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誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第1章 異世界に飛ばされて
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戦いの後で

 カントが目覚めた時、ホテルの寝室にいた。

 あの時の戦いで魔力を使いすぎて、気を失ってしまったらしい。


「気が付いたのね」


 そこには、アイリスがいた。


「エリザベス姫からも事情は聴いてるけど、かなり無茶をしたようね」


「そうなんだろうな。体のあちこちが痛い。鬼はどうなったんだ?」


「それが、あるはずの死体が無くなっていたらしいの。まだ生きていたんじゃないかとの見方も出ているわ」


「馬鹿な!」


 あの時ふっ飛ばされた鬼の体は、あり得ない方向に曲がった状態で壁へと飛んで行った。

 あれで立ち上がれるとは到底思えなかった。

 仲間がいて、運び出したとでもいうのだろうか。


「【アクセル】を使ったあと、そのまま肉弾戦になったんでしょう?」


「肉弾戦というほどのものでもなかったな。二回蹴っただけだから」


「たったそれだけなの!」


 アイリスは驚きの声を上げた。


「【アクセル】は加速できるけど、身体能力はそのままなの。一定レベルを超える加速をする場合には、身体強化や風の抵抗を少なくする魔法を併用しないと体がもたないわ。今回のカントみたいにね」


 道理で体の節々まで痛いはずである。

 魔力制御ができない上に、効率が悪い方法で戦おうとした。

 それが体に大きな負担をかけたのだろう。

 魔力がすぐに枯渇してしまったのは、その辺りに原因があるのだと思われた。


「殆ど動いていないのにあれほど体にガタがきているところみると、相当高速で動いたのね。回復促進の魔法をかけたけど、暫くは激しく動かない方がいいわ」


「ああ」


 ガチャリと部屋の扉が開いてアイザックが入ってきた。


「やあ、気が付いたようだね。気分はどうだい?」


「体があちこち痛いです。実況見分はどうなったんですか?」


「ああ、それか・・・」


 アイザックは聞かれたくなかったというような表情をした。


「鬼が現場から消えたという話を聞いたかい?」


「ええ」


「当事者である君も、姫様も、そして鬼も消えてしまったら実況見分などできないだろう」


(どんなシリアスな話かと思ったら、アイザックさんの指示が悪かったというだけのことか)


 今回の顛末は、それほど複雑であるとは思えない。

 カントとエリザベス姫の証言だけでも十分であろう。


「そんなことよりも、また基本魔法を使って無茶をしたそうだね。そうそう死ぬことはないと言っても、何度もやっていたらいつか運悪く・・・ということはあり得るからね」


「面目ありません」


「まあ、今回はやむを得なかったのだから、君を責めるつもりはない。今後こういうことがないようにという願いを込めて、学園で色々と学んでもらおうとしているんだからね」


 そういえばそうだった。

 今ここにいるのも、全てカントのためなのだ。

 好意を受けているのに、無茶をしすぎてさらに迷惑をかけてしまったことをカントは反省した。


「何はともあれ、君はよくやったよ。それは誇ってもいいことだ。とは言っても、ここでゆっくりしている余裕はあまりないんだ。明日は、その体でも馬車に乗ってもらうから覚悟してくれたまえ」


 体中が痛いのに、常に複雑な振動をする馬車にずっと揺られ続けなければならない。

 激しいシェイクにカントの体は耐えられるのか。

 カントは、それを想像しただけで、体中から血の気が抜けていくような気分になった。



  ※  ※  ※  ※  



「もう一度聞くぞ。そのカントという者が【アクセル】を唱えてからどうなったのじゃ?」


 ナスタリア王国の現国王であるアルザレス・ロワ・ド・ナスタリアは、娘のエリザベスから、宿場街での騒動について話を聞いていた。


「だ、か、ら、壁にドドドドと鬼が突っ込んだのです!これ以上説明できることはありません」


 アルザレスは、何度聞いても娘の言うことが理解できずにいた。

 例え魔法で加速しても、その動きが全く目で追えないほど速くなるということはあり得ない。

 しかし、当のエリザベスは、何も見えなかったというのである。

 今回の事件は、上位種の鬼が出たという稀なケースであった。

 上位種の鬼ともなれば、魔術師の加速した場合よりも速く動けることは既知であるが、それでも動きが目で追えないという話は聞いたことがない。


「お前の言っていることが真実ならば、そのカントという少年は人間なのか?」


「その人外でもあるかのような言い方は、カントに失礼です」


 エリザベスは、頬を膨らませ、ぷいっとそっぽを向いてしまった。

 今回、エリザベスは妙にその少年の肩を持つ。

 エリザベスも女の子である。

 そういう年頃なのかと思うと、父親として少し寂しくなるアルザレスなのであった。


 エリザベスの話によれば、カントらが王都を訪れた際には王城にも寄るように申し付けているという。

 その機会に、自分もこの目で件の直接確かめなければならない。

 アルザレスは、そう固く決意したのだった。



◆―――――――◆―――――――◆―――――――◆



A「Lv.2が見つかったとの連絡がありましたので向かわせました」

B「へえ、よく見つかったね」

A「戦闘があったらしいです」

B「さて、確保できるかな」


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