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求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
開幕――再び幕が上がる
20/71

黒川からのメール 生首三つと最後の仕上げ

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。 



   黒川からのメール 生首三つと最後の仕上げ

   

 別荘の駐車場に首猛夫が黒いゴミ袋を提げて戻ってきた。

 その時、彼は変装してはいなかった。その時だけ、一瞬私は彼の顔を見たのだ。月明かりでハッキリとはしていないが、私がその顔を忘れるわけはない。

 殺し屋首猛夫がその任務を遂行したとすれば、彼は勝男を殺してその首をそのゴミ袋に入れて――

 彼は私に気付くと少し慌てて、マスクとサングラスで顔を隠した。

「黒服です。ここで待っていました。任務は遂行したのですか? 勝男を殺してその首がここに?」

 私のその問に彼は無言で頷いた。

「あと最後の仕上げ……」

 苦しそうに彼がそれだけ言う。本当に苦しそうだった。

 最後の仕上げと聞いて、私は悟った。彼は勝男の顔を写真でしか知らないし、勝男の妻と姉、つまり二人の良美の顔も知らない。首実検は私が行うべきだろう。

「確認してもいいですか?」

「会長に届けてくれ。私も後で行く。あとは会長の指示に従ってくれ」


 ここまで事実を書いてきた。ただそれは首猛夫があのミステリーに書いた――

 

 すべてを燃やし尽くせ!

 生首が三つ

 

 の内容と少し異なっている。

 

 私はゴミ袋を持って会長宅に出向いたが、乗ってきたバイクで運ぶには無理があった。それで、首猛夫にもらった車のキーでその車――おそらく佐藤稔=水沼=坂東善の車を運転して生首を運んだ。

 あのミステリーに書かれたことを信用するなら、その後、その通りのことが行われて、首猛夫は気絶した佐藤稔=水沼=坂東善を尾崎諒馬の車、カルディナに乗せて会長宅に出向いたのだろう。

 私と首猛夫のバイクは、誰か――会長の指示を受けた者が二人、バイクでタンデムでやってきて別荘から引き上げたに違いない。

 

 すべてを燃やし尽くせ!

 生首が三つ

 

 に別荘での駐車場で私と会ったことを首猛夫が何故書かなかったのか? は本人に訊こうと思うが、私を守ってくれたのかもしれなかった。

 

 ちなみに、

 

 会長宅に生首三つを持ち込んだ。

 テーブルにバスタオルを敷き、三つの生首を並べた。

 会長は嗚咽していた。慟哭とも言える泣き声を上げた。

 

 生首が三つ

 

 に、そう書かれているそのシーン

 

 まず、娘良美の生首を愛おしく抱き寄せ、頬刷りをした。数分間そのまま泣きじゃくっていた。

 次に、息子勝男の生首をじっと睨みつけていた。しかし、やはり最後はその頬を撫でて「すまん、親の責任としてこうするしかなかった。許してくれ」そう言って泣いた。

 最後に、嫁の良美ちゃんの生首にそっと触れ、「悪いことをした。本当に申し訳ない」それだけ言った。

 

 そう描写されている会長のそのシーン。

 

 それが何故、首猛夫に、妙な違和感を感じさせていたのか? 

 

 それはよくわからない。

 

 それから黒服にも手伝わせ、佐藤稔を彼の自宅に運んだ。生首三つは冷蔵庫に入れ、意識のない彼を床に寝かせ、ガソリンをぶっかけた。

 そうして、ライターで火を付けた。

 同時に会長から電話が来た。青服からの連絡で別荘でも火の手が上がり、消防が向かっているという。

 

 そうも書かれているが、それも少し違う。

 

 佐藤稔=水沼=坂東善を彼の自宅に運んだのは私と青服だった。

 会長から別荘での火事の連絡は来たが、確認したのは青服ではない。大体青服は私と一緒に佐藤稔=水沼=坂東善宅に火を付けていたのだから……

 まあ、我々も犯罪者だ……

 恐らく会長の指示で別荘にバイクを取りに行った者が連絡したのだろう。

 

 首猛夫とはその会長宅で会ったきり、その後会っていない。

 


 佐藤さん、約束通り次の章を書いたのでメールします。


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