表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の転生譚  作者: 優音 乙菜
第一章 教会
37/67

フィリス王国からの使者

ここの所色々忙しくて、更新が滞っています。ごめんなさい。

「ここはどうかな? 大きさと高さはいい感じだと思うんだけど」

 

 ハーシェが持っていたサクを傷心中のサクをシルバに任せ。僕と山椒魚さんとメイドさんの3人は、結晶蜂の巣箱を設置するのに丁度いい場所を探して教会の裏手へ。

 そこで、大樹にぽっかりと空いた巣箱と壷を入れるのに御誂え向きの洞があったのを思い出し、2人を案内してやって来た次第。


「ふむ…良いのでは無いか。ここなら雨風を凌げる上に、地面からの高さもあるから草刈もマメにせんで済む」


 元々は、僕の事を引き摺り込む"得体の知れない何か"が使っていた場所なのですが、最近ここでは遭遇しないので、別に使っても構わないでしょう。

 ダメならダメで巣箱を移動させれば良いだけの話ですし。


「決まりました?。場所が決まったなら早い所設置して帰りましょうよ」


 そう言いながらメイドさんは、両手で抱えていた巣箱を手早く大樹の洞に収めます。


「そうじゃな、早い所設置して帰るとするか。夜の森は危ないからのぉ」  


 続いて、山椒魚さんが大木に空いた洞に、2つ持っていた壷の内、新しい方を設置します。

 今まで使っていた壷は既に、指で中身を軽く掬うと簡単に蜂蜜が掬える程沢山の蜂蜜が詰まった蜜蝋がギッチリ隙間無く入っていてもう使えないのです。


「これで終わり?」


「うむ、これで後は教えた通りに巣の周りの掃除をしたり、蜜を採ったりすれば大体何とかなる筈じゃ。後は、花を植えたりすると尚良しじゃ」 


 巣箱の設置は思っていたより呆気なく終わりました。

 まぁ、良い場所を探して巣箱と壷を置くだけの簡単な作業なので場所さえ見つかればそれで殆ど終わりなので、さほど時間が掛かるとも思っていませんでしたが。予想以上に早く終わったのはラッキーでした。


「うん、分かった。草刈りとかは明日するよ…花は…どうしようか?」


 本来ならもっと細かい飼育方法があるらしいのですが、その辺りを詳しくレクチャーすると数十年単位で時間が掛かるらしいので必要最低限の飼い方だけ教えて貰いました。

 繁殖を視野に入れず、ただ単に蜜を集めるだけで良いなら、定期的な草刈や掃除をする程度で良いらしいです。お手軽ですね。


「花なら植えなくても…いえ、やっぱり止めときましょう。何となく面倒臭い事になりそうだと、私の勘が告げています」


 メイドさんは、何か提案しようとする途中、僕の頭の上辺りに視線を向け、提案を取り下げます。


 言いたい事は何となく分かりました、確かに彼女の勘が告げる通り、失敗したら面倒な事になりそうなので、その方法は代案が無かった時の為の最後の手段としておきたい所です。


「そうだね…まだまだハーシェに狙われるのは御免だし」


 何故だか僕の頭上に生えた花を狙って、隙あらば毟り取ろうとしていたハーシェ。

 最終的には何事もなく自分から落下した花をハーシェが拾うという形で終わったものの、もう少し花が落ちるのが遅かったなら、間違いなく無理矢理に毟り取られていた事でしょう。


「花は地道に植えていけば良いじゃろう。大丈夫チビならきっと直ぐじゃ」


 山椒魚さんの言う通り、地道にやっていくのが一番でしょう。


 でも夏に植えて直ぐに咲く様な都合のいい花なんてありましたっけ?

 種なら去年地道に集めたのが部屋にあった筈なのですが、適当に袋に入れたきりで何処においたのか忘れてしまいました。

 

 1年を通して集めた種が1つの袋に適当に入れられているので、それを探して撒けば秋頃には幾つか花が咲くでしょう。

 今夜は服を縫ったり、種を探したり大忙しですね。こんな事なら『貯蔵庫』にでも入れておけば良かったです。そうしたら探す手間を省けたでしょうに…我ながら何でそうしなかったのでしょうか?


 そんな事を考えていると、メイドさんから「魔物が出たら怖いので早く帰りましょうよ~」と提案があり帰る事に。


 で、そこまでは良かったのですが。


「すまんな2人とも、どうやらワシはここで帰るぞ」


 と山椒魚さんは、教会の裏口に着いた所で立ち止まり言いました。


「誰か来てるの?」


「うむ、どうやら客人の様じゃ。ワシはここで帰るからシルバには宜しく伝えておいてくれ」


 山椒魚さんは基本的に人との接触を避けて生活しています。別に人が嫌いとかでは無く、無用の混乱を避けるためです。


 もしも、山椒魚さんが今来ているお客さんの前に姿を現したなら、お客さんが先刻のサクの様に悲鳴上げる事になるか。悪ければ、武器を手に山椒魚さんに斬りかかって来るかもしれません。

 前者はまだ良いとしても、後者の場合は相手の方が無傷では済まないでしょう。


「分かりました、伝えておきます」


「蜂の事あとがとう。またね、山椒魚さん」


「うむ、暗いから足元に注意して帰るんじゃぞ」


「はいはい、心配性な事で………これ、ありがとう御座いました」

 

 メイドさんは、そっぽを向いて。腕に嵌ったブレスレットを揺らしながら言います。

 あれって、確か山椒魚さんの牙に嵌ってたヤツじゃ…。新手の歯の詰め物の類か何かと思ってましたがそうじゃなかったんですね。


「ふん、精々大切にするがいい」


「分かってますって、言われるまでもありませんよ」



―――――



 山椒魚さんと別れて、教会の裏口から入って礼拝堂へ向かい、教会の表の様子を見ると。山椒魚さんの言って居た通り、教会の前には何やら仰々しい馬車が2台程停まっていました。

 馬車の周りには、騎士風の鎧を身に纏った護衛が5人。そして、シルバと話しこんでいる如何にも執事風な燕尾服姿の初老男性が1人。

 

 雰囲気から察するに、どうも教会に宿を求めてやってきた訳ではなさそうですが…。

 

「うわっ、高そうな馬車…それにアレは…フィリス王国の紋章…?」


 メイドさんは、その高そうな馬車に描かれた紋章を見て呟きます。


「フィリス王国?」


 メイドさんの言葉を復唱して首を傾げていると、メイドさんが説明してくれました。


「フィリス王国は大陸西側にある国で、虫食い状の湾が無数に存在する特殊な地形を持つ半島にある常夏の国です。

 綺麗な海と虫食い状の湾に広がる広大な浜辺が有名な、クリスタリア大陸の行ってみたい観光地ベスト5に常に名を連ねる別名『バカンスの国』と呼ばれる国ですよ」


 …詳しい。記憶喪失の割りに何故かそういう事は詳しいんですよね、彼女。


 それにしても海ですか…前世では、強力な日焼け止め塗って延々パラソルの下でアサリを採り続けるだけだった臨海学校と修学旅行のしょっぱい思い出しかありません。


 ですが、今世なら女神様の加護で日焼けとか大丈夫ですし…。


「いいねぇ…海…行きたいなぁ」


 溜息混じりに言葉が口から出てしまいます。一応、天気が良ければ大森林からも海は見えるのですが、生憎と今世ではまだ1度も行った事はありません。

 日焼けが大丈夫になった今なら、潮干狩り以外の海の楽しみ方も出来る筈です…相変わらず泳げませんけど。


「…じゃあ、行ってみるか海」 


「…え?」


 突然の声に驚き後を振り替えると、何時の間に話を終えていたらしいシルバが、僕の目線に合わせる様にして膝を屈め、何か手紙の様な物をヒラヒラさせながら妙な事を口走りました。


「今なんて!今なんて言ったんですか!?私の聞き間違いで無ければ『海に行くか』的な事を言いましたよね!」


 メイドさんもシルバが口走った単語が信じられないのか、何時もとは違うテンションで聞き返します。


「あぁ、実は…友人の結婚式に招待されてしまってな。相手が一国のお姫様だけに断るわけにもいかなくてな…」


 少し肩を落とし、少し面倒くさそうに言うシルバ。その後ろから、先程シルバと話していた初老の男性が、楽し気に笑いながら姿を現しました。


「ハッハッハ、シルバ様が断れぬ様に此方まで出向いた甲斐がありましたな。お嬢様方も興味がおありのご様子ですし、これはもう行くしかありますまい?」


「断らせる気も無かった癖に良く言う。式の半年以上前から交渉の為に使いを寄越すなど…俺が断っても粘る気満々じゃないか」


 額に手を当て、呆れた様子で言うシルバに、初老の男性は笑みを浮かべながら


「当たり前です、国の恩人たるシルバ様とリディア様が姫様の晴れの日に居ないなど言語道断!鎖で縛って無理矢理にでも連れて行く覚悟もしておりました」


 と、何やら細かい文字が沢山刻まれた、あまり良い感じがしない鎖を燕尾服の袖から取り出し、冗談に聞こえない口調で言います。


 それを見たシルバが、相変わらずの面倒臭げな表情で溜め息を吐きながら


「と、言う訳で断れそうも無いので、フィリス王国まで行くことになった。色々準備があるから出発はもう少し先になるが、一応承知しておいてくれ」


 と、言うのでした。


 その言葉を聞いて満足したのか、初老の男性はうんうんと嬉しそうに頷き、


「では、私どもはもう1人の客人の行方を探す事に致しましょう…エクレア、ここへ」


 初老の男性が、右手を上げて外に向かって一声上げると、先程まで馬車の傍で待機していた護衛の1人がやって来ました。


「はっ、お呼びでしょうか」


「馬車を1台置いていきます。貴方は皆様の準備が整い次第、皆様の護衛をしつつフィリスへ向かって下さい。

 途中どこか観光しつつ向かう様でしたら、旅費は全額こちらで負担しますのでよろしく頼みましたよ…(くれぐれも、道中逃がさぬよう…もしもの時は打ち合わせ通りに)」


「はっ(打ち合わせ通りに…)」


「?!」(ぞわっ)


 初老の男性が目を伏せ、女騎士さんを見やったその数瞬後、女騎士さんの目が此方に視線を向け、僕と目が合った瞬間、一瞬ですが『ニャァ』口元が三日月に歪んだ様に見え、背筋が凍える様な感覚に襲われました。


「という訳で、彼女を置いていきますので、何かあればお申し付け下さい」


「道中皆様のお世話をさせて頂く事になりました、フィリア王国第三騎士団所属のエクレア=エクレールと申します。気軽にエクレアとお呼び下さい」


 兜を脱ぎ、明るく笑いながら頭を下げるエクレアさん。その笑顔を見ていると、先程のあの寒気を感じさせた笑みは気のせいだったと思えて来ます。というか、きっと気のせいだったのでしょう。


 あと、きっと名前の方も…きのせいですよね。何せこの世界に存在するお菓子といえば、クッキーか菓子パンぐらいなモノと聞き及んで居ます…だから、エクレア何て…エクレール何て…そんなアレな組み合わせの名前何て、きっとただの偶然ですよね?

エクレアさんの家名をカスタードからエクレールに変更しました。語感が良いので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ