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「口頭での契約、犯罪に関わる契約は受け付けない」

初カキコ…ども…

 ジェイムズ兄弟と酒場で遭遇した翌日――

「……というわけで列車強盗の3人は死亡、ジェイムズ兄弟は逃走しました。」

「ご苦労。それにしても依頼を受けたその日にジェイムズ兄弟と遭遇するなんて、お前もツイてるじゃないか。サムター伍長」

 昨晩のジェイムズ兄弟との戦闘について報告するため、元軍曹の保安官であるリーの元に出向いていた。

(ツイてるわけないだろ。むしろ厄日だったんだが……)

 相も変わらず狂人モード全開のクソ保安官に心の中でツッコミを入れつつ、ジェイムズ兄弟のその後の足取りについて尋ねる。

「逃走後のジェイムズ兄弟の目撃情報だったりが入っていたりしません?あいつらの顔は覚えたのですが、どこに行ったのか全く分からないのですが……」

「ふむ……ジェイムズ兄弟なのかはわからないが、今日は朝から馬泥棒の通報が入っていたな。夜中に馬が2頭盗まれたらしい。」

「もう少し詳しく聞いても?」

 ジェイムズ兄弟の足取りが全くつかめない今、怪しい情報は片っ端から調べるしかない。顔を俺に見られたから、堂々と表を歩くことはないハズ。ダグラス市の外に出たか、市内のどこかに潜伏しているか……

「馬を盗まれた家のご婦人が物音に気付いたらしい。夜の11時くらいだ。姿は見えなかったらしいが、声からして2人組。片方はもう片方のことを『兄貴』と呼んでいたらしい」

 ジェイムズ兄弟と酒場でにらみ合っていたのは夜の10時くらい。弟であるジェイムズ・フォードは兄であるジェイムズ・エドのことを「兄貴」と呼んでいた。

 馬泥棒の特徴はジェイムズ兄弟のそれと同じ――

「ジェイムズ兄弟の隠れ場所は判明していないのですか?」

 ジェイムズ兄弟はダグラス市から逃げたと考えてよさそうだ。ならばどこかに隠れ場所があって、そこに逃げているかもしれない。

「それなんだが、今から聞き出そうと思っていたところだ」

「聞き出す?誰からですか?」

「列車強盗からだ。1人逮捕しただろ」

 ジェイムズ兄弟の仲間が牢屋にいるということを今の今まで完全に忘れていた。

「つまり、今から尋問ですか?」

「そういうことだ。砲兵隊!道具の準備はできたか?」

 昨日酒場で会った元砲兵隊の保安官補佐たちが何かを準備している。イス、ロープ、水が入ったバケツ……おそらく尋問(拷問?)のための道具だ。

「今から砲兵隊と尋問してくる。今日は休んでいてくれ。お疲れ様」

「へ?」

「列車強盗と戦闘になったうえにジェイムズ兄弟とも会ったんだ。疲れているだろう?休息も立派な仕事だ」

 リー軍曹は拳銃に弾丸が入っているか確認しながら牢屋の方へ向かい、砲兵隊たちも道具を運んでいった。

 結局、事務室にはサムターのみが残されてしまったので、半ば追い出されるような形で保安官事務所から出て行った。


***


「店主、ジェイムズ兄弟はよくこの酒場に来ているのか?」

 保安官事務所から出てその足でジェイムズ兄弟と遭遇した酒場に向かい、聞き込みを行っていた。

「いや、列車強盗もジェイムズ兄弟も始めて見る顔だった。」

「そうか……店主、ご協力感謝する」

(この酒場ではこれ以上の手掛かりは見つからなさそうだ。他の酒場でも聞いてみるか)


***


――ダグラス北西の外れ、カドー通りにある酒場。ここにはダグラス市外から来た旅人、ゴロツキ、お尋ね者のような堂々と表を歩けない奴らが多くいるらしい。もしかするとジェイムズ兄弟の情報が手に入るかもしれない。

 酒場に入ってすぐ感じるのは硝煙の匂い。普通の酒場は酒臭かったりやタバコ臭かったりすることはあれど、硝煙の匂いがすることなどほとんどない。危険な場所であることは考えるまでもないだろう。

 時間はだいたい正午を回ったところ。それにもかかわらず酒場には既に泥酔している飲んだくれ、ギャンブルに勤しむガラの悪いグループといった、如何にもといった感じのはみ出し者たちが多くいる。

(――とりあえず店主から聞き込みを始めるか)

 酒場のカウンター席に座り、ソーダ水を頼みつつ「聞きたいことがある」と店主への聞き込みを始める。

「聞きたいこと?何だ?」

 店主からこの酒場と同じで危なっかしい雰囲気を漂わせている。腹の内をのぞき込むような目つきでこちらを見ている。

「『ジェイムズ兄弟』という名前に聞き覚えは無いか?」

「懸賞金狙いか?内容によっては言い値で支払ってもらうことになるぞ」

 客がアウトローなら店主もアウトローということか。どうやらこの店主、情報屋としての顔もあるらしい。

「ジェイムズ兄弟の隠れ家についての情報が欲しいのだが、いくら払えば良い?」

「50ドル。値下げには応じない」

50ドルあれば1か月半は3食おやつ付きで暮らしていける。こんな値段をつけるということは、よほど重要な情報を持っているのだろう。

「了解した。ここで払っても大丈夫か?」

 都合の良いことに、金ならある。50ドルといえば、列車強盗を追い払ったときの給料の半分くらいだ。痛い出費ではあるが、ジェイムズ兄弟の足取りがつかめるのなら良しとするか。

 バッグから財布代わりに使っている巾着を取り出し、50ドルを店主に渡すと、店主は要求した分の金があるか、用心深く確認している。

「灰色のジャケットと帽子……お前、南軍の兵士だったのか?」

渡した金を確認しつつ酒場の店主がこちらに向かって如何にもアウトローらしい、疑り深くも大胆な視線を投げてきた。

「ああ、所属は北ウィンギニア軍だ。」

「南軍の『勇者』ってあだ名で呼ばれていた奴を知っているか?」

 その言葉を聞いた途端、グラスを揺らしていた手が一瞬だけピクリと止まった。

「……知っているが、そいつに何か用があるのか?」

「用心棒として雇いたい奴が何人か俺に聞いてきてな、俺としても『勇者』の情報を仕入れておきたかったんだ」

「依頼主は犯罪組織の奴だったりするか?」

 金持ち連中の護衛なら喜んでやるが、俺はいちおう保安官補佐としての仕事があるのだ。犯罪の片棒を担がされるような事態は御免被りたい。

「そこまでは教えられない。俺にも保守義務があるのでね」

「そうか、なら――」

「おいクソガキ!!!俺様が誰かわかってんのか!!!」

 店主との会話は雷のような怒声で遮られてしまった。

 怒鳴り声がした方に目を向けるとそこには顔を真っ赤にした荒くれ者と、金髪で小麦袋のようなボロボロの服をまとった少年がいた。少年は12~14歳といったところだろうか?酒場に一人でいるような歳ではない子供だ。

「俺様にぶつかっておいて謝罪も無しか!?」

「ひぃっ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

 荒くれ者が少年の胸ぐらを掴んでまくし立てている。そもそも何故こんな治安の悪い酒場に子供がいるのだろうか?

「あの子供はこの酒場によく来ているのか?」

「よく来るっていうほどではないが時々店に来る。どこで金を手に入れてるのかは知らないが砂糖の入った飲み物を頼んでいる奴だ」

 サムターは店主に少年のことを尋ねながら、「これ少年が殺される流れじゃないか?」などと考えていた。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!悪気はなかったんですぅぅぅ!!!」

「なら誠意を見せろクソガキ!有り金をすべて出せ!」

 少年はズボンのポケットから数枚の硬貨を取り出して、「こっ、こここれで全部ですぅぅぅ!!!」と命乞いをするように叫んでテーブルに勢いよく置いた。

「これしか持ってねぇのか!」

「ひゃいぃぃ!これが全財産なんですぅぅぅ!!!」

(そろそろ助けるかべきか?)

 ソーダ水を一口グイっと飲んでから立ち上がって、少年のことを気にもかけずにコップを拭いている店主に声をかける。

「南軍の『勇者』についての情報を売りたいんだが、25ドルでどうだ?」

 店主はコップを拭く手を止めてこちらに顔を向けてきた。

「どんな内容だ?」

「『勇者』に用心棒の依頼をするための窓口についての情報だ」

「……25ドルだな。買おう。」

 店主はポケットから25ドルを取り出してからのコップに入れ、カウンター席に置いた。

「――まず最初に、南軍の『勇者』ってのは俺のことだ」

 それ聞いた途端、店主の動きが止まった。一瞬だけ考え事をするように視線を下げたが、「続けてくれ」とすぐにこちらに向き直した

「『勇者』への相談はリー軍曹……じゃなかったリー保安官まで。報酬は要相談。契約内容については紙面に明記したものを俺と依頼者で1部ずつ用意すること。口頭での契約、犯罪に関わる契約は受け付けない。」

 依頼方法について話しつつ、拳銃に弾が込められているか確認し、少年と荒くれ者のもとに向かう。

「俺は保安官補佐だ!ここで暴力行為を行う奴がいれば現行犯として保安官事務所まで案内してやる!」

酒場に数秒の沈黙が流れた。

「脅迫を行った場合も同じだ。」

 犯人と殴り合いやら打ち合いやらになるのは本当に面倒くさいのでまずは警告から始めよう。まずは手始めに拳銃の銃身のほうを持ってグリップを荒くれ者に突きつける。

「そこの少年の胸ぐらを掴んでる奴!今日の宿は保安官事務所の牢屋がいいのか?!」

「クソッ!」

 金髪の少年の胸ぐらを掴んでいた荒くれ者が突き飛ばすようにして解放した。解放された少年ははずみで尻餅をつき、「ふぎゃっ!」と情けない声を上げた。

「酔いが醒めちまった。出てくぞ!」

 荒くれ者は代金をテーブルに叩きつけて椅子を蹴飛ばし、仲間と共に店から出て行った。

荒くれ者が店から出て行ったのを確認してから地面にへたり込んでいる少年の方を向き、一言だけ声を掛けた。

「ケガはないか?」

 金髪の少年は情けなく「ひゃ、ひゃい……」とだけ鳴き声のように声を漏らした。 



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色がついた星の数だけ、幸運が訪れると思います。知らんけど。

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