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3.超豪級戦艦デラウエァ 後編

というワケで、これから新しい方の大和を視聴致します。

 海上軍所属の綺麗どころの軍楽隊のお姉さんに迎えられ、上級乗組員達が整列して出迎えてくれる中、笑顔を振りまきながら歩いていく。

 モテモテだからね。黄色い歓声が上がるのは、もはや見慣れた日常の光景なのだよ。負け組の諸君。


 間近で見ると海に浮かぶ城だね。まさに白亜の城。

 タラップを登りきるとそこは上部甲板。

 この船、横幅が異様に広い。よって、二つの主砲が鎮座していても広場を確保できる。


 その広場に可愛い水兵さんがスクエアー状で整列していた。

 噂に違わず水着である。それも白の水着。

 みなさんの期待を違わず、ハイレグ仕様となっております。


 セーラーっぽいベストを着た白い水着のお姉さんが、世界一有名なアヒルの水兵帽をかぶっている。

  

 一糸まとわぬ……もとい、一糸乱れぬ動作で痙攣……もとい、敬礼。すまない、諸君。マスターは軽い興奮状態にある様だ。


「どうした?」

 すかさずクレアさんが聞いてくる。

「きびきびとして、さすが軍隊。そんな風に思っていた所存です」


「本当にそう思っているか?」

「え?」


 クレアさんが金色の瞳で僕を見つめた。

「投げキッス、知ってるな? 特別に許すから投げてみろ」


 何でだろう?

 言われるまま、チュッと投げてみた。


 水兵さん一同の目が、幻の弾道軌道を追っている。

 着弾予想地点が判明した。

 雪崩を打ち、一点に向かって駆け寄る水兵さん。統制を取るべき士官の方々も争奪戦に参加している始末。


 投げキッスの取り合いとなった。

 おいおいおい。

 もてるのは嬉しいが、ここは軍隊。規則とか規律とかはどこへ行った?


「説明しよう。ジンは将来何にななりたかったんだっけかな?」

「んー、ゲームデザイナー」


「では、ゲームデザイナーで例に出そう。仮にだ、ゲームデザイナー組合の慰安旅行で船が難破。原始時代をモチーフにした異世界へ移転したと仮定してみよう」

 あまり人気が出そうにない設定だが、ゲームデザイナーとエルフィに何か関係があるのだろうか?


「当然そこには電気はない。コンピューターもネットもない世界。ゲーム作りは不可能だ。しかし生活が待っている。


 そこで、

 ある者は日曜大工が得意なのでカーペンターの役を買って出た。

 ある者は釣りが趣味だったので漁師を買って出た。

 そんなこんなで、いろんな役割が各人に割り当てられた。


 しかだ、

 ゲームデザイナーの大工は所詮ゲームデザイナー。本物の大工には敵わぬ。本物の漁師にはなれぬ。その他もしかり。


 つまり、お水が本業のエルフィなんぞ、ハナからガチガチの軍人になどなれぬ。

 所詮はゲームデザイナー、所詮はエルフィ。そういうことだ」


 な、なるほど。理解した。

 しかし、まずはゲームデザイナーに謝ろうな、ゴメンなさい!


 争乱をよそ目に、クレアさんは歩みを止めない。


 賑やかなお祭り騒ぎの横手で、騒動に加わらなかった人が一人いた。

 真っ白な軍服に身を包んだ美女が一人。見た目20代後半の大人のお姉さん。

 緩やかなウエーブが優雅な金髪は、腰まで長い。くすんだ金の瞳は潤んでいる。

 おや、唇の左下に黒子が。いやがおうにも肉感的な唇へと視線が誘われる。


 その唇が花の様に開いた。

「クレア少尉、マスターを紹介していただけますか?」

 ややハスキーなボイス。こ、これは内角いっぱいのストライク球!


「ジン……こほん! マスター。紹介しよう。ここにいるのがデラウエァ艦長、リマリア・リオン大佐だ」

 クレアさんは、取り乱しながらリマリア大佐を紹介してくれた。


「小官の母でもある」

 付け加えられた音量は大変小さい。


「で、こっちがマスターのジンだ」

 クレアさんは親指で僕を紹介した。その愛情溢れる紹介方法に感動しつつ、握手のため手を出した。


「仁です。よろしくお願いします」

「海上軍大佐リマリア・リオン。体年齢27。内年齢30。戦艦デラウエァの艦長職を拝命いたしております。よろしくね、マスター」

 魚類特有の滑りは無いが、それこそ白魚の様な手を握った。うわ、柔らかい。

 白い服に明るい金髪。白のイメージ優先のお姉さん。

 見とれてしまって何が悪い。いや、お前は悪くない!


「ほれ、ジン!」

 クレアさんが肘で横腹を小突いてきた。


 お、おう! アレだ……。


 抱きしめ?

 どうやって?


 腕を広げてみた。

 するとリマリアさんの方から懐へ入ってきた。


 14歳の平均身長を持つ僕だが、リマリアさんの背は高い。ちょうど顔が胸に当たる。

 胸に埋まる? 的な?


 お! 腕に力が入った。 ギューね。ギュー的な? ムギューって、張りが有りつつ柔らかい物に埋まる的な?

 こ、これが豊満なパイパイというものか?

 

 息が出来ない。でも離れたくない。もう死んでも良い。哺乳類に生まれて良かったーっ!


 痛て。痛ててて。

 ま、またポジショニングが! 今回は先っぽが二つ折れ的な?


「そこまで! もういいでしょう!」

 永劫の至福の時を経て、リマリアさんの力が抜けた。僕は息を吹き返した。

 クレアさんの介入があったようだ。


「お母さんもどさくさに紛れて強く抱かない!」

 クレアさんが怒っていた。

「焼きも――」

 ガチャリと音がしたコンマ2秒後、僕のこめかみに、撃鉄を起こした大型拳銃の銃口が当てられていた。


「クレア、マスターに対して失礼ですよ」

「そ、それはそうですが……」

 リマリアさんが、やんわりと戒める。


 優しそうな微笑みが、僕を覗き込んでいた。

 これが聖母というも…… 

「硬い物が当たって痛いです」


 すんませんすんませんすんません!


「ジン、貴様ぁー! 私の母さんに対して劣情を抱いたな!」

 クレアさんも怒っている。


 クレアさんが素で怒ってる!

 すんませんすんませんすんません!

 いや、いやいやいや、エルフィって男に劣情を抱かせるのが職業だろ?




 完全無視かよ!


 こうして、クレアさんの母にして、戦艦デラウエァ艦長リマリア大佐との、感動の対面式を終えたのである。


「次、艦内の案内!」 

 肩を怒らせたクレアさんが、仁の腕を引っ張ってエレベータへと歩いていった。





 リマリア艦長の案内と説明が続く。


「こちらがビーチプールになっております。人工波発生装置が本物と寸分違わぬ波を作ります。あちらが洋上最大最深の真水プールです。こちらではダイビングショーやシンクロナイズドスイミングショー が行われます。続いてあちらに見えますのがセントラル・パークとロイヤル・ブロムナードでございます。お買い物の散策や海を見ながらのジョギングにうってつけの施設となっております」


 天辺の展望台にいるんだが……なんか、……こう、……なんか変だ。


「これからご案内いたします階下にはロッククライミングの壁面やストレッチ、エアロビクス、フィットネスの教室。3階には千席の大型シアターが。お食事は四つのレストランで――」


「ちょっと待って、ちょっと待ってください!」

 疑惑は確信となった。

 大声を出して止めたつもりだが、リマリア艦長の何かに取り憑かれたような説明はすぐには止まらない。


「ファストフード店は6カ所。高級ラウンジ、ステーキハウス、ワインバー。お勧めはビュッフェ形式のカフェテラス。ここは眺めが最高ですわ! プールサイドパーティにカクテルパーティやフォーマルパーティも連日連夜催しましょう! そうそう艦内宿泊施設も豪華ですのよ! 最高級の客室、ロイヤル・ロフト・スイートは160㎡+バルコニー80㎡の広さが自慢で、艦内施設エリアと海が一望に見渡せる最高の位置に設置されております! ロフトと付いているだけあって二階建です。お部屋にはグランドピアノが付いております! 」


「すんません! 謝りますから、一旦停止してください! ごめんなさい、この通りです!」


 僕は平伏して謝った。どうかお静まり給え!


「これは失礼。ついつい自慢話ばかりを申し上げまして、失礼いたしました。お気に障らなければ幸いですが……」

 柳眉を寄せて困った顔を作るリマリア艦長。その麗しき表情を見せていただいただけで、僕の心は晴れやかです。


 それはそれとして……。

「クレアさん、どうなってるの? ここ軍艦じゃなかったっけ?」


 対してクレアさんは極端に唇の端を歪めて、自嘲気味にこう言った。

「所詮、エルフィだと言うことだ」


 ……ああ、あのゲームデザイナーが異世界転移した喩えか。専門家にはなれないという訓辞だったな。

 戦闘艦の目である一番見晴らしの良いところへ客室を作ってしまうあたりがエルフィなのだろう。


 恐るべしは戦艦をここまで豪華客船にしてしまう……おや?


「ひょっとして超『豪』級戦艦の豪級って……」

「超・豪華級(クラス)の施設が整った戦艦っぽい何か、の略だ」


「海上軍がこんなだったとは……」

「陸上軍もだぞ」

「え?」 

 クレアさんの眼は真剣だった。


「陸上軍正戦車にも、砲弾庫を犠牲にして作ったベッドスペースがある。あの一件の際、ジン救助のために展開していた野営地だって、真っ先にベッド施設を設営したんだぞ。ほんとだぞ」

 目が点になるとはこういうことか。


 改めてエルフィの恐ろしさを知った。


 とはいうものの。

 ここまで無駄に豪華な客船……もとい、戦艦である。施設を利用しない手はない。


 午前中はプールのハシゴ。

 ミアちゃんはロッククライミングの壁面にへばりついたまま。野生の本能が大活躍だ。


 お昼はステーキハウスでリッチな食事。ここのジンジャーステーキは世界に通用する!


 で、お昼を回った現在、右手にホットドック、左手に炭酸飲料を持って、クッション付き折りたたみ式シートの最前列に収まっているわけだ。


 両側にクレアさんとリマリア艦長。

 ホールには、詰められるだけ詰め込んだエルフィの海兵さん達。みんなポップコーンやコーラを肘掛けにセットしている。


 目の前の3Dスクリーンでは、迫力満点のアニメ映画が上映されていた。

 そう、昼食の後、千人収容の大型シアターで、映画でも見ようかという話になったのだ。


 てか、千人って、デラウエァの乗組員全員より多いんじゃねぇの?


 前もって言っておくが、アニメは僕の趣味じゃないぞ。

 これには理由があるッ!


「マスター、映画は何になさいますか? 本日のお勧めは『未亡人油地獄SM絵巻』と『バレンタイン婦人の恋人・無修正版』となっております」

「えーっと――」

「マスターは冒険活劇がお気に入りだ。犬とか魔法とかロボットとか出てくる勧善懲悪物のアニメがあったと記憶しているが」

 クレアさんの一言で、本映画が上映される運びとなった。まこと有り難い話である。


 とはいうものの――。


「おう!」 

 眼鏡無しの3D。飛んでくる飛んでくる。かわすかわす。

 後ろの方からも「キャー」だの「ヒァー」だの「らめぇー」だの、黄色い声が聞こえている。


 さすが有る意味において娯楽の殿堂アルフレイ・ランド。アニメ一つをとってもこの映像レヴェル。半端ねぇ。

 小犬と合体ロボと魔法と勇者と魔王と魔女っ子と男の娘と忍者が登場する異世界召還転生ハーレム無国籍活劇冒険譚だ!


 キャラとか世界観とか、もう爆発しまくっている。さっきキノコ雲出てきたし!


おっと、主役メカ・モコガンガーがこっち向けて必殺技をブッ放なした! 危ね! いや3D! あの男の娘、鬼畜だな。


 

 映画は世界を崩壊させてエンドクレジットを迎えた。

 感動有り、外道有り、お笑い有りのお話しだったが残念だ。こんなに早く終わってしまうのが残念だ。

 神鎚滅却ライジング・トリガーっ! アレかっこよかった!

 

 しかし、これで良いのだろうか? 映画のチョイスを間違っていないだろうか? なんか、こう、人生の貴重な時間をつまらない事に消費してないだろうか? 


「うむ、なかなか面白かった。カオスという意味で」

 クレアさんにとって充実した2時間半だったようだ。クレアさんが満足したなら僕も満足だ。


 なにせ、今回は僕というより、クレアさんのためのイベントだったからな。


 辺りがざわつきだした。場内が明るくなったからだね。背筋を伸ばしたり、トイレに急いだり、感想を言い合ったり、感動の涙を拭いたりと、そこには見慣れた光景が溢れる世界だ。


 僕たちも椅子から立ち上がった。

 あ! いいこと思いついた。


「リマリア艦長、大変楽しかったです。少し疲れたので、お茶でも飲みながらゆっくり静かにくつろぎたいのですが、クレアさんと艦長と僕の三人で貸し切りにできますか?」

 ちょっとした提案を持ちかけた。


「さっそく手配いたしましょう」

 よれたスカートを直す仕草も美しい。リマリアさんが笑顔を僕に向けていた。




 港を一望に見渡せるカフェで僕たちは一つのテーブルに着いていた。


 窓際に置かれた広いテーブル。

 クレアさんとリマリアさんと僕とミアちゃんだけで、軍艦にあるまじき広いカフェを占領していた。

 他に人はいない。


 僕たちは、運ばれてきた飲み物に口を付ける。

 もちろん僕はブラックコーヒー。この苦さと香ばしさが大人の味だね。


 クレアさんとリマリアさんは揃って同じハーブティ。

 ミアちゃんは(ぬる)めのホットチョコレートだ。顔ごとマグカップに突っ込んでングングしながら飲んでいる。


「落ち着いたところで……」

 リマリア艦長が場を仕切る。

「クレアがお世話になっております」

 軽く目を伏せた。これは母としての挨拶だ。


「こちらこそお世話になってます」

 僕も頭を下げる。

「確かに、世話をしている」

 クレアさんが混ぜっ返す。今日は珍しいシーンの目白押しである。


「マスターは、元の世界と切り離されて寂しくありませんか?」


 10日前。

 元の世界に帰る唯一のチャンスを棒に振ったのだ。寂しくないと言えば嘘になるが、この世界は楽しい。だから、少なくとも、今は寂しさに捕らわれる事は無い。


 それにクレアさんもいる。


 ……ああ、そうか。リマリア艦長は10年前のクレアさんと、今の僕とをダブらせていたんだ。


 今なら聞いてもいいかな?


「リマリア艦長がクレアさんのお母さんになられたのには、どんな経緯(いきさつ)があったんですか?」


 クレアさんの形良い眉の根がキュッと縮まった。心なしか頬にピンク色が差している。

リマリア艦長は「そうね」そう言って、口を付けたばかりのカップを置いた。


「私はクレアのケアスタッフの一人でした。クレアには母が必要だった。だから、私を母と呼ばせた。それも無理矢理にね」

 最後の所でにっこりと笑った。


 向日葵の様な笑顔だった。たぶん、クレアさんはこれに参ったのだろう。

 クレアさんを見ると、窓の外に顔を向けていた。僕も同じ方向を見る。何も無い空間に視線を向ける。




 ……父さんや母さんは元気に暮らしているだろうか。心配してないだろうか? 


 ま、携帯だけは向こうへ行った事だし、そこから何かを感じ取れるだろう。あの両親だから何かを察してくれるだろう。

 こっちの世界じゃエルフィのお姉さんにモテモテだし、クレアさんもいるし……。


 クレアさんの手前、ウジウジしたところ見せられないし。


 なんだかんだで……振り払う気は無かったけど、コーヒーに口を付けた。いつにも増して苦かった。香りだけは良いんだけどね。


「ねえ、マスター・ジン」

 やたら熱っぽいリマリアさんの声。

「はい?」

 声がうわずってしまった。


 リマリアさんが身体を前に出した。

 豊かな胸が重力の影響を強調し、豪奢な金髪が一房、顔に掛かる。

 髪を払いのけた手が、テーブルのカップまでもを横へ静かに払う。

 

「マスター・ジンも私の事をお母さんって呼んでもいいのよ」

「お母さん」

 男としてのリビドーが半分。心の中の柔らかい部分が半分。共同して声帯を震わせてしまった。


 言ってから顔が熱くなる。


「お母さんだと? 大工さんや漁師だけでなく、母まで求めるか?」

 所詮エルフィ。お水だからね。その言葉が甦る。


 エルフィだったらお母さんプレイか……。ふと、本当のお母さんを思い出してしまった。

 いや、これは違う! 僕はそっち方面の趣味なぞ無い!

 確かに年上趣味だが、お母さん趣味なぞこれっぽっちも無い!


「いや、これは違うから!」

「仕方ない、許可する!」

「違うんだクレアさん!」

「今晩、男女の関係になってやってくれ!」

「僕にその気は無い! 信じて!」 

「じゃ、やらしい事しないんだな?」

「当たり前じゃない……あれ?」

 クレアさんが素の表情に戻ってお茶を飲んでいた。


 ……しまったー! リマリアさんは僕の母親でも何でも無い。今のどさくさで母さんと呼んでその胸に甘えれば良かった!


 案の定、クレアさんは顔を横向け、しめしめとほくそ笑んでいる。


 安全装置をかけられた。いた、首輪と手錠と足かせを付けられ、ぶっとい鎖で地球に固定されてしまった。


 いやいやいや、もともとクレアさんのお母さんたるリマリアさんに劣情を抱くつもりはまったく無い。

 一目見て抱いてしまったが、それは若いんだからしょうが……もとい、実行に移してないんだからどうとでも言い切れる! 僕は紳士だからね。



 冷静になったところで、計画を遂行しよう。


「ちょっと用事を思い出したのでしばらく席を外します!」

 僕はホットチョコごとミアちゃんを抱えて、席を立った。


「ミアッ!」

 ミアちゃんから非難の声が上がるが、そこは一つ、意を汲んでくれ。


「おいジン! じゃなかったマスター、用事って何だ?」

「トイレです。大きい方なので時間が掛かります。だから付いてこないで!」

 この理由ならクレアさんは追いかけてこない。生活の知恵である。


 久しぶりの親子水入らず。ゆっくりと話せば良い。


 僕は個室(といっても十畳はある)に座り、ミアちゃんがホットチョコを飲んでるところを眺めつつ、時間を潰した。

 言っておくが、ズボンは下ろしてないよ、紳士の諸君!




 とっぷりと日が暮れた。夜の帳ってのがすっかり降りている。

 消灯時間はとっくに過ぎた。


 例のバルコニー付きロイヤル・ロフト・スイートのキングサイズベッドにて、川の字で横になっている。


 右にクレアさん。左にリマリア艦長。ベッド下には丸くなったミアちゃんと、三次元対応で寝ころんでいる。これぞ両手に花。背中に猫。

 羨ましいかね? 庶民の諸君。


 目を閉じてすっかり油断しまくっているリマリア艦長。お風呂上がりでとても良い匂いです。

 

 殺気だった目を僕に向けているクレアさん。同じく良い匂いなんですが、リマリア艦長には手もナニも出しませんから、こっち見ないでください。

「昼間の約束、憶えているな?」とばかりにガンくれてます。


 リマリアさんがこっちに寝返りを打った。10㎝は近づいただろう。甘い吐息が僕の首筋を這うも……どうにもこうにも。

 リマリアさんから逃げるように体を横に向けた。


「おい、硬い物が足に当たったぞ」

「僕の指です。それより、柔らかい物が頬に当たってるんですが」

「すまん。帽子をかぶったままだった」


 二人ともどういう格好で寝ているか? 15R程度ではとても文章に起こせない姿態である。しかし曝したい。だが、曝し即斬である。 

 蛇の生殺しとはこの事だ。てか、最近似たようなことなかったっけか?


 ギンギンギラギラのまま夜が更けて……昼のプールで疲れたのか、いつの間にか寝てしまった。




 翌朝。


 むっくりと起き上がる。いや、起きあがったのは本体であって息子の方ではない。

 部屋は朝日で明るくなっていた。また無駄な一夜を過ごしてしまった……。

 リマリアさんは、ロイヤル・ロフト・スイートにいなかった。


「艦長だからな。任務に戻ったのだ」

 きっちり制服を着込んだクレアさん。窓際に腰掛けて、朝の港を見下ろしていた。


「昨日の……カフェでは気を使わせてしまった。感謝する」

 クレアさんは、顔を窓に向けたまま、はにかんでいた。


 お母さんと話せたんだな。……それはよかった。


 僕も並んで外を見る。でも見ているのは青い空だ。

「指揮官連中と一緒に朝食を取ったら甲板で閲兵式。それが済んだら船を下りてお終い。もう少しだけ付き合いを頼むぞ」


 言われるまでもありませんよ、クレア少尉。

 そうして、二日目のスケジュールは順調にこなされていった。



 海上軍謁見式は無事終了。

 で、日が暮れて、僕の部屋。

 あれから、クレアさんとリマリアさんの間に会話は無かった。軍人二人の行動様式に私情は挟まなれなかった。


 クレアさんは今日一日の報告書をまとめている。

 僕はテレビを見ている。モコガンガー単体のスピンオフ作品だった。人気あったんだ。


「で、夕食後に一発、と。昨日、緊張してナニをしなかった事による反動と思われる。と。これで終了」

 報告書を保存。シャットダウンする。


「真面目な話。母代わりが必要ならリマリア大佐に話をつけようぞ。なにせジンは十年前の私なのだからな」


 クレアさん愛用の軽量ノーパソが閉じられた。

 これで公務は終了だ。


「僕にはクレアさん、いや、琴葉ちゃんがついてるから、寂しくないさ」

 僕はクレア・琴葉・コウジュ・斧田の手を取った。

 大人のメイクを通して、幼い素の顔が僕を見ている。


「でも、リマリアさんは優しい人だね」

 琴葉ちゃんが椅子から立ち上がるのをサポートする。


「バカじゃないの」

 琴葉ちゃんが、僕のほっぺにチュウをした。






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 後日、アルフレイ・ランド海上軍の戦艦があまりにも痛タタタだったので、こっちの戦艦を絵に起こしてみた。


 大和とカタカナの方の大和が微妙に融合したそのデザインは、海上軍の方に大ウケであった。マスター補正なしで好評だったから本物だ。


 早速、予算編成の上、建造計画が立てられた。


 素案を見せてもらう機会に恵まれたが、大浴場とか、フィットネスクラブとかが無理矢理詰め込まれていた。


 愛すべきはエルフィ。

 見なかった事にしたのは紳士の嗜みである。


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