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誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第2章 第2編ⅲ 古代遺跡
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魔力耐性強化型


 新たに出現した通路を進むと、その先には広い空間があった。

 さらに奥には幅広の階段があり、さらに奥のスペースがあるようだ。


「ゴールは近いんじゃない?」


「そうだといいけどな」


 階段に向かおうとする二人を待ち構えていたかのように、またもや床に魔法陣が現れた。


「エリザ、下がるんだ」


「うん」


 カントは、エリザベスをかばうように前に立ち、剣を構えた。

 

「またお前か!」


 魔法陣から現れたのは、またもや透明な体を持つゴーレムであった。


「待って!タイプが違うみたい」


 エリザベスが警告する。

 改めてそれを観察してみると、これまで倒してきた結晶クリスタルゴーレムとは異なる点があった。


「確かに。剣を持ってて体型はガリガリか」


 二人の前に新たに現れたゴーレムは、右手に剣を持っていた。

 切れ味が良いかまでは定かでないが、本体と同じように透明感のある剣だ。

 また、本体もこれまでのものと比べ体が細かった。

 人間であれば、「骨と皮だけ」と表現できるような体型だ。


「弱そうな体してるけど」


「ここで弱い敵が出てくるはずないよ。……ってカント、気を付けて!」


 ゴーレムは、二人の会話が終わるのを待つこともなく、カントの喉元目がけて剣を突き出して突進してきた。


「うわっ!」


 カントは慌てて体を斜めにずらしてぎりぎりで回避した。

 一瞬遅れていたら致命傷を負うところであった。


「空気読めよ、もやし!」


 カントも負けじと袈裟切りから左切上げ、右薙ぎと流れるように攻撃を繰り出すが、剣で防がれてしまう。

 ゴーレムの剣術は、学園で教えているスタイルとは大きく異なった流派であったが、剣さばきはカントよりも一枚も二枚も上手のようだ。


「【アクセル】三重詠唱トリプレット!!」


 単純に剣の腕だけでは不利だと早々に見切りをつけたカントは、スピードでの勝負に切り替えた。

 このゴーレムも【アクセル】の二重詠唱レベルで設計されているようで、三重詠唱のスピードの前には剣技の腕前など意味を為さない。

 カントの放つ胸部への強烈な突きがヒットした。


 キン


 金属を叩いたような高い音がした。

 ゴーレムに攻撃が通らなかった証である。


(火属性への耐性有り、と)


【ファイア・インフォース】の三重詠唱により強化された剣が弾かれた。


「【ウォータ・インフォース】三重詠唱トリプレット!」



 炎の魔法剣(ファイアソード)が効かない以上、火属性での攻撃は効果が期待できない。

 すぐさま剣に水属性を付加して水の魔法剣(アクアソード)を成し、ゴーレムを斬る。


 キン


 再び攻撃は弾かれる。

 水属性にも耐性があった。


 続いて、土の魔法剣(アースソード)木の魔法剣(エアソード)と攻撃を試みるが結果は同じであった。


「まさかこいつは……」


 なんとなく結果が見えきて無駄な気もしてきたが、一分の望みをかけて金の魔法剣(エレキソード)を打ち込んだ。


 カラン


 案の定弾かれてしまう。

 目の前にいるのは、五属性に耐性を持った難敵であった。

 加えて思わぬことも起こった。


「剣が……折れた」


 あろうことか、最後の一撃でカントの剣が折れてしまったのだ。


「カントの戦い方に耐えられなかったのね」


 度重なる三重詠唱による加速と属性付加――ただの鋼の剣ではこれらの変化に耐えられず、金属疲労を起こしてしまった結果である。

 その剣は、一般的な剣としては高品質な部類に属するものであったが、その使い手であるカントの能力が非常識すぎた。


(ああ、アイリスの前でどんな顔したらいいんだ)

 

 この剣を買ってもらって一緒に学園に帰る時のアイリスの笑顔がカントの頭に浮かぶ。

 戦闘中で気に病んでいる余裕はあまりないのだが、それでもいたたまれない気持ちになるのは避けられなかった。



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