離れの殺害シーンを神と探偵が再度見る
※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。
離れの殺害シーンを神と探偵が再度見る
神と探偵が改めて離れの殺害シーンを見ている。
探偵が映像を見ながら話し始める。
前回SEの佐藤さん――彼は尾崎諒馬=鹿野信吾だったわけですが――その彼も入れて三人で見た離れの映像を神と探偵で改めて見る……と……
ベッドに仰向けに――私は失顔症でわかりませんが――勝男が浴衣姿で寝ている……。それでいいんですよね?
「ええ、勝男がシングルベッドに寝ていますね。つまりここは離れの中です。勝男は微笑んでいますね。何だか嬉しそうに笑っているように見えます」
ベッド脇に犯人が立っていますね。誰ですか?
「SEの佐藤さんですね。つまりは尾崎諒馬=鹿野信吾」
犯人の手には牛刀が握られている。はっきりわかる。その牛刀が素早く勝男の首に――。血が迸り……。生首が転がって……
ベッドから落ちましたね。
残酷ですね……
返り血はどうでしょうね?
「犯人に多少はかかったように見えます」
首の次は心臓ですね。
尾崎諒馬=鹿野信吾の手にあった牛刀は勝男を斬首したあと……
その血に濡れた牛刀はゆっくりと再び上に……
逆手に持ち替えられて……
勝男の胸に……
首のない死体の胸に……
突き立てられて……
抉られた……
犯人は若干の肉片を抉って……
なるほど……
後半だけ見れば、殺害シーンではなく、死体損壊シーンですね……
首のない死体の胸を抉った……
「あのミステリーのお茶会で、黒服と青服が、ある人物が首のない遺体の胸に牛刀を突き刺すの見た――首はもうなかったので既に殺されている遺体に牛刀を突き刺した――それで、血が噴き出してその人物に血がかかった、と……」
まあ、黒服も青服も首猛夫からの伝聞で証言しているわけですからね、それを尾崎諒馬=鹿野信吾は人体模型の胸を抉ったと嘘の主張をしても、ああ、そうだったんですね、としか言えなかった……
「返り血はどうですかね?」
多少はかかったようですが、まあ、返り血を浴びたとまでは言えないかもしれませんね……
しかし……
「何です?」
なぜ? 尾崎諒馬=鹿野信吾は斬首して殺害した後、心臓を抉ったんでしょうか?
「普通なら心臓を抉った後に斬首? 母屋二階と同じように?」
ええ
「順番が違う?」
逆なら、あまり違和感はないですね。
「なるほど」
更に言えば……
なぜ? 尾崎諒馬=鹿野信吾は明らかに他殺とわかる殺し方を選んだのでしょうか?
折角密室にしたのに、自殺と思わせる殺し方を選ばなかったのは、なぜ、なんでしょうか?
勝男は妻、旧姓祐天寺良美を母屋二階で殺害して離れに籠城した。
離れで勝男は死んでいる。
離れは密室だった。
尾崎諒馬=鹿野信吾が犯人なのは明らかですが、わざわざ密室を構成したのなら、それを生かして、自殺に見せかければよかったんじゃないでしょうか?
「……」神は何も答えなかった。
祝福された死……
ですかね?
探偵は笑った。




