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白の転生譚  作者: 優音 乙菜
第一章 教会
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ハーシェの拾いモノ

最近、急に寒くなってきましたね。

風邪などにお気お付けください。

 焚火の前に座りながら、メイドさんにどう抗議しようか考えていると、ハーシェが「あ!Σ(゜Д゜)」と何か大切な事を思い出したような顔をして。

僕の隣で、肩掛け鞄――教会の面々は、森に行く時は、1人に1つ体力と身体の大きさに合った自分専用の鞄を持ち歩いています。

 中には、魔物に出遭ってしまった時に使う目くらまし用の煙玉(ある一定以上の衝撃が加わった場合唐辛子を粉末にした物があたり一面に飛び散る)と

採取用の小さなナイフとスコップ。後は包帯が入っています。ナイフとスコップ以外は使わないに越した事はないのですが、一応念のためにとの事です。――を漁り始めました。


 その様子を、何事でしょう?と眺めていたると、ハーシェはお目当ての物を発見したらしく、カバンの中から丁寧に、彼女(・・)を取り出しました。


「この子。さっき薪拾いしてる時に倒れてるのを見つけたの」


 紺碧の髪と、青白い色を基調とした7色の光を放つ美しい蝶の羽をもった、大人の手のひらにギリギリのる位の大きさの女の子。


 一言で言うと、妖精です。


 妖精と言えば、前世では、ゲームや御伽噺の中にしか出てこないファンタジーな存在でしたが、この世界そうでもありません。

確かに、体の大きさをある程度自由に変化させる事が出来というファンタジックな特技はありますが、それ以外は至って普通。森やら街やらで他の種族に混じって生活をしている極々、一般的な種族の1つです。

 

 その妖精さんが、何故か山道からも遠く離れた泉の近くに落ちていたと言うのです。…メイドさんと言い最近何だか良く人が落ちていますねこの界隈。


「右の羽が片方折れてるな、千歳何か分かるか?」


 ポルトの言う通り、彼女の右の羽はその半ばから折れて欠損し、見るも痛々しい状態になっていました。

 ですが、羽以外の状態は極めて良好です。呼吸も安定していますし顔色も良いです。


「う~ん、その辺りはまだ習ってないから分からないよ。骨折になるのかな?」


 正直言って、良く分からないです。翼人種の方の翼が折れた時は、骨がつながる様にがっちり固定して安静にさせる。と習いましたが流石に妖精の羽となるとまた話は変わってくるでしょう。何せ、見るからにタイプが違いますからね。

 それに、翼人種の方たちにするのと同じ処置を試したくても、折れた羽の先がありませんからね。繋げてみる事すらできません。


「分からないか…じゃあ、リディアに見て貰うしか無いな」


「そうだね、でも、その前に一度起してみない?」


 ハーシェは、白目を剥きながら、涎を垂らしながら気絶している彼女を、見つめて言います。


「そうだな、ちょっと試してみるか。千歳、今日採った薬草の中にアレがあっただろ?リディアが気付け薬になるって言ってたヤツ」


 それに同意したポルトは、僕の鞄から飛び出した薬草を指差しながら言います。


「あーアレね」


 アレと言うのは、多分リズの花の事でしょう。

 リズの花は、ピンク色の可愛らしい花を咲かせる夏の花で、その花の抽出液には、気付け薬の作用があります。

その他にも、葉や茎を煎じて飲めばリラックス効果が、根を乾燥させて粉薬にすれば、解熱剤になったりする非常に用途が広い薬草です。


「何だか良く分かんないけど、それを使えばこの子が起きるの?」


「起きると思うよー…多分」


 リズの花には、確かに気絶した方を目覚めさせる効果がありますが、それはあくまで加工品の話し。そのままでは薬効が心もとない為、抽出し凝縮するのです。

そのままでも効果が無いわけではありません。劇的な効果は無いまでも、意識を回復する手助け程度には使えます。


 まぁ、加工品とて、所謂ショック療法で叩き起こすタイプの気付け薬の効果には遠く及ばないのですけどね。

 その上、薬草自体が希少で加工が難しいとなると、どうしても高価な品になってしまい、作っても買ってくれるのはお金持ちぐらいしかいません。


 ですが、作り方を覚えて損は無いと言う事で、土ウナギを探している最中に材料となるリズの花が珍しく大量に手に入ったので、試しに作ってみようという事になったのです。

 まぁ、加工が面倒で難しいらしいので、失敗する事が大前提らしいですが。成功したら、なんでも好きな物を買ってくれるとリディアが言ったので、失敗させる気は毛頭ないですけどね!


 閑話休題


「ま、試してみようぜ。花の香りを嗅がせれば良いんだったよな?」


「うん、花びらを少し磨り潰して、顔に近づければ良いいよ」


「おう、分かった。少し貰うぜ」


 ポルトは、まだ焚火の傍から動けない僕に代わって、僕の鞄の中からリズの花の花弁を1枚取り出し。指先で少し潰した後、妖精さんの顔の近くへ持っていきます。


 すると、妖精さんは指先をピクリと動かした後、少し声にならない声を漏らし。うっすらと目を開きました。


「…ここは何処なん?…ウチはまだ生きとるん?」


 目覚めた彼女は、今の状況に理解が追いついていないのか、少し戸惑ったような様子で呟きます。


「ねぇ、大丈夫?羽痛くない?」


 酷く心配そうな顔で妖精さんを覗き込むハーシェ。


「え?…あぁ、そうやったな、ウチは魔物に襲われて…」


 妖精さんは、半ばから折れて無くなってしまった右の羽の様子を見て、一瞬少し落ち込んだ様な表情をして溜息を吐きましたがすぐに、顔を上げます。


「大丈夫やで、命があっただけでもめっけもんや、お嬢ちゃん達が助けてくれたん?ありがとう」 


「へへーどうしたしました」


 ハーシェは少し照れて、嬉しそうに返しました。若干間違っていた気もしますが、突っ込むのは止めておきましょう。


「それで、妖精さんは―――」


咲奈サクナや」


 僕の言葉を遮るように、妖精さんは声を発しました。


「?」


「ウチの名前、お嬢ちゃんにもあるやろ。名前」


 チッチッチと人差し指を振り、自分と僕を交互に指差しながら、さも楽しそうに彼女は語ります。

 間違ってますね。僕はお嬢ちゃんではありません。アレですかね?まだ幼いから見分けが付かないんですかね?


「うん。僕は千歳、お嬢ちゃんじゃないよ」


「私はハーシェ、よろしくねサクナ」


「俺はポルト、よろしくなサクナさん」


「千歳…ちゃんにハーシェ嬢にポルト坊やな、覚えたで!


 んじゃ、改めまして。ウチは流れの行商やっとります、咲奈=フェンっていいます。気軽にサクって呼んでや」


 僕の名前を呼んだ後の少しの間に、苦い顔をして若干の葛藤があったように見えたのですが何故でしょうか。気のせいですかね?


「分かった。よろしくね、サク」


 彼女の事をそう呼ぶと、彼女は右手の親指を立てて、いい笑顔でサムズアップするのでした。

 人が落ちてる事が多い?

 いえいえ、実は毎年結構な人数がいつの間にかいなくなり、そして誰かしらに保護されています。原因は、様々。大森林は見る人が見ればお宝の山ですから。無謀な挑戦者や魔がさしてしまう方も多いのです。そして、行方不明に。


 発見されれば幸運。発見されなければ大体魔物の胃の中です。

大森林での安全地帯は、教会、泉。あとは及第点で山道と最深部の一部ぐらいな物でしょうか?。

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