トレジャー-地方都市-
「アーク、あれ見て!」
「ああ、すげえな。俺もあれは初めてみたぞ」
イリアが指差すのはまるで壁のように連なる山脈『ビックウォール』。
あの山を越えなければ『試される大地』には踏み込むことは出来ない。
俺達は破片を求めて『試される大地』の玄関口である地方都市『トレジャー』を目指し北へ歩みを進めていた。
地方都市トレジャーよりも先に試されれる大地への侵入を拒むようにそびえ立つ『ビックウォール』を肉眼で捉えることとなった。
ビックウォールの標高はサンダー様がいた山岳より高い。優に3倍の標高はありそうだ。
あの山をガイドなしで登るのは自殺行為以外の何者でもないだろう。
「私達、あの山登れるかな」
「無理しなければ大丈夫だろ。達成のために情報収集をしっかりやろう」
何事にも超然と構えているイリアが珍しく弱音を吐く。その気持ち分かるぞ。俺はお前に対して見栄があるならそんなこと言わんがな。
◇ ◇ ◇ ◇
「何だか、今までの所と雰囲気違うね」
「そうだな、物盗りに気をつけてくれ」
「うん」
何というか異国情緒漂う町並みだ。北の民以外にも近隣諸国の異邦人が目につく。俺達と異なる容姿や肌の色、言語が飛び交う。街の活気は今までの比ではない。
「これから、どうするの?」
「そうだなぁ、とりあえず酒場いこうぜ酒場」
「怖い人、いる?」
イリアが初めて難色示した。明らかに町の雰囲気が違うせいだろうか。むしろよく今まで不満を漏らさなかったことを褒めてやりたいぐらいだ。
「んー、いないと無責任なことは言えんが何かあったら俺やウルフが守るから一緒に来てくれないか?温泉の時みたいにイリアの知見が必要なこともあるかも知れない」
「そこまで言うなら、一緒に行く」
「ありがとうな」
イリアの知見が必要になるかも知れないというのもあるが、下手に別行動する方がトラブルの原因になるかも知れないから一緒の方が何かと都合がいい。それに特別な理由がなければ日中しか活動する予定がないからトラブルに巻き込まれる確率は低いはずだ。
◇ ◇ ◇ ◇
早速、酒場兼食堂のお店に向かう。
ランチの時間が過ぎているためか店の中は外と比べたら落ち着いている。人種・肌の色で比較的まとまっている。
「いらっしゃい。2名か?」
「ああ、頼む」
テーブルに案内してもらい、オススメランチ、タコスとかいうやつを食べて見る。薄皮に野菜なり煮込んだひき肉などを巻いて食べてみるとこれはこれで美味い。香辛料が効いてるやつからマイルドなやつまであってこれはこれでいいな。
「イリアどうだ?辛すぎとかないか?」
「ん、これ位なら大丈夫美味しい」
イリアも美味しいご飯を食べれたためか幾分機嫌が良くなってる。
一息つけた所で、店員が俺達に話かけてくる。
「見かけない顔だな。どこから来たんだ?」
「ワンダー王国の冒険者ギルドからです」
「随分遠くから来たんだな。で、目的は何なんだ?」
「試される大地に行きたい。北の民とのツテを探しています」
店員にチップを握らせてみるが受け取ってもらえない。
「北の民を紹介してやってもいい」
「そりゃありがたい」
「但し条件ある」
「条件?」
そりゃ何かあるよな。素性の知れないやつに話なんて振れないよな。
「バッカス来てくれ」
「ん?マスターなんだ?」
店内の奥のテーブルを陣取っていた男やってくる。
俺よりガタイのいいスキンヘッドの男。見るからにイカツイ。
「バッカスこの御仁と酒の飲み比べてくれないか?」
「ああ、そういうことか。任せろ」
納得顔でバッカスと呼ばれた男ドカッと椅子に座る。
「兄ちゃん、よろしくな」
「ああ、よろしく」
俺を試すうにニッと笑ってる。勿論こちらも笑い返す。
「ルール簡単。飲めなくなるまで酒を飲んでれればいい。頑張り次第で俺が知っているとを教えてやる。さぁ、まず1杯」
テーブルの上になみなみ注がれた大ジョッキが2つ景気良く置かれた。




