を受ければ単位は出るから安心してね。ただし、再履修はできません」


 学園長でも、事務的なことはちゃんと言うんだと全員が思った。


「普通だと、基本魔法を使うところから始めるんだけど、貴方たちは危険なのでそれができません。そこで、この授業では、特殊な武器を使って魔力の制御方法を体得してもらいます」


 学園長は、1本のサーベルを取り出した。


「このサーベルは、装置デバイス機能が組み込まれていて固有魔法を発動できるようになっています。これを使って、決まった量の魔力を使うという感覚を身に付けるのよ」


「学園長、私は魔剣を持っているのでこれを使って練習したいのですが」


 ジェシカが手を上げ、申し出た。


(そういえばあの時も持ってたような気がするな)


 以前、道中にてジェシカが盗賊を倒した時も、確かあの魔剣を使っていた。

 カントはそんなことを振り返ってみるが、同時に嫌な記憶まで思い出してしまったため、考えるのを止めた。


「確か金属性の固有魔法が一つ使える魔剣だったかしら?金属性の演習では許可しましょう。その他の属性では、このサーベルを使うこと」


 どうやら、学園長は魔剣の特性まで把握しているようだった。

 王城から帰った後に、魔剣の話を少しアイリスから聞いたのだが、魔剣は人の手で作ることはできないらしい。

 魔金属が使われているだけでなく、人には製造不能。

 道理で国宝扱いされるわけである。

 それを10歳の子供が持っているということ自体異例なことではあるが、それは、公爵家の権力がなせる業であり、そして何よりもジェシカの将来性が期待されているということを意味していた。

 学園に持ち込まれた魔剣の特性を知っていても何もおかしくはない状況である。


「さて、それでは早速始めましょう。まずは二人組を作って。ペアはこちらで指定します」


 学園長が、カントの相手として指定したのはジェシカであった。




お読みいただきありがとうございます。


次回、「授業初日③」

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