合流ー実力の差ー
首を刎ねられたバケモノ。流石に動き出す気配はない。
気持ちを沈めた後に柄の底面を押して光の刃を止める。
「二人共無事か?」
「平気。生きた心地はしないけど」
「大丈夫、だよ」
無事を確かめ合うように誰からともなく笑い出す3人。
自然に笑えたんじゃないだろうか。二人共無事でよかった。
「お前達を素人扱いして悪かったな。廃墟群の一端を垣間見ることが出来た」
「これからも潜るんですか?」
「そりゃ勿論。まぁ地道に周辺部をやってるよ。───異形のバケモノに出会ったことはあるけど、こんな大きいのは初めて」
「ほんと、何なんだったんですかね」
中域でこれである。最深部には一体何がいるんだか・・・。
床を溶かし続けるバケモノを見ながら五体満足であることに安堵する。
「言いたいことは色々とあるかも知れないけど帰ろうよ。悩むのは帰ってからだ」
「それもそうだな」
「うん」
撤収準備をする俺達。
ボロボロになった愛剣を拾う。おやっさん(鍛冶士ストーン)に頼めば直してもらえるかな・・・。ドヤされそうな気がするけど出来れば使い慣れた剣を使いたい。───そうだ、オリバ氏に光の刃返さないと。
「オリバさん、柄ありがとうございました。」
「あー、帰りまでアークが持っていてくれ。もしかしたらまた使うかも知れないしな」
「分かりました。村に帰ったら返しますね。────後、この柄は出来れば封印してくれませんか?他人に知られない方がいいですよ」
「分かってんるじゃん。そういうやつだから任せるんだよ」
ニッと笑うオリバ氏。お預かりさせていただく。
道具には罪はないと信じているが、思う所はある。チートスキル(女神の寵愛)もそうだが、力に溺れないようにしたい。力を失ったら何も出来なくなるなんて笑えないからな。ダニエルは魔剣に溺れずにやれているだろうか?
片付けを終えて撤収しようとした所で意外な人物が現れた。────騎士ダニエルだ。
「なっ、何でお前がここにいるんだ!?」
「それはこっちの台詞なんだが・・・」
入り口から、騎士ダニエル、僧侶ペルラ、魔法使いケーシー、狂戦士ゴンザレス、────後、えーと、盗賊ナイアが現れた。
ペルラとケーシーも俺を見て驚いている、ゴンザレスはよく分からない。ナイア氏はニヤニヤしている。胡散臭い。
ナイア氏を除いて皆損耗している。特にペルラから疲れが滲み出ている。『ビッグウォール』どう越えてきたんだ?周辺部のガスは?パーティーリーダー(騎士ダニエル)は何やってんだよ。
「で、何しに北の地に来たんだ?聖遺物の回収をするんじゃなかったのか?」
「俺達はその聖遺物を回収に来たんだよ」
「本当にここにあるのか?何かの間違えじゃないのか?」
ダニエルが探してる聖遺物って何だろう?ここにある遺物を指している可能性もある。とりあえずとぼけてみる。
みんな(ダニエル以外)の様子を伺うとペルラとケーシーは困惑をしている。特にケーシーは不満を隠そうともしない。
「西の聖遺物は回収出来ました。───そのまま戻るはずだったのですがダニエルが北にあるからと・・・」
「破片はアイツが持ってるから、アタシ達も嫌々付いていったわけよ」
「なるほどな」
話を聞く限りでは、ダニエルの独断行動にみんなが付き合わされているわけだ。
付き合わされる場所が試される大地じゃたまったもんじゃないな。同情するよ。
「ペルラはこいつ(アーク)と話をするんじゃない!君の品位が落ちるよ」
「随分なもの言いだな。ダニエル。お前は何を探してるんだ?俺達は帰ろうとしてた所なんだが、教えてやるよ」
「破片をよこせ」
「あ?」
「破片をよこせと言っている」
俺ではなくイリアを据わった目で凝視している。イリアは自身の身を守るように少し後退する。どうやらお望みの品は俺達と同じらしい。理屈は分からんが誰が持っているかも分かっているようだ。
冒険者同士で争っていても馬鹿馬鹿しい。この手の問題は餅屋(冒険者ギルド)に解決してもらうか。フィンさん(ギルドマスター)から預かったSランク通行手形を皆に提示する。最初は何を提示されたか分からない────驚きの声が漏れ出す。
「嘘っ、いつの間にSランク冒険者になったの!?」
「Sランク冒険者にはなってない。フィンさんから押し付けられただけだ。回収対象になっている聖遺物は俺達が集めているものと同じみたいだ。俺達が言い争っていてもしょうがないだろ?冒険者ギルドでも司祭様の所でもいい。とりあえず戻らないか?」
皆に問いかける。まともな思考が出来るなら否定される理由はない。
これは推測になるが、司祭様の所も女神ウラニア様に協力するために聖遺物として回収を命じたのではないかと予想している。破片の持ち主が誰なのかはっきりしている以上、どう転んでも悪い方向に話は進まないだろう。協会はウラニア様と友好関係にあるしな。
「賛成!帰ろう!!」
「賛成します」
「・・・カエロウ」
「却下だ!」
一人異を唱えるダニエル。空気読め。
「煙に巻いて誤魔化すつもりだろ。俺が成敗してやる!」
ダニエルが魔剣を抜き放つ。
・・・何かもういいよ。思わずため息が出てくる。
流石に魔剣に対抗出来る武器は持ち合わせていないので、預かっている光の刃を出す。
「はっ、そんな貧弱な武器で相手になるのか?素直に破片を差し出せば見逃してやる。さっさとよこせ」
「ダニエル、何言ってんのよ! やってること悪党と変わんないわよ」
「ぁっ?」
「ケーシー、任せてくれ。───ほら付き合ってやるからそれでいいだろ」
「ふんっ、随分と余裕じゃないか。その減らず口を黙らせてやる」
ダニエルが無造作に斬りかかってくる。
素早いのだがオウル(フクロウ)の動体視力を得た今となっては十分追うことが可能だ。そしてウルフ(狼)の俊敏性を得たことで躱すこともまた容易だ。
────強力な武器(魔剣)を手に入れた所で、その力に溺れてしまったらそこまでという話だ。
狙い澄まして魔剣を根本から断ち切る。
「なっ」
「嘘っ!?」
遅れて魔剣の刃が床に落ちて甲高い音を立てる。
現実を受け入れられないダニエル。手を口に当てて驚くケーシー。
「まだやるか?」




