↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/46

10 謎の男の正体は、まさかの〇〇・・。

 「アハハハハハハ!! いやぁ、今回は誠に助かった!! 礼を言わせてもらうぞ!! それにしても、まさか御者が盗賊共と手を組んでおるとは……。人生何があるか分からないものだ!!」


 俺の目の前で笑いながらフーゼル村で仕入れた食料を無くならんばかりの勢いで食べているのは、今日の昼間にエイラが助けた男だ。


 この男、名前をディートゲイルと言うらしく、年齢は40前後に見えるが、俺より背は少し高くその身体は見るからに頑健。

 また、右頬に大きな十字傷があり、汚れているとはいえ装飾の施された服装から恐らく地位の高い兵士ではないかと思われた。

 

 話を聞くと、ディートゲイル予想通り盗賊と思われる一団に奇襲を受け、気を失ってしまっていたらしい。

 襲撃で負った傷は回復薬のお陰で既に回復しているが、日が落ち俺達が野宿の準備を始めているころに目が覚めてからというもの、このように飯を食いまくっている……。


 はぁ……、街に着いたらまた食料調達から始めないといけないなこれは。


 カランッ……。俺があまりの食べっぷりに言葉を失っていると、出された食料全てを平らげたディートゲイルが器を地面に置くと手を合わせ頭を下げた。


 「ふぅ、美味かった。今回のこの恩、このディートゲイル、一生忘れん!」


 「そ、そうか……。それなら良いいんだが……」


 忘れないより、この食料分の代金を払ってくれ!


 「ところでお主達は冒険者なのか?? 装備を見るにそこまで高位の冒険者ではなさそうだが……」


 「いや、俺達は冒険者じゃない。この服は……、まぁ気にしないでくれ」

 

 俺はディートゲイルの言葉に答えると、消えそうになっていた火に手元に置いてある枯れ木を投げ入れる。


 「……そうか。しかしお主は羨ましいな! このように美しい娘を2人も引き連れ旅をしているとは! どうだお前達、私の所に嫁に来ないか??」


 ガシッ! ディートゲイルはそう言うと、斜め前に座っていたルルミアとエイラの手を取り笑みを浮かべた。

 だが、ルルミアはその行為に笑みを浮かべ返すと簡単にその手を解き、俺の隣へ進んでいく。


 「申し訳ありせん。私はタイチ様に付いていくと決めていますので!」


 「わ、私もです!! てかズルいですよ、ルルミアさん!!」


 ギュゥゥ……。ルルミアが俺の腕に自分の腕を絡ませると、それを見たエイラもディートゲイルの手を解き、もう片方の腕にしがみついた。

 その際、俺の両腕には素晴らしい感触が広がっていく。


 おぉぉぉ……、ルルミアは見かけ通り凄いものを持っているようだが、エイラもやっぱり中々……。

 はぁ……、これが生きているときに起きていればな……。


 「ほら、2人とも離れろ。火が近いんだ、火傷でもしたらどうするんだ」


 「ハハハハハッ! いや、2人ともお主に心惹かれているようだな。これでは私が入る隙間はあるまい。部外者はこの辺りで手を引くとしよう」


 ディートゲイルは俺を取り合うように自分の体を押し付け合うルルミアとエイラの姿に大きく笑い声を上げるが、しばらくして真剣な面持ちで俺に話し始めた。


 「それでタイチ殿とやら。お主に1つ頼みがあるのだが聞いてもらえるか??」


 ……これはふざけないで聞いた方がよさそうだな。


 俺は自分を見つめるディートゲイルの表情を見て、両腕に掴まっている2人をルナに命じて引きはがすと両手を組みディートゲイルの話を聞くことにした。


 「なんだ? 頼みが聞けるかはその内容を聞いてからだな」


 「ああ、それでいい。……実は私はある盗賊団を追っていてな。つい先日ついにその盗賊団の拠点を突き止めたのだ。恐らく今回の襲撃もそのことを知った奴らが起こしたものだろう。しかし、そのことを伝えるためにも私が生きていると奴らが知る前に一刻も早くギュースト市に帰らねばならん。そこで、ギュースト市までタイチ殿の荷車で送ってもらいたいのだ。もちろん報酬は街に到着次第払わせてもらう。この頼み、叶えては貰えないだろうか??」


 バッ! ディートゲイルは膝に手を付くと、勢いよく俺に頭を下げる。


 ギュースト市か。俺達もそこへ向かう予定だからそのついでに乗せていくのは別にいい。

 問題はこいつが盗賊に狙われているということだ。

 そうなると俺がいるとはいえ、エイラ達に危害が及ぶかもしれない……。


 ま、まぁそれならそれで旅の理由もなくなるし、お、俺も家に帰ることが出来るんだけどな!!


 俺が手を組みしばらく考えていると、後ろから話しを聞いていたエイラが俺の顔を覗き込む。


 「タイチ様、別にいいのではないですか? 私達もギュースト市に向かっているんですし、そのついでということでも……」


 「……確かにそうだ。だがお前達に万が一ということもあるだろ?」


 「ふふふふっ……。やっぱりタイチ様はお優しいお人ですね」


 「そ、そ、そんなことは無い! ……あーっ、もう! 分かったよ! あんたをギュースト市に連れて行ったら、これまで食った食料の代金をそれ以上の金で支払ってもらうからな!」


 くそ……。エイラのあの笑った顔を見るといつも調子が狂う……。

 はぁ、また何か厄介ごとに巻き込まれてしまったなぁ……。


 「ありがたい、タイチ殿!! もちろんその条件で構わないし、むしろそれ以上の謝礼を支払わせてもらおう!!」


 ハハハハハハッ!! 俺の言葉を聞いたディートゲイルは頭を上げ片膝を叩くと、大きく笑い声を上げながら俺に右手を差し出した。

 その意味を理解した俺も小さくため息を付きながらゆっくりと立ち上がる。


 まぁ、ルルミアの話じゃあと一日も進めばギュースト市に到着するって言うし、それくらいなら大丈夫か……。


 「ではよろしく頼む、タイチ殿!」


 「……ああ、こちらこそな。」


 ガシッ! 2人はそう言葉を交わすとお互いの手を握り握手を交わすのだった。














 次の日。

 俺達は早朝から出発したため、予定よりもかなり早い昼過ぎには森を抜けギュースト市のすぐ側まで到着していた。

 その道中では、下級モンスターである大蜥蜴と呼ばれるモンスターからの襲撃は受けたが、運良く例の盗賊団に發見されることは無かった。


 「いや、それにしてもルルミア殿はお強いのだな! まさかLv.20の大蜥蜴とはいえ、一撃で倒してしまうのだからな!!」

 

 「いえいえ。あの程度、私にかかれば朝飯前です」


 「ハハハハハッ! これは頼もしいな!! エイラ殿も、光魔法での援護お見事だった!」


 「あ、ありがとうございます!!」


 ハハハハハハッ!! 後ろの荷車の中ではエイラがディートゲイルの言葉に嬉しそうに笑みを浮かべている。

 俺の隣で馬を操るルルミアもまんざらでもない表情を浮かべると、俺へ横目で視線を向け懐から取り出した大蜥蜴の鱗を手渡してきた。


 「それに大蜥蜴の鱗は防具などの材料として高値で取引されますし、ギュースト市に到着したらどこかで換金することに致しましょう」


 うーん、ルルミアはこう言っているけど本当にこんなのが売れるのか??

 確かに軽いし、中々の硬さではあるが……。


 キーンッ……。俺がルルミアの話を聞いた後、手に持つ鱗を人差し指で弾いたことで辺りには金属音のような高い音が響き渡った。

 この大蜥蜴の鱗は、荷車の中に後200枚ほどあり、ギュースト市に到着すればルルミアが換金することになっている。


 「……あっ、タイチ様! 見てください、あれが辺境一と言われる街 ギュースト市ですよ!!」


 しばらくして小さな丘を越えると、ルルミアが指差す先には周りを高い壁で覆われた街が姿を現した。

 

 「へぇ。あれがギュースト市か!」


 「その通りだ。あの街には武器、防具、食料から酒や女に至るまで何でもそろっているぞ? タイチ殿もきっと気に入るだろう!!」


 俺とルルミアの会話を聞いていたディートゲイルは、荷車から顔を出すと俺に向かって笑いかけた。

 ただ、隣のルルミアは後半の言葉に引っかかったのか、ディートゲイルをまるで汚物を見るかのような目で見つめている。


 その後さらに進んでいくと、俺達の乗る荷車は門へと進む列の最後尾に到着し、ゆっくりと馬を停止させた。


 「それで、これからどうすればいいんだ?」


 「まずは門番に身分証を提示して荷の検査を受け、問題がなければ街へ入ることが許可される。確かタイチ殿はこの辺りよりも更に辺境に住んでいたため身分証を持っていないのだったな」


 「えっ? あ、そ、そうなんだ! だから街に入れるのか心配でさ……」


 そういえば昨日の夜、そういう嘘をついてたんだった……。

 危ない危ない……。


 「アハハハハッ! 大丈夫だぞタイチ殿! ルルミア殿もいることだし今回は問題ないだろう。それにもしもの時は私に任せておけ!」


 「本当に大丈夫なんですか……??」


 「おいおい、ルルミア殿! そんな目で私を見ないでくれ。じゃないと私の心に火が付いてしまうぞ?」


 くっ……。ルルミアは自分に笑みを浮かべるディートゲイルの表情に、つい腰の剣に手が触れるが、何度か息を吐き、何とか気を落ち着かるのに成功した。

 そうこうしていると、いつの間にか俺達の荷車の番が回ってきていた。


 「では、身分証を出してくれ」


 「はい。こちらです」


 ルルミアが自分の身分証を門番に差し出すと、門番はその身分証に手を当て何かを呟く。

 すると身分証の名前と血液が光を放ち始めるが、それが収まると門番は何事もなかったように身分証をルルミアへと返却した。


 「よし、いいぞ。 次はお前だ。身分証を」


 門番は俺が座っているルルミアとは反対側の位置まで荷車を回り込んでくと、右手を出し身分証を提示するように促す。


 「俺は持っていないんだ。この街で身分証を発行してもらうつもりだったからな」


 「何?」


 「こ、この人はこれまで辺境地で暮らしていたので身分証を持っていないんです! でも私が責任を持って身分は保証しますので!」


 「……」

 

 門番は俺とルルミアの言葉に何か考え込むと、門近くにいたもう1人の門番の所まで移動したのち何か話した後、口元をニヤつかせながら2人で戻ってきた。


 こいつら、何か企んでいるな……。


 俺の予想は、門番の次の一言で的中した。


 「それなら入市料として銀貨30枚を払うんだな」


 「銀貨30枚!? 前までそんな決まりはなかったではないですか!?」


 あまりの金額にルルミアが声を荒げるが、門番はそのような事は意に介さないように話をつづける。


 「つい先日から決定したことなのだ。これも領主様のお考えのこと、お前達はただ従えばいい!」


 銀貨30枚か……。思い切った額を吹っかけてきたな。

 明らかにこいつら独自で身分証を持っていない奴から金を巻き上げているな……。

 さて、これはどうしたものか……。


 「そこまでだお前達!」


 「あぁ? 誰だそんな口を聞く奴は……、はっ!!」


 俺が次の手を考えていると、荷車に乗っていたディートゲイルが姿を現し門番たちに近づいていく。

 その姿を確認した門番2人はみるみる顔色を変え、急ぎディートゲイルの前まで移動し頭を下げた。


 「こ、これはバーナー卿! まさかこのような所でお目にかかることが出来るとは!!」


 ……ん?? バーナー卿?? それって誰??


 「その様なことはどうでもいい! それよりもお前達、通行税の重取りは法で禁じられていると知らぬわけではないであろう!!」


 「は、はい!! 申し訳ありません!!!」


 「それどころか領主の名を口にするとは……、許されん! お前達には門番の任を解き、鉱山での労働を命じる!! 命を取らぬことをありがたく思え!!」


 「はっ!!!」


 ディートゲイルは震えながら膝を付き頭を下げる門番に声を荒げると、いつもの様な笑みを浮かべ俺の元に戻ってくる。

 その姿と先ほどの名前に、ルルミアは何かを思い出したのか驚いたように口を開くのだった。


 「バーナー卿……。思い出しました!! 剣鬼 バーナー卿と呼ばれるここギュースト市の領主の名は確かディートゲイル……」


 「ハハハハハッ! ついにバレてしまったか!! その通り、私の名はディートゲイル・バーナー。ここギュースト市の領主をしている者だ。タイチ殿、黙っていて申し訳なかった!」


 えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!

 

 その瞬間、辺りにはディートゲイルの正体を知った俺とエイラ、そしてルナの声が響き渡っていくのであった。

おもしろいと思っていただけたら、下の評価ボタンをポチッとして頂けると嬉しいです!(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われ最強転移者、正体隠して頑張ります! ~刻まれた転移紋は、嫌われの証~ 新作を書いてみました! 良ければ読んでいただけると嬉しいです!! ブクマ&評価も頂けると更に喜びます笑
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。