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44 ギュースト市攻防戦Ⅲ

久しぶりの更新です(・・;)


 「全員、密集しろ!! 分断されれば一瞬でやられるぞ!!!」


 ジュストの言葉で盾を前方に出し、密集隊形を組む蜥蜴人族リザードマン

 その目の前には蜥蜴人族リザードマンの兵士の死体を掴み笑みを浮かべるエリザの姿があった。


 くそっ、まさか防御魔法プロテクションがあれほど容易く突破されるなんて!

 これが今は滅んだ最強の鬼、紅鬼レッドオーガの力ということか。


 エリザはそんなジュストの心を読んだのか、手に持っていた蜥蜴人族リザードマンの死体を彼らの元へと投げつけた。


 「フフフフッ、あなた達もすぐに同じように殺してあげる」


 「……化け物め」


 「あら、蜥蜴に言われたくないわ」


 エリザはそう呟くと足元の地面が抉れるほどの勢いでジュスト達へと突撃。

 爪から伸びる鋭い爪で彼らを切り裂こうとする。

 だがその攻撃がジュストに到達することは無かった。

 エリザは目の前に現れた人物、同じ竜騎士近衛団のバレリーを見つめ無表情で口を開く。


 「バレリー、離してくれる? 邪魔するならあなたでも容赦はしないわよ?」


 「くっ……、気をしっかり持ってください団長!! このままでは」


 「うるさい!! さっさとそこをどけ!!!」


 バレリーはエリザの腕を掴み彼女の攻撃を何とか防いでいたが本気になったエリザの力は彼女の想像をはるかに超えるもの。

 腕を振り払われバレリーはジュストの側まで吹き飛ばされてしまったのだ。


 「大丈夫か娘!?」


 「……敵の心配をするなんて随分と甘いのね」


 「今は敵味方を論じている場合ではない。あの化け物を止めなければ我ら、いやこの場にいる全ての者が殺されるだろうよ」


 「……悔しいけどあなたの言う通りね。団長がああなってはもう敵味方なんて関係ないわ」


 ジュストは立ち上がるバレリ―に手を貸し、バレリーも彼の助けを受け入れる。

 だがこうしている間にもエリザの体はさらに変貌していく。

 髪はより長く、爪は鋭く、額からは2本目の角が生えていく。

 その禍々しい魔力の渦に、その場に居合わせた者達は全て声を発することが出来ない。


 「そんな……、2本目の角まで生えるなんて……」


 これまでどれだけ暴走しても角は1本だけだった。

 これじゃあ本当に紅鬼レッドオーガそのものじゃない……。


 バレリーは初めて目にするエリザの姿に目が離せない。

 その様子に隣のジュストも気づいたのだろう。

 剣を握るその手にはさらに力が入る。


 「娘、こうなっては力を合わせねば我ら生き残ることは出来ないだろう。不本意だろうがあの化け物を止める、その方法を教えろ!」


 「……無理ね。さっきまでの団長でさえ竜騎士近衛団全員とドラゴンの力で何とか抑えることが出来るもの。しかもこの場には封印魔法が使える副団長もいない。そんな状況で更に力を覚醒させた団長を止めるなんて不可能だわ」


 「くっ、ではどうすれば……」


 「アハハハハッ、もういいかしらぁ?! これ以上は、私も我慢できない……!!」


 ドンッ!!! だが体の変化が収まったエリザが動き出そうとした瞬間、上空から光輝く檻が彼女を囲い込むように落下してくる。

 その檻に捕らわれたエリザは脱出しようと試みるが地響きを引き起こすほどのエリザの攻撃で破壊することは出来ないのだった。


 「これは副団長の封印魔法 真実の牢獄。なるほど、ホーゲンの仕業ね……」


 目の前に現れた檻に笑みを浮かべたバレリーは上空へと視線を移した。

 そこには1頭のドラゴンが空を舞っており、4つの人影がこちらへと降りてくるのが見て取れたのだ。


 「……いいタイミングだったな」


 「はぁ、どこがよ! 危うく団長に殺されるところだったのよ?! 副団長の魔法を込めた魔水晶があるなら早く使ってよね!!」


 「おうおう、バレリーともあろう奴が声を荒げて……。せっかく援軍も連れてきてやったのによ」


 「援軍? ……あなた達は!」


 ホーゲンと共にドラゴンの背から降り立った者達。

 それはバレリーにとってこれ以上ない援軍の到着だったのだ。

 仮面が右目を覆う男性。妖精族エルフの少女、そして獣人の女性。

 彼らはバレリーの無事を確認すると、目の前のエリザへと視線を移し攻撃態勢に入るのだった。

 

 「それじゃあ行くぞ、エイラ、ルルミア!!」


 『はい!!!』


 


 



 


 俺こと太一と共にバレリーの元へ降り立ったエイラとルルミアは目の前のエリザの姿に驚きを隠せないようだ。

 だがそれは俺も同じ。話には聞いていたが紅鬼レッドオーガの力がここまでとは……。


 「これがあのエリザさん……? この魔力、今までとは質が全然違う……」


 「そうねエイラさん……。こうして目の前に立つと刺すような威圧感で少しでも気を抜くと力が……」


 エイラとルルミアはいまだ檻の中から脱出しようと殴り続けるエリザから発せられる魔力に表情が険しくなっていった。

 だがその檻もしばらくすると限界を迎えてたのか徐々にヒビが入り始め今にも崩壊しそうになっていく。


 それのことに気が付いたのは俺だけじゃない。

 バレリーとホーゲン、そしてバレリーの隣に立つ蜥蜴人族リザードマンも今にも飛び出しそうなエリザを迎え撃つため態勢を整えていくのだった。


 ドンッ!!!!

 大きな地響き、そして巻き起こる砂煙。真実の牢獄を破壊しその中から飛び出したエリザは上空へと舞い上がる。

 その姿はまさに文献にある紅鬼レッドオーガそのもの。

 蜥蜴人族リザードマンの中には実際に紅鬼レッドオーガを目にしたものもいたため、彼らの動揺は計り知れないものだった。


 「だ、だめだ……。全員殺される」


 「全員落ち着け!! 奴が逃げ場のない空へと舞い上がったのはむしろ好機だ!! 魔法を使える者、弓を持つ者は攻撃を開始しろ!!!」


 「は、はいジュスト様!!」


 あの蜥蜴人族リザードマン、ジュストと言うのか。

 あいつの言葉で蜥蜴人族リザードマン達の目の色が変わった。恐らく族長、それに準ずる立場の者なんだろう。


 俺も態勢を立て直し攻撃を開始する蜥蜴人族リザードマンに続き魔法で攻撃を行う。

 火、雷、風……。無数の攻撃魔法と弓の雨がエリザへと降り注いだ。

 辺りはその衝撃で爆風が発生、地上の者達は飛ばされないように力を込めその場にとどまった。


 しばらくすると爆発が収まり視界が晴れ始め、俺を始め全員が上空のエリザの姿を確認しようと見つめている。

 

 「……そんな、まさか」


 「ありえないだろう……」


 「化け物め……」


 視界が晴れ、エリザの姿を確認した蜥蜴人族リザードマン達からはそのような声が漏れてい始める。

 それもそのはず。そこには多少の傷を負ってはいるものの殆ど無傷に近いエリザが俺達を見つめていたのだ。

 ただこれまでと違うのはエリザの目に明らかに怒りの感情が籠っていることだろう。

 これはまずいかもしれない。


 「あなた達、覚悟は出来ているんでしょうね??」


 なっ、ど、どこに行った?!


 エリザは一瞬で上空から姿を消した。

 だがすぐにその居場所は俺達の知れることになる。

 彼女がいる場所からは断末魔の叫びが次々と起こっていったのだから。


 エリザは蜥蜴人族リザードマンの密集隊形の中に突撃し彼らを次々と吹き飛ばしていく。

 蜥蜴人族リザードマンが通常の人間よりも遥かに大きく力も強い。

 そんな蜥蜴人族リザードマンがまるで木の葉のように吹き飛ばされていた。


 「団長、正気に戻ってください!!」


 「ああ、そうだぞ団長!! このままじゃ……」


 「うるさいわね、そこを退きなさい!!」


 どうにかエリザの動きを止めようと立ちはだかったバレリーとホーゲン。

 蜥蜴人族リザードマンへの攻撃の邪魔をされたエリザは2人の元へと突撃。

 その突撃に、2人は足に力を込めるが勢いを殺すことが出来ず後方へとエリザと共に押し戻されていく。


 「エリザさん、元に戻ってください!」


 「……ごめんなさいエリザさん! 剣技 一刀いっとう!」 


 バレリーとホーゲンを押し戻していくエリザの背後から、エイラとルルミアが攻撃を行う。 

 だが元からエリザの力はエイラ達を超えていた。さらに力を増した今となっては彼女たちの攻撃が通るはずもなく、エリザはいとも簡単に弾き返し、反対に2人へと攻撃を行った。


 2人の腹部にエリザの鋭い爪が到達する、そのギリギリのところで俺が2人を掴み後方へと投げることが出来た。

 

 何とか間に合った。でもエリザ、こいつの今の力は想像以上だ。

 こうなったら不本意だが……。


 「大丈夫か2人とも」


 「あ、ありがとうございますタイチ様」


 エリザの奴、本当に英エイラとルルミアを殺す気だった。

 これは手段を選んでいる場合じゃないな。


 「……あとは任せろ」

 

 俺はエリザへと視線を戻すと身体強化魔法で一気に彼女へ追いつき、動きを止めようと未だにエリザの前方で力を込めているバレリーとホーゲンの体を掴むとエイラ達の元へと再度移動する。


 「はぁ、はぁ……。タイチ殿、すまない」


 「いや、礼には及ばない。それよりも2人とも大丈夫か??」


 「ああ。だがやはりあの状態の団長には手も足も出ないようだ。ああなってはもう誰にも団長を止めることは……」


 俺の言葉にバレリーは言葉を詰まらせ、ホーゲンは拳に力を込める。


 「……分かった。あとはわた……ゴホンッ! 俺に任せてくれ」


 「な、何を言うかタイチ殿!? 確かにタイチ殿は強い。だが団長の強さは」


 「分かっているさ。でもまぁ、何事もやってみないと分からないってことさ」


 「ま、待てタイチ殿!!」


 エリザの元へと向かう俺を止めようと声を荒げるバレリーだが、先ほどのエリザを止めようとした際に力を使いすぎたのかその手には力がなく、すぐにその場に膝を付いた。


 あのバレリーがここまで消耗しているとは。それだけ今のエリザを止めるのは力がいるということか。


 俺はエイラとルルミア、ホーゲンにバレリーの事を任せると、既にこちらを見つめ笑みを浮かべるエリザへと歩き始めた。

 

 「フフフフッ。タイチ、あなたとは1度殺し合えってみたかったの」


 「そうか……。それならその願い、今ここで叶えてやるよ!」


 俺が走り出すと、エリザも同じように俺へと移動を開始する。

 だが俺とエリザが衝突する、まさにその時目の前に光の柱とも言えるものが地面から現れる。

 目を塞ぎたくなるような強烈な光。


 その中からは、黒い布に全身を覆われつつも頭髪、口、そして眼球が剥き出しとなっている右目だけが露わになっている、死者アンデッドと思われる存在が姿を現したのだった。 


 


 

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嫌われ最強転移者、正体隠して頑張ります! ~刻まれた転移紋は、嫌われの証~ 新作を書いてみました! 良ければ読んでいただけると嬉しいです!! ブクマ&評価も頂けると更に喜びます笑
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