閑話 【神話】神の娘リベラ
「安息日たる本日、この教会を訪れた皆様に神の御加護がありますように。本日は聖典の中から、『神の娘リベラ』を音読することと致しましょう」
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『神の娘リベラ』
サイフィリアの西に小さな国があり、その国にある小さな農村にリベラという名の孤児が住んでいた。彼女は勤勉で、暮らしこそそれほど楽ではなかったが、村人たちともうまくやりながらつつましやかに生活していた。
ある日、国の兵士が訪れ、魔術師の才能があるものを選定していた。村の大人たちは、自分の子供に魔法の才能があれば生活が楽になるだろうとこぞって兵士のところへ連れていき、その才能を鑑定してもらった。しかし、村の子供たちが魔法石に手を触れても、顕著な反応はなく、村の大人たちはがっかりしていた。
リベラは身寄りがなかったため、興味のないこの一件には関わらず、畑で農作業をしていたのだが、村から帰る兵士が彼女をみつけ、魔法石に触れるよう促した。彼女ははじめ、それを拒もうとしたのだが、兵士の説得に折れて、魔法石に手を触れた。すると魔法石は光を放ち、粉々に砕け散った。
兵士は、リベラを城へ連れて帰り、詳しい鑑定を受けさせた。リベラの魔力は宮廷魔術師千人分を凌ぐことが判明した。
その国の大臣はこの結果を知り、リベラを恐れた。彼女がいずれこの国に反旗を翻すのではないかと。さらに、国王もリベラを恐れた。あれだけの有能な者が美女ならば、新王に祀り上げる者が出るだろうと。
リベラが村に戻った後、王らはその村に反逆者がいると称して軍勢を派遣した。リベラは魔力こそあるが、それを使いこなす教育を受けてこなかった。芽を摘むならまだ魔法が使えない今しかないと思ったのだ。村民の戦力など皆無に等しく、一方的な暴力に為されるがまま、村は壊滅した。当のリベラも無抵抗だった。
私たちは無実です。何も企てず、何の罪も犯していないというのに何故殺されなければならないのですか。
そう説得しようとする間に、リベラは兵によって切り殺された。
リベラが事切れた後、晴れた空に急速に暗雲が立ち込め、雷鳴が響き渡った。どこからともなく仰々しい声が辺りに響いた。
私はお前たちの神、この地を支配する者である。私は我が子にこの地を治めるよう命じたところだが、お前たちは罪なきその子を殺めた。お前たちはその報いを受けるだろう。
その声が止むとたちまち空はまた晴れた。地面に転がっていたリベラの遺体はいつの間にか消えていて、突如として空中に現れた光の中から、復活したリベラが現れた。白衣を身にまとったその少女は、美しく長い髪を風になびかせていた。農作業で日に焼けていたはずの肌は白い新雪のようであり、硬くなっていた手の指も汚れを全く知らなかったかのようにきれいになっていた。背中には白い鳥のような翼があり、頭上には光の輪が神々しく輝いていた。その一方で、目には光がなく、どこか遠くを眺めているようであった。
兵士の一人が、リベラに近づこうと一歩前に踏み出した。
近づくことを許してはいない。
その兵士は真っ二つに割れ、その場に崩れ落ちた。残りの兵士の何人かは悲鳴を上げ、残りの者は絶句した。その中の何人かが逃げようとリベラに背を向けた時、その兵士たちも同じように真っ二つに割れて絶命した。
遠ざかることを許してはいない。
動けなくなった兵士たちに彼女は問いた。
お前たちの理屈をもって何故かを問おう。
兵士たちは答える間もなく絶命した。
その日、王の寝床にもリベラは現れた。王族を始めとする関係者がその日のうちに死に絶え、国は滅びたという。
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「この一節の解釈については、諸説あり現代においても意見が対立しているところでありますが、当宗派においては、罪なき殺生は神が許されないとの告示がなされたものだとの見解を示しております。人に理由無き死を与えた者には、自らも理屈を述べることすら許されないのであります。また聖女リベラについても、文字どおり神の子であるとか、天使であるとか、はたまた神自身である一体説など意見が分かれております。しかし、聖女リベラが絶世の美女であった点においては全く対立がなく、聖典に書かれている内容も疑う余地はないとの見解で一致しております。ですから、この教会に飾ってある絵もそうでありますように、絵画中では美しい女性として、また正義の象徴として一際輝いた存在として描かれているのであります。また、この地の舞台となったのは―――」
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A「リベラちゃん辞めちゃうんだって」
B「は?マジかよ。祝福されてまだ間もないのに」
A「本当だよ。何が駄目だったのかなー」
B「自らが原因で生まれ育った村に火の粉が飛んだとなると、精神的負担が大きかったのかもしれないな」
A「えー盗賊に扮した兵士も事前に討伐したし、王もこちらで暗殺したし、それほど影響があるとは思えないんだけどなー」
B「まあ真相はどうであれ、尾ひれがついて歴史に名前が残りそうだからな。男なのに女として。兵士にも、王にも、大臣にも、その他行く所々で女の子扱いされて、あれは見ていて可哀そうだったわ。年頃の男子のプライドは大きく傷ついたんじゃないか」
A「私もそう思ってね。リベラちゃんに言ってあげたの。本当に女になる道もあるよってね」
B「・・・ドン引きだわ。リベラにとどめを刺したのお前じゃねえか」
A「えーなんで?」
B「なんで?じゃねえよ。仕事が増えた各部隊に謝ってこい。あと罰としてお前、リベラの後任が決まるまで執務代行な」
A「そんなー」
次回予告
「貴族になる」




