密室トリックの前に叙述トリック
※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。
密室トリックの前に叙述トリック
神は嬉しそうに探偵に話始めた。
あなたは確かに密室トリックを暴いているようですね。今の会話で確信しました。
ということは叙述トリックにも気付いている、そうですよね?
「密室トリックの前に叙述トリック?」探偵が笑った。
ええ、そうです。あのミステリーの中で、AIを駆使して、叙述トリックを暴こうとしているところがあるでしょう?
AIの力を借りて読み返す尾崎凌駕
この章で名探偵尾崎凌駕は、
第四部の
鹿野信吾の手記 2 に代えて、ある姉妹の会話
水沼の手記 3
の二つの章をAIに読み込ませて、
叙述トリックが隠されているのですが、わかりますか?
そう尋ねている!
「なるほど! しかしAIは叙述トリックを見つけられなかった!」
ええ
神も頷く。
一応、
「俺=佐藤稔」という語り手の自己認識の曖昧さ
それが一番の叙述トリックだとAIは回答しています。
この「俺=佐藤稔」という俺は水沼=坂東善なのですが、水沼の手記は尾崎諒馬=鹿野信吾が書いた――つまり自作自演だったわけで、そう言う意味ではAIの指摘は正しいわけですが、それを以ってこのミステリーの核心たる叙述トリックとはいえないでしょう?
「そうですね。叙述トリックは確かに別にある。叙述トリックの解明にはAIは成功してはいない」探偵も嬉しそうに賛同する。
名探偵尾崎凌駕は叙述トリックも見破っているのでしょう?
「ほう、何故? どうしてそう思うのです?」
あなたは更にその次の……
尾崎凌駕の手記
で、
ドロドロとした昼下がりの××ドラマ
そういう章を書いている!
「ふーむ! 流石だ!」探偵は唸った。
あのミステリーの
第四部の
鹿野信吾の手記 2 に代えて、ある姉妹の会話
水沼の手記 3
更に、
尾崎凌駕の手記の
ドロドロとした昼下がりの××ドラマ
この三つの章をよく読めば、自ずと叙述トリックに気が付く!
神はハッキリ言い切った。
「素晴らしい! 流石は神だ!」
さあ、後は名探偵が真相を暴露するだけです!
「いや、その前に――」探偵は真剣な顔をした。「このミステリーは嘘で塗れています。その嘘のほとんどは正されてきましたが、まだ嘘のままの部分があります。それを作者=尾崎諒馬=鹿野信吾に正してもらわないと!」




