ネクロマンサー-死霊術師-
チートスキルを用いてぼんやり光る場所を確認するが、やはり雑霊が漂うばかりだ。これはこれで放置するわけにもいかないのでつつがなく除霊すべきだ。
「先は雑霊だけいる。除霊を頼めるか?」
「えっ!?ここから見えるんですか?」
今いる位置からは300m程は離れているか。人間の視力ならうっすらと光ってるのが分かる位だ。人間の視力なら。
「ああ、目はいいんでな」
「はぁ、すごいですね。危険がなく除霊が行えるなら大歓迎ですよ」
「全くだ」
周囲を警戒しながら墓所内に侵入すると、墓所中央で雑霊が集中している。
「それでは、除霊を開始します」
「ああ、よろしく頼む」
ぶつぶつ神への祈りを寿ぐアニー。
「ターンアンデット!(悪霊退散)」
雑霊が光に包まれると宙に融けてゆく。
「綺麗だね」
「そうだな」
俺は教会の信者ではないがこういう風景見せられると信仰する人が出てきてもおかしくないよな。
暫くして浄化を終えてあたりが静かになる。
「これで一件落着ですね。アークさん、イリアちゃんありが・・・」
「あー!!! 誰、友達消したの。酷い!!」
手のひらサイズの大きさにコウモリのような黒い翼を持った妖精、インプが目の前に出現する。手には三叉に分かれているミニフォークサイズの槍を持っている。
「えーと、私がやりました。その、まずは話し合いましょ?」
「問答無用!」
インプが手に持っている三叉の槍を振り上げるとゾンビとスケルトンが2匹ずつ地面から這い出す。
「みんな、イタズラ娘を懲らしめて!」
「むしろイタズラしてたのはお前さんじゃないのか?」
「人のせいにするんじゃない。オシオキ!」
ゾンビとスケルトンがにじり寄ってくる。仕方ないか。
「やるぞ」
「うん」
「えっ、ええ!?」
アニーが驚きあたふたしている。イリア・オウル、ウルフは俊敏に対応する。
アニーを守るように、俺が前方に立ち抜刀する。イリアは精霊に呼びかけを開始する。ウルフ、オウルは手近なゾンビに攻撃をしかける。鈍足のゾンビ、スケルトンではウルフ、オウルに太刀打ち出来ない。あっさりゾンビ、スケルトンは転倒する。
「えっ、なんで!? みんな頑張って!」
インプが更にゾンビ、スケルトンを召喚する。このままじゃキリないな。
「アニー、ターンアンデット(浄化魔法)用意」
「はっ、はい」
神への祈りを寿ぐアニー。
「させないから!」
もう一度、インプがゾンビを召喚する。今度はアニーの傍にあった墓所から出現する。
俺が対応しようとした所で、イリアのノーム(下級土魔法)が顕在する。石つぶてがゾンビを滅多打ちにして吹き飛ばす。
「もぉ〜、やんなっちゃう。覚えてなさい!」
捨て台詞を吐いて逃走を開始するインプ。
「逃がすか!」
ウルフの脚力が加わった俊足で追っかける。インプの飛行より俺の足の方が速い。
当然逃がすわけもなく、グワシっと鷲掴みする。
「え! 何でニンゲンがそんな足速いの!?」
インプが手の中で藻掻くが当然、妖精程度の力で逃げられるわけがない。
「おとなしくしてろ」
握りつぶさないように気を遣いながら拘束する。
ちょうどアニーのターンアンデット(浄化魔法)が完成し、辺り一帯のゾンビ・スケルトンが浄化される。
こうして首謀者のインプを捕まえたのであった。




