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俺、CO₂悪者説を信じてたら地球詰んでたんだが?第七部  作者: マスター


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第59話 予約表の空白に、人がいた

第七部第58話では、隣町で空き箱の回収を試した。


納品を終えた配送車に積めば済むと思っていたが、箱の返却先、店の準備時間、搬入口の安全など、考えるべき条件は意外と多かった。


燃料を減らせたかどうかは、まだ確認中だ。


一方、同じ町の施設でも調査が始まっていた。


昼間は予約が少ない会議室。


入口に並ぶ椅子。


そこでバスを待ったり、少し休んだりする人たち。


ところが、その利用は予約表に残っていなかった。


第59話では、施設の担当者が二枚の紙を持ってくる。


一枚は、部屋の予約表。


もう一枚は、そこで実際に起きていたことを記録した紙。


同じ建物の記録なのに、そこにはまったく違う景色が描かれていた。

「……見事に空いてるな」


俺は施設の予約表を見ながら、つぶやいた。


午前に一件。


午後に一件。


それ以外の欄は、ほとんど真っ白だ。


「これだけ空いてたら、昼間の電気を見直せそうだな」


施設の担当者がうなずいた。


「私も最初はそう思ったんです。でも、こちらを見てください」


そう言って、隣にもう一枚の紙を置いた。


十一時すぎ――入口の椅子で休憩。


正午前――バスを待つ人。


午後一時ごろ――迎えを待つ人。


俺は二枚を見比べた。


「……あれ?」


予約表は空いている。


でも、利用の記録は空いていない。


『二枚の紙は、記録している対象が違う』


AIが言った。


「つまり?」


『予約表は、予約された利用を記録している。予約なしで立ち寄る人まで記録するものではない』


「ああ、なるほど。同じ建物でも、見てるものが違うんだな」


俺はもう一度、予約表を見た。


白い欄が、さっきまでとは違って見えた。

第1節 会議室にいない人も、建物を使っている

「実際に見てみましょうか」


施設の担当者に案内され、俺たちは昼間の入口へ向かった。


自動ドアが開く。


買い物袋を持った人が入ってきて、壁際の椅子に腰を下ろした。


しばらく休んでから時計を見る。


そして、何事もなかったように外へ出ていった。


「……本当に、ちょっと休むだけなんだな」


受付の人がうなずく。


「はい。会議室を使わなくても、ここで十分という方もいます」


窓の向こうには、バス停が見えていた。


「なるほど。バスを待つ間だけ、ここにいる人もいるのか」


「そうですね。暑い日や雨の日には、特にありがたい場所だと思います」


俺は入口を見渡した。


椅子。


受付。


廊下。


自動ドア。


そこには会議室の予約表には載らない、別の使われ方があった。


『予約された部屋の利用と、建物の共用部分の利用は分けて考える必要がある』


AIが言った。


「でも、入口に人がいるからって、空いてる会議室まで全部動かす必要はないよな?」


『そのとおりだ。空調や照明の系統がどう分かれているか、設備の構造を確認する必要がある』


施設の担当者も図面を広げた。


「会議室と入口で、運転を分けられるか調べてみます」


「それなら、無駄を減らしながら休める場所を残せるかもしれないな」


『まだ設備の確認前だ』


「分かってるよ。可能性の話だろ?」


俺は苦笑した。


前の町でも、予約がない場所を使っている人がいた。


今回も似た問題だ。


ただし、会議室が空いていることまで間違いとは限らない。


大事なのは、何を止めてもよくて、何を残す必要があるのか。


その違いを見極めることだった。

第2節 詳しい記録が、よい記録とは限らない

「それなら、利用する人のことをもう少し詳しく調べましょうか」


施設の担当者が提案した。


「どこから来たのか、何の仕事をしているのか、どのバスを利用するのか……」


「おお、なるほど」


俺は記録用紙を取り出した。


利用者の住所。


利用目的。


滞在時間。


交通手段。


「これだけ分かれば、かなり詳しい資料になるな」


そう言いながら欄を増やしていると、受付の人が静かに口を開いた。


「あの……」


「はい?」


「休みに来るたびに、そこまで聞かれるんでしょうか?」


「……え?」


俺のペンが止まった。


受付の人は、少し困った顔をしていた。


「皆さん、ただ休みに来ているだけですから。毎回いろいろ聞かれたら、利用しづらくなる方もいると思います」


「……あ」


言われてみれば、そのとおりだった。


『何のために情報を集める?』


AIが聞いた。


「そりゃあ、利用状況を把握するためだろ?」


『何を判断するために?』


「建物の電気の使い方と、休める場所をどうするか……」


『その判断に、利用者の住所や職業が必要か?』


「……いや、いらないな」


俺は記録用紙を見下ろした。


いつの間にか、必要以上の情報を集めようとしていた。


「危なかった。詳しく調べればいいってもんじゃないんだな」


『必要な情報だけを、必要な範囲で集めるべきだ』


「確かに。休むだけなのに、毎回事情を聞かれたら俺だって嫌だわ」


受付の人が、少し安心したように笑った。


そこで、記録する項目を絞り直した。


利用された時間帯。


場所ごとの、おおよその人数。


席が足りなかったかどうか。


通路の安全や、暑さなどで困ったことがなかったか。


利用者が自分から話してくれた要望は、個人を特定できる情報を残さず、必要な範囲で記録する。


「これなら、個人の事情まで聞かなくて済むな」


「はい。できれば、見て分かることからお願いしたいです」


受付の人が言った。


俺は、その言葉を記録用紙の端に書いた。


――聞かずに分かることまで、聞かない。


『もっとも、観察する場合も利用者のプライバシーへの配慮は必要だ』


「そうだな。監視されてるみたいになったら、落ち着いて休めないもんな」


情報を集めるのは、利用者のためだったはずだ。


その調査が、利用者を遠ざけてしまったら意味がない。

第3節 見ているだけでも、仕事は増える

翌日。


俺たちは、受付に置かれた記録用紙を確認しに来た。


「……あれ?」


昼の欄が空いている。


「昨日は書いてあったのに、今日は誰も来なかったのか?」


すると、受付の人が申し訳なさそうに頭を下げた。


「すみません。昨日は忙しくて、記録できませんでした」


「忙しかった?」


「電話が重なって、来館者の案内も続いていたので……」


俺は思わず言いかけた。


「次からは、忘れずに――」


『忘れたのか?』


AIの声が割り込んだ。


「……え?」


『記録する時間がなかったのでは?』


俺は口を閉じた。


そうだ。


忘れたわけじゃない。


本来の仕事が忙しくて、書く時間がなかったんだ。


「……すみません。こっちの頼み方がよくなかったですね」


受付の人は首を振った。


「いえ、できる範囲では協力したいんです。ただ、毎日ずっと見ているのは難しくて」


施設の担当者が、自分の予定表を開いた。


「それなら、調査する時間をこちらで決めましょう」


「どうするんですか?」


「私が確認に来る時間を確保します。受付では、普段の仕事の中で気づいたことだけ知らせてもらう形にします」


「なるほど。記録の仕事を、ちゃんと仕事として予定に入れるわけか」


『調査に必要な時間も、資源の一つだ』


AIが補足した。


「また前の町と同じことをやりかけたな……」


建物の電気を減らすために、管理者の仕事が増えた。


今回は、利用状況を調べるために、受付の仕事を増やそうとしていた。


「調べる人が疲れてたら、長続きしないもんな」


そこで、調査できなかった時間は「未確認」と記録することにした。


俺は二枚の紙を並べた。


予約のない時間。


調査できなかった時間。


同じ空白でも、意味は違う。


『何も記録されていないことと、何も起きていないことは同じではない』


「……本当にそうだな」


俺は「未確認」と書かれた欄を見つめた。


数字がないことにも、理由がある。


それを知らずに判断したら、間違った結論にたどり着くかもしれない。

第4節 一時間短くする前に

数日後。


施設の担当者が、これまでの記録を持ってきた。


昼間に予約のない会議室は、確かにあった。


一方、入口の椅子では短い休憩やバス待ちの利用が確認されていた。


ただし、調査できなかった時間も残っている。


「これで、運転時間を短くできそうですか?」


俺が聞くと、担当者は図面を広げた。


「会議室と入口で空調や照明を分けられるか、設備管理の担当者に確認します」


「今の段階では、まだ分からない?」


「はい。少なくとも、予約がないという理由だけで昼間の運転をまとめて短くすることは避けたいと思います」


俺はうなずいた。


「なるほど。人がいるから全部そのまま、って話でもないんだな」


『必要な場所と時間を把握し、設備の条件に合わせて判断する』


「よし。そこは担当者に任せよう」


そのとき、受付の人が一枚の紙を差し出した。


「あの、もう一つ気になることがあるんです」


「何ですか?」


「入口で休める時間を、分かるようにしてほしいという声がありました」


「休める時間?」


「はい。いつまで利用できるのか分からなくて、入りづらいという方もいるようです」


俺は入口を振り返った。


確かに、椅子はある。


でも、いつ利用できるのか分からなければ、遠慮する人もいるだろう。


「……場所があるだけじゃ、十分じゃないんだな」


『利用できる条件が伝わらなければ、必要な人に届かないことがある』


俺は少し考えた。


「じゃあ、施設の人が利用時間を確認して、分かりやすく案内できるようにしよう」


「そうですね。まず、実際に利用できる時間を整理します」


施設の担当者が答えた。


俺は、三冊の記録を開いた。


電気の使い方は、設備の条件を確認してから判断する。


休める場所は、実際の使われ方を見ながら維持する。


調査する人の負担も、正式な仕事として扱う。


そして、最後の一行を書いた。


――空白を、使われていない証拠にしない。


何を記録した紙なのか。


何が分かっていて、何が分かっていないのか。


その違いを確かめてから判断する。


「……よし。これで、ひとまず次へ進めるな」


『設備の調査は、まだ終わっていない』


「そこは現場の人たちに任せよう。俺たちが全部の結果を待ってたら、いつまでたっても町から出られないだろ?」


『確かに、今後の確認を担当者に引き継ぐことはできる』


「だよな」


俺はファイルを閉じた。


帰り際、入口の椅子に一人の人が座っていた。


買い物袋を足元に置き、窓の向こうを眺めている。


俺は何となく声をかけようとして――やめた。


『聞かないのか?』


AIが尋ねた。


「何を?」


『どうしてここにいるのか』


俺は小さく笑った。


「……今日は、休んでるところだからな」


『なるほど』


「休むために来た人を、調査に付き合わせる必要はないだろ」


自動ドアの外へ出る。


振り返ると、その人は変わらず椅子に座っていた。


誰かに説明する必要もなく、ただ少し休んでいる。


それで十分なのだと思った。


俺は空を見上げた。


「……さて、AI」


『何だ?』


「ここの調査も、あとは担当者に任せられそうだな」


『そうだな』


「じゃあ、次は本当に町の外だ」


『エネルギーの供給側か?』


「ああ。今度は、実際に見に行こう」


建物の電気を減らす工夫。


配送の燃料を減らす工夫。


どちらも大切だ。


けれど、その電気や燃料がどこから来て、どう作られているのか。


俺たちはまだ、その全体を知らない。


『では、次に調べるべきものは明確だな』


「そういうこと」


俺は歩き出した。


町の小さな改善から、地球全体のエネルギーの流れへ。


今度こそ、その先を見に行く。

第59話では、施設の予約表と、建物の実際の利用状況が異なることを描きました。


予約表は、予約された利用を確認するための記録です。


入口の椅子で休む人や、短時間だけ立ち寄る人まで記録しているわけではありません。


また、記録されていない時間には、利用がなかった場合だけでなく、調査できなかった場合もあります。


「記録がない」と「実際に何も起きていない」は、同じ意味ではありません。


今回は、必要以上に利用者の個人情報を集めないこと、そして調査を担う人に無理な仕事を押しつけないことも重視しました。


省エネルギーを進める際には、電力使用量だけでなく、建物の利用目的や利用者の安全、設備の運転条件を確認する必要があります。


一方で、今回の調査そのものが温室効果ガスの排出削減につながったわけではありません。実際の効果は、設備の運転を見直し、適切な条件で使用量などを比較してから判断します。


隣町での施設調査は、ここで現場の担当者へ引き継ぎます。


次回からは、地域の小さな運用改善を離れ、エネルギーの供給側へ視点を移します。


発電、化石燃料、産業活動、そして地球の炭素循環。


それらがどのようにつながり、地球温暖化へ影響しているのか。


作品本来のテーマである、地球規模の因果構造へと物語を進めていきます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:リアル(Perplexity)

校正・文体調整:G(ChatGPT)

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