砂糖の行商人とお金の価値
すいません遅れてしまいました。
妖精さん改め、咲奈=フェン。サクは、砂糖の行商人さんと言うちょっと特殊な行商人さんらしいです。
これは、どの大陸の砂糖生産国でも同じなそうなのですが。砂糖の原料となる実を付ける【金月花】は、その特性上株数も、豊作時の収穫量もある一定以上は増えないそうです。
ですが。逆に、極端に花が減らない限りは、どんな酷い不作の時でも、ある一定量は砂糖の原料となる実を付ける不思議な植物だそうです。
そして、その一定量の販売先に関しては。砂糖販売協定により『国の規模によって販売量を決定する』という協定があり、なんの問題も無く販売先が決定されるのですが。
条約で定められているのは、その一定量に関してのみ。毎年、不定量で発生する余剰分に関しての扱いは、砂糖生産国の裁量に任されています。
『裁量に任せる』などと、何か印象良さげな言葉を使って誤魔化しては居ますが、実際の所。
『下手に条約とかで決めるのは面倒だから、お前の所で何とかしてくれない?』という事です。
つまりは、面倒ごとの丸投げですね。
で、その余剰分なのですが。砂糖生産国は、己の裁量を持って、特定の国に販売する。という事が出来ません。
もしも、特定の国相手に販売したならば。
『ほぅ、そうか。うちの国には売ってくれなかったんだな?』
『君の国の国土は随分と魅力的だと常々思っているんだ。何と言っても喉から手が出るほど欲しい物があるからね』
『君の国は、○○の国と随分仲がいいようだねぇ(目が笑ってない)』
『所で、うちの国の軍備を見てくれ。こいつをどう思う?』
『去年余剰分をあの国に売ったんだから、今年は自分の国に多く売ってくれるんだよな?』
(数十年前に実際にあった、会話から抜粋してお伝えしております。尚、この情報の提供は。咲奈=フェン氏)
等々、お小言を言われてしまうからです。いえ、一部はもう脅迫ですね。
砂糖は所詮嗜好品、されど嗜好品です。あると無いとでは大違い。砂糖の販売はその国の王様にとって国内貴族との仲を円滑に保つ秘密兵器です。
砂糖を売る事で、王様と貴族。ひいては国と領地の仲を円満に保つ訳です。所詮嗜好品されど嗜好品ですからね。その効力を侮ってはいけません。
それで、どの国も砂糖を少しでも多く欲しがる訳です。ですが、その余剰分は不用意に特定の国相手には売れません。
でも余剰分はある…そして、そのまま国にストックしておいたら、間違いなく面倒ごとの火種になる。
そこで、活躍するのが、流れの行商人さんです。流れの行商人さんに砂糖の余剰分を売り、各国を巡って販売して貰うわけです。
そうすれば、自分達はどこの国にも余剰分の砂糖を販売せずに済みますし、各国を巡る行商人さんに売ったと言えば、何処の国にも等しく砂糖を買えるチャンスが生まれるので、
砂糖の生産国は何処の国にもお小言を言われる事も無くて済むわけです。
で、その1人が何故こんな山中に居るのかと申しますと。
『休んでたら、何やヤバそうな鳥みたいな魔物に襲われてん。そしたら、修道服着てデカイ剣持った金髪の兄ちゃんが助けてくれて、その場は何とか逃げ切れたんやけど。
逃げてたらいつの間にか森のやったんよ。
そんで、何とか山道に戻ろうと歩き回るっとったら、今度はデカイカマキリの魔物に襲われて。そんで逃げてたら羽をやられて飛べんくなって、
人間サイズにも為れんし、魔法も使えんようになったんで、仕方ないからそのまま死にもの狂いで走って。気が付いたらチビちゃん達に保護されとった』
と言う事らしいです。
あと、今日の夕食はお肉っぽいです。
―――――
サクが森の中で倒れて居た経緯を話し終わった所で、今まで大人しく話を聞いていたハーシェが口を開きました。
「サク凄いね!、お砂糖ってお匙一杯で豪邸が建つ程高いんでしょ?サクって大富豪?」
僕の砂糖探しに付き合ってくれていたハーシェは、砂糖が凄く高い物で有る事は、何となくですが知っています。
思い出せば、最初は「豪邸ってなぁに?」からのスタートでした。その後、説明に次ぐ説明を経て、ハーシェの豪邸への認識は「何か凄い建物・高い」という感じに落ち着きました。
ハーシェは、1歳の時に教会に来たらしいので、教会以外の建造物を知らないのでしょう。
僕達子供組みの中では、現在最も教会居住暦が長いのです。
「あはは、ウチは大富豪ちゃうで~。そう言う砂糖もあるにはあるけど、流石に普通の砂糖はそこまで高くあらへんよ。精々匙一杯で金貨数枚程度ってとこ…か…な?」
サクの話しに、僕達は三人揃って首を傾げます。その様子を見て、サクは話しの途中で言葉を区切り―――
「…チビちゃん達はお金の事わかる?」
―――と、根本的な質問に話を切り替えました。
「「「見たことはあるけど良く分からない(よ)(な)(よー)」」」
即答でした。
そう聞いた瞬間、サクは「そうかー…まぁ、そうやろな…山奥やし、あんまりお金使う機会なさそうやしなぁ…」と目を覆っていました。
金貨数枚と言うのが、何となく凄そうなのは分かりますが、それ以外は良く分かりません。
実際に金貨は見た事がありますが、実際に使った事が無いのでその価値は未だ未知数です。
何せ、僕達子供が行商人さんと商品の取引をする時は、基本的に物々交換ですからね。採取した花で作ったドライフラワーとか、竹で編んだ小さな籠とか。
冬場は時間が沢山ありますから、雪が降る前に材料さえ集めておけば、色々な物の製作時間には事欠きません。
ちなみに、この世界のこの世界のお金の単位はフィール。紙幣は存在せず、硬貨のみが存在しています。
なお、この世界全般での硬貨の価値はこんな感じ。
小銅貨(1)
銅貨 (10)
大銅貨(100)
小銀貨(500)
銀貨 (1000)
大銀貨(10000)
小金貨(50000)
金貨 (100000)
大金貨(1000000)
で以下この調子で、白銀・白金と続きます。
それ以上の価値を持つ物もあるには有るらしいのですが、あまり一般的では無いため、持つ機会が出来た時に覚えれば言いとシスター達は言っていました。
なお、硬貨の価値は、使われている鉱石の価値・純度、そして、3大ギルドと呼ばれる『冒険者ギルド』『エルダーギルド』『商業ギルド』の3ギルド及び、ギルド加盟国によって保障されており、クリスタリア大陸内なら大体何処の国でも一定の価値を持ちます。
その他の大陸においても、硬貨に使われ居る鉱石の価値・純度・質量、等は同じらしいのですが。硬貨の種類自体が違うため、通貨の交換をしないと『貴金属としての価値+他の大陸の硬貨』程度の価値しか無いそうです。
まぁ、物価がイマイチ分かって居ないので。お金の価値を提示されても、正直言ってどのぐらいの買い物が出来るとか良く分からないのですが。
その辺りは、シルバ曰く「今は、どれの価値が高いかを、何となく分かっていれば良い」「使い方は誰かに聞くより、実際に幾らか持って自分達で買い物をするのが一番だ」との事。
百聞は一見に如かず。と言うヤツですね。
閑話休題
「まぁ、ええか。砂糖一匙は大体金貨数枚や、結構高いと思っとれば問題ないで」
「「「そうなんだー」」」
説明がかなりザックリでした。確かに、物価と小銅貨1枚の価値すら分かって居ない僕達に金貨の価値を説いて教えるのは些か無理のある話でしょう。
それに、僕がサクの立場だったら、サクと同じように説明すると思うので何とも言えませんけれど…。
「本当だったら砂糖の現物も見せてあげたいんやけど、生憎と今は魔法が使えんで見せられへんねん」
サクは空間魔法が使えるらしく、行商の荷物や私物は全てその中に突っ込んで各国を旅しているとの事。
ハーシェとポルトは『空間魔法』の事は良く分かって居なかったらしいですが。サクの説明により、『何か荷物が沢山持ち運べる魔法』という認識に収まりました。
「ん?、何か便利な魔法が使えるんじゃないのか?」
「ウチら妖精は、羽にダメージ受けると魔法とかが使えなくなんねん。
ついでに身体のサイズも変えられなくなるし、飛べなくもなったりもするんよ」
「そうなの?」
初耳です。
そう言えば、『魔物に襲われて~』の件でそんな事を言って居たような気もしないでもありません。
「そうや。羽が傷ついた状態で魔法を使おうとすると、上手く魔力がコントロール出来ないんよ。妖精にとって羽は魔力のコントロールの要なん」
「「「へー」」」
コントロール以前に、魔力の事すら良く分かっていない僕達は、曖昧に返事を返す事しか出来ませんでした。
僕達が返事をするのと時を同じくして、僕達の背後の茂みの奥から地響きの様な音がし始め、その後すぐに茂みの中から大きな影が姿を現しました。
「ただいまー」
「今戻ったぞ」
音の主たる山椒魚さんと、何故かその背に跨り妙な物を小脇に抱えたメイドさんの帰還です。
「ぎゃぁぁあぁあああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!出たぁあぁぁあぁああーーーーー」
それを見たサクは、辺り一帯に響き渡るような叫びを上げました。




