表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
真相を語る あるいは 語られる真相
72/96

エレベーターの中で

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。


 

   エレベーターの中で

   

 まただ……

 

 記憶の混濁……

 

 読者への挑戦状から二週間……

 

 この空白は何だ?

 

 早く真相を……

 

 原稿を書き上げて……

 

 アップしないと……

 

 しかし、今はエレベーターの中……

 

 以前あったB2ボタンは、やはりない……

 

 もう一度、人体標本室へ行きたいのだが……

 

「さあ、部屋に戻りましょうか?」


 振り向くと白衣の人……

 

 閉ざされたエレベーターの中……

 

 謂わば、ここは密室だ!

 

 密室の中に二人……

 

 一人は被害者で……

 

 もう一人は……

 

「残念ですが地下二階へはいけませんよ」


 なぜ?

 

 いや、それより……

 

 早く、続きを書かないと……。あのミステリーの真相を……


 白衣の人は黙っている。

 

 あなたも読んだんでしょう? 読者への挑戦状は読んだんでしょう?


 白衣の人は静かに口を開いた。

 

「密室なんてあまり興味はないですが、ドアチェーンを外から操作するなんて程度のことは、色々手段はあるでしょう? 実際、不完全な密室なわけですし、回答は何通りも、それこそ読者の数ほどあるんじゃないですか?」


 いや、そんな……

 

「だって、犯人は最終的に離れを燃やしてしまったんでしょう? 殺人現場が本当に密室だったかなんて、わからないじゃないですか?」


 酷い……

 

「それに叙述トリックだって、結局ほとんど妄想だった、ってことなんじゃないですか? このミステリーは嘘に塗れているわけですから」


 違う!

 

 離れは密室だった!

 

 叙述トリックも妄想だったとか、そんな話じゃない!

 

 エレベーターという密室の中に二人……

 

 一人が被害者なら……

 

 もう一人は……

 

 犯人……

 

 手に牛刀があった!  

 

 血が迸り……

 

 生首が転がる……

 

 生首になった白衣の人が、床で笑っている……

 

   *   *   *

   

 いけない……

 

 こんなことを書くから読者に信用されないのだ!

 

 リアルタイムで執筆はできない! 

 

 どんなにそれが真実だと宣言したところで、書いているのは記憶に過ぎない!

 

 そこに妄想や……

 

 が、……がん……、願望が忍び込む……

 

 願望……

 

 そう、私は白衣の人に殺意を持った!

 

 離れは密室だった!

 

 密室を構成したのだ!

 

 それが不完全だったとしても!

 

 チープで、稚拙だったとしても!

 

「さあ、部屋に戻りましょう」白衣の人が言う。


 私は大人しく従う。

 

「すべてはフィクション。その方がいいんじゃないですか? そうでなければ、あなたは犯罪者になってしまいますよ」


 いや、私は犯罪者だ!

 

 太宰治と同じだ!

 

「現実とリンクしてると主張したところで――、ああ、そうだ、あの言葉! 中井英夫があの人に言ったというあの言葉!」


 世界の【悪意】のすべてを一身に引き受けたような、そんな探偵小説を書くんだ

 

「それも実際は違うでしょう? 世界中の悪意を一身に背負ったような探偵小説を……」


 違う! そうじゃないのだ!

 

「でも、ネットで検索すると出てきますよ。その人が確かにそうインタビューで……」


 違うのだ! そうじゃないのだ……

 

 でも……

 

 仕方ない……

 

 そういう病院の鉄格子のどちらが内側か……

 

 私が内側にいるのはわかっている……

 

 仕方ない……

 

 つまりは……

 

 太陽が眩しかったのだ……

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ