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求めよ、さらば与えられん  作者: 尾崎諒馬
開幕――再び幕が上がる
14/96

首はいずこに……

 ※とあるミステリーの真相について触れています。未読の方は先に進まないでください。



   首はいずこに……

   

「首は今、どこにいるんでしょうね?」私は黒川に訊いた。

「首は生きてここにいますよ」黒川が笑った。

「生きている首――生首……」私がお決まりの文言で締める。

 場所は医療センターの地下四階よりも更に地下の人体標本室――

「死んでますよね」生首の液浸標本をガラス越しに指でつつきながら黒川が笑った。

「首は生きてはいませんね」私も笑って返す。

「まあ、冗談はさておき……」黒川は右手を見せる。

「右手の小指触ってもいいですか?」

「ええ、どうぞ」

 黒川の右手の小指は本物だった。

「不思議ですか?」

「ええ」私は正直に言う。

「これもトリックなんでしょうか?」黒川は嬉しそうだ。

「できれば説明願えませんか?」私は正直にお願いする。

 本当に彼の小指の存在は不思議だった。

「この夢の国では再生医療が進んでいましてね。イモリの遺伝子を使った人体実験で――」

「ここは現実の世界です。胡麻化さないでください」

「逆に訊きます。何故? 私の右手の小指があるのが不思議なんですか?」

「二十数年前には確かになかった。逆、二十数年前に小指があって、今無いのならわかりますが……」

「ということは?」

「あなたはあの黒川ではない?」

「ほう、あの黒川とは?」

「この『求めよ~』の少し前に書いた――」

「そもそも」黒川が遮る。「私の本名は黒川ではないですしね」

「そうですね。あのミステリーの最後の方、殺し屋の行方と最後尾崎凌駕に物申す、で、『名前は――そうだな、黒川でいいですよ』あなたがそう言ったからあなたは黒川になっただけで――」

「そうですね」

「それで、あなたを黒川という名前にして、この『求めよ~』の二十数年前別荘にて 一 を書いた」

「それはどういう判断ですか?」

「やはり顔です。私はあなたの名前は知らないですが、顔は憶えています。二十数年経ちますが……」

「ある企業の本社のエンジニア」

「ええ」

「で、小指の件はどう推理します?」黒川が笑った。

「ひょっとして双子ですか?」

「ピンポン!」

「私が二十数年前会ったのは青――」

「ええ、青山とでもしときましょうか? 実際は同じ苗字ですが――要するにあのミステリーでいえば、黒服と青服です。小指がない方が青服です」

「なるほど、氷解しました」

「二十数年前、私とも会ってたんですがね。あの別荘で」

「毎回小指を確認したわけではないので」

「そうですね」

「で、今日はどういう?」

「あのアンチ・ミステリーを二人で何とかしてミステリー、それも本格ミステリーにしませんか? そういう提案」

「あなたがやはり探偵役を?」私が訊くと、

「というか、私は現場にいたのでね」

「真相を知っている?」

「いや、まだ完全には……」

 しばらく沈黙が続く。

「わかりました。私も真相が知りたい。まずは――」私は黒川の顔を覗き込む。「殺し屋首猛夫について教えてください。同僚だったのでしょう?」



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