護衛隊
不毛なイベントが勃発したものの、カントは剣を手に入れた。
スーリラ卿にこのことを知らせて、早く騎士と名乗れるようにするか、それとも平民を名乗ったままで他の生徒を観察するか、カントは頭を悩ませていた。
そんな時、王城より使者がやってきた。
聞くところによれば、カントに宛てたエリザベス姫の書簡を持参したらしい。
「カント殿は、こちらに受取りのサインを」
カントはサインをした受取書と交換に、重みのある包みを使者から手渡された。
手紙というよりは、本でも包み込まれているのではないかという重量である。
表にはカントの名前、その裏にはエリザベスの署名とエリザベス姫専用の印影とみられるスタンプを使って封蝋がしてあった。
「なんか手紙とは思えない分厚さね。書面以外にも何か入っているのかしら」
ちょうどその場に居合わせたアイリスがそんな感想を漏らした。
「姫からは、御返事を伺ってくるように命じられております。今、内容を確認してください」
カントが封を開け、中身を取り出すと、字が敷き詰められた紙の束が姿を現した。
カントとアイリスは顔を引きつらせた。
「私は、字が読めないのですが、今すぐに返事が必要なのですか?」
カントが使者にそう質問すると、使者も顔を引きつらせた。
カントも日頃の努力により、少しだけ字が読めるようにはなってきているが、まだ文章をすらすらと理解するには程遠いレベルである。
従って、誰かに手紙を読んでもらう必要がある。
それから、長い時間をかけて、使者とアイリスが交互に手紙を音読し、カントに読み聞かせるという「作業」が始まった。
手紙は非常に長かったが、用件は単純なものであった。
内容を要約すると次のようなことが書かれていた。
・命の危ないところをカントに救ってもらい、大変感謝していること。
・この前、カントたちが城を訪れた際は、カントが顔を見せることなく下城してしまったので、大層腹を立てたこと。
・しかし、その非は父である王にあることを承知しているので、カントは何も心配する必要がないこと。
・カントには、自分の護衛の任についてもらいたいということ。
・護衛のことについては、王も了承しているということ。
「長いな・・・。この内容で何故王妃殿下の生い立ちから語られているのかさっぱりわからん」
不用意にも、カントたちは王家事情の細かい知識まで獲得できてしまった。
とは言っても、今後役立つかはよくわからない情報が殆どである。
「手紙というよりは小説ね。これを数日で書き上げたとは、ある意味才能に恵まれているとも言えるわね」
エリザベス姫は暇なのかという疑問がそれぞれの頭に浮かんだのであった。
「それで、最後の近く登城せよということについては、如何なされますか?」
長文を読み終わり、三人ともげっそりしていた。
※ ※ ※ ※
「要は、カントに王女護衛隊に着任するようにという要請ね」
「王女護衛隊?」
「この国には王家護衛隊が編成されているんだけど、特定の王族を護衛する小隊が編成される場合があるの。例えば王を守る近衛隊とかね」
「へえ、そんなのがあるんだな」
「王女殿下ともなれば、成人後は毎日公務をこなすことになるから、通常は成人に合わせて王女護衛隊という姫直属の親衛隊が編成されるのよ。まだ編成の話は5年以上も先のはずなんだけど・・・」
「しかも俺は学園に入学したばかりで、そんなお役目をこなせないんだがなあ」
カントは、既に王から学業に専念するようにという命を受けている。
王女護衛隊に着任すれば、学園で勉強している暇などないはずである。
「その辺りの意図については、エリザベス様から直接お聞きした方がよさそうね」
カントは姫に登城する日を指定してもらうように、都合の良い日のリストを添えた形で簡単な手紙を書き、それを使者に手渡して帰ってもらった。
※ ※ ※ ※
カントからの手紙を受け取ったエリザベスは、にやけながら何度もそれを読み返していた。
「すぐに返事をしないといけないわね」
カントが城に伺うべき日程を知らせるというだけの内容のはずだが、エリザベスの向かう机の上には二枚、三枚と、次々と羊皮紙が重ねられていった。
その手紙は、翌日同じ使者に配達が命じられた。
使者は、手紙をエリザベスから手渡された際、眩暈を覚えたという。
次回、王家の魔剣




