8:引っ越し祭り
領主との対談を終えた後、俺は意気揚々とギルドホームに帰還した。
ウチの拠点はかなり立派だ。
街の一角にドドンと建ったお屋敷で、数十人分のメンバーたちの住み込み寮も併設されている。
流石はベルトだ、魔物を過労死させまくって荒稼ぎしてただけあるなー。
というわけで、
「よーしみんなっ、引っ越し祭りだ! ギルドメンバーたちの部屋を乗っ取るぞー!」
『おーーーーーっ!』
俺の言葉に魔物たちが笑顔で叫んだ!
寮に突撃していく魔物たち。ギルドメンバーの私物をポイポイ窓から放り捨て、我が物顔で部屋を占拠していく。
これでいいのだ。大切な仲間たちに小屋暮らしなんてさせるわけにはいかないからなぁ。
『ンゴォ、ニンゲンの部屋、チョット狭いカモ……!』
「あぁ、トロールのトロロみたいなデカいやつは、壁か天井を取り払って二部屋分使ってもいいぞ」
『ンゴォ~!』
喜びの声を上げるトロロ。
他の大型モンスターたちもほっと一安心し、寮へとドタドタ駆けていった。かわいい。
「魔物のみんな、本当に好きに使っていいからなー? ここはたくさんの魔物たちが頑張って働いたお金で建てられたところだ。そこを我が物顔で使っていたギルドメンバーたちがおかしいんだよ」
そのくせ、ギルドの魔物たちには不衛生な小屋で我慢しろと? ふざけるな。
どうせ仕事現場では魔物に鞭を振るうことしかしてなかったくせに、利益ばかり搾取しやがって。
俺はそんな真似はしない。
働いた者は魔物だろうがちゃんと労うし、みんなが快適に過ごすためなら私財だって喜んで出すさ。
「さて、みんなが引っ越し祭りをしている間に、ギルドメンバーの遺族たちにお悔やみの手紙を書かないとなぁ。まぁいいさ、ヒトの喜ばせ方はよく知ってるし」
何気なくそう呟いた時だ。『本当にしたたかになったねぇ、マスター』という声が、俺の懐から響いてきた!
ビックリして内側を見ると、そこには身体をひらぺったくしたスライムのラミィが入り込んでいた。
「うわぁっ、何やってるんだよラミィ!? いつからそこに!?」
『うふふっ、あの女領主のところに行った時から~! あの女、完全にマスターのことを自分のいいように動く奴隷だと思ってたね。実際に操られてるのはアイツのほうなのに……!』
クスクスと笑うラミィ。
ほんわかした雰囲気の彼女だが、ギルドで長年コキ使われてきた魔物の一匹だ。人に対する恨みは強い。
「……ま、長いこと罵られてきたからなぁ。一度冷静になればわかるんだよ、どんな反応をすれば相手が気持ちよくなってくれるかってな」
一週間前には出来なかった技術だ。
かつては心の余裕なんてなかったが、今は違う。
シルバーウルフのシルたちが、疲れ切っていた俺の心を癒してくれた。
スライムのラミィたちが命懸けでギルドを脱出し、俺のために駆けつけてくれた。
俺のことを大切に想ってくれる者たち。
そんなやつらがたくさんいることを自覚したからこそ――今や俺は、どこまでも自分を貶めることが出来る。
目的を果たすために、感情と思考を完全に切り離せるようになっていた。
「今の俺には夢がある。大金を稼いで、多くの魔物を救い出して、みんなで平和に暮らせる国を作り上げるんだ。
……そのためならば、喜んで媚びてやろうじゃないか。あの女領主が望むなら、足にだってキスをしてやろう」
各ギルドに仕事を斡旋するのも領主の役目だからな。
アイリス・ニダヴェリールにはどうしても気に入られておく必要があった。
「これから俺はアイツに傅く。だが、最後に勝つのは俺たちだ。みんなのためにも、全力で成り上がってやるからな」
『うん……っ! わたしたちもマスターのために頑張るからねっ!』
顔に飛びついてくるラミィ。
ムニャムニャで冷たい感覚が心地いい。寝苦しい夏の夜にはよく一緒に眠ったものだ。
そんなことをしていると、シルたち雌狼軍団も『あっ、ズルいぞスライム! わたしたちも突撃だーッ!』と俺に駆け寄ってきた。
本当に可愛い仲間たちだ。
こいつらのためにも、俺は改めて頑張ろうと誓うのだった。
※ギルメンの私物はフリマに売られました。
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