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本日の宿泊先-受付嬢宅へ-

 馬車に乘ったま冒険者ギルドに横付けするとちょっとした人だかりが出来る。

 誰も彼もが物珍しそうに馬車に注目する。


「何の騒ぎよ。はい、どいてどいて」

「ハナさん、戻りました」

「ただいま」

「えっ、デカッ! 何の騒ぎかと思ったらあんたたちだったのね。おかえり」


 受付嬢、ハナさんが見上げながら馬車を見る。

 俺達は馬車から降りる。


「馬車を獲得出来たから報告しようかと思いまして」

「やるじゃない。とりあえず上(ギルド応接室)で話をしましょう」

「分かりました」


◇ ◇ ◇ ◇


 本日2度目の応接室に通される。

 既にギルドマスター、フィンさんがいた。


「よう、馬主が手を焼いた馬手懐けたか。どうやったんだ?」

「チートスキル(女神様の寵愛)のお陰です」

「頼もしいな。だったらイリアちゃんを任せるな」

「はい、自分の力と勘違いしないようにだけ気をつけますよ」

「上出来だ」


 ニッと笑うフィンさん。

 恐らくだが、あくまで借り物の力としてチートスキルを利用するのが良いと思われる。魔剣に頼ったどっかのバカ(騎士ダニエル)と同じ状態になる恐れがある。絶対にそうはならんぞ。


 イリアが場の雰囲気を変えるように、おずおずと中くらいの紙箱をテーブルに出す。中には菓子職人ハンナさんお手製のクッキーが入っている。お土産で買ってきたわけだ。


「みんなで、食べよ?」

「イリアちゃんは気がきくなぁ」

「お茶用意しますね」


 ウキウキしながら受付嬢ハナさんが部屋の外へ出る。

 暫くして、ほのかに湯気が立つ紅茶を4つ用意する。

 

「うん、クッキー美味いな」

「どこで買ってきたの?私も欲しいな」

「ハンナさんの、お店」

「へー、後で場所教えてね」

「うん」


 紅茶とクッキーで会話が弾む。イリアは自分が褒められたみたいにすごい嬉しそうにしている。この子のこういう所といいと思う。


「でだ、今後はどうするんだ?」

「思いの外、早く馬車を入手出来たので明日出発しようかと思ってます。まずは東を目指しながらイリアを頼りますよ」

「それがいいだろうな。やるじゃねえか」

「まかせて」


 イリアはやる気まんまんだ。いいね。


「泊まるとこあるの?イリアちゃんどうするの?」

「どっかで普通に宿泊しようと思ってました」


 こちらを気遣うようにハナさんが質問してきた。

 そういや年頃の子だし、そこらへんどうした方がよかったんだろうな。


「んー、じゃあ、わたしんちにこない?」

「いいんですか?」

「行きたい」


 思いの外乗り気なイリア。ハナさんのことを気に入ったみたいだな。

 イリアがハナさんち泊まるんだったら俺はどっか宿泊してくかね。


「ハナさんち、楽しみだね。アーク」

「ん? 行くのはイリアだけじゃないのか?」

「え? 一緒じゃないの?」

「別に私はいいわよ」


 そこまで言われたら断る理由ないよな。


「お邪魔します」

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