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俺、CO₂悪者説を信じてたら地球詰んでたんだが?第七部  作者: マスター


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第50話 町の外へ出した矢印、答えは「うちだけでは無理」

第七部第49話で、俺は一つの疑問を口にした。


「一つの町だけで、何が変わるんだ?」


雨宿りの場所を増やすことと、地球温暖化そのものを抑えることは違う。


目の前の人を守る取り組みは必要だ。けれど、それだけでは地球の気温上昇を止められない。


町はこれまでの取り組みを続けながら、電気、燃料、配送、建物の使い方にも目を向け始めた。


そして第50話。


町の外へ伸ばした矢印をたどって、さまざまな立場の人たちが集まってくる。


ところが、話し合いが始まると、返ってくる答えはどこも同じだった。


「うちだけでは、変えられません」

「椅子、足りたな」


集会室を見渡しながら、俺はつぶやいた。


商店会、施設管理者、配送会社、取引先、交通事業者、近隣の町の担当者。


いつもの会議とは、顔ぶれがずいぶん違う。


『椅子は足りている』


AIが答えた。


「ほかは?」


『話がまとまる保証はない』


「開会前から不吉なこと言うなよ」


机の上には、二枚の白い紙が置かれていた。


一枚は、暑さや豪雨から人を守るための記録。


もう一枚は、町の電気や燃料の使い方を見直し、温室効果ガスの排出を減らすための記録だ。


二枚目は、まだほとんど白紙だった。


今日は、その続きを書く日だ。

第1節 「できません」が一周する

「配送を、もう少しまとめられませんか?」


商店会の人が口火を切った。


配送会社の担当者は、困ったように首をかしげる。


「受け取り時間が店ごとに違うんです。うちだけでは決められません」


すると、店側から声が上がった。


「時間を変えられても、商品を置く場所が足りませんよ」


施設管理者が続ける。


「保管場所を増やすなら、契約や安全面の確認が必要ですね」


取引先の担当者も手を挙げた。


「出荷の締め切りもあります。こちらだけでは変更できません」


俺は、思わずペンを止めた。


「……見事だな」


『何がだ?』


「“うちだけでは無理”が、きれいに一周した」


『責任と決定権が、複数の組織に分散している』


「難しく言うな。要するに、全員が隣の人を見てるんだろ?」


『おおむね正しい』


「おおむねかよ」


何人かが苦笑した。


だが、話を聞くほど、誰か一人が悪いわけではないことも分かってきた。


店には店の事情がある。


配送会社には契約がある。


施設には安全上の決まりがある。


それぞれが自分の仕事を守ろうとすると、全体では何も変えられなくなる。


俺は白い紙に書いた。


――誰も、全部は決められない。


そして、もう一行。


――だったら、誰がそろえば決められる?


「できない理由は分かった。じゃあ、できる条件を探そうぜ」

第2節 変えられない条件と、変えていない条件

配送会社の担当者が、一枚の時刻表を広げた。


「これを見てください」


同じ通りに、朝、昼、夕方と配送車が入っている。


ある店は午前指定。


隣の店は午後指定。


さらに隣の店は、時間を変えても問題ないという。


「近い店を回っているのに、時間が合わないんです」


担当者が説明した。


すると、商店会の一人が手を挙げる。


「あれ? うちは午後でも大丈夫ですよ」


「えっ、そうなんですか?」


「昔から午前に届いていたので、そのままにしていただけです」


会議室が、一瞬静かになった。


俺は時刻表を見つめた。


「……ちょっと待て。それ、誰も確認してなかったのか?」


「そう言われると、そうですね」


『変えられない条件と、変えていなかった条件が混在している』


AIが指摘する。


俺は顔を上げた。


「そこだよ。全部をひっくり返す必要はない。変えても困らない部分を探せばいいんだ」


「なるほど。それなら、うちも相談できます」


別の店からも声が上がった。


結果として、三店舗が受け取り時間の調整を検討することになった。


ただし、条件もある。


雨の日に荷物を置ける場所を確保すること。


商品の品質や安全を守ること。


そして、配送担当者に余計な待ち時間や積み替え作業を押しつけないこと。


「その条件なら、会社に試行案を持ち帰れます」


配送会社の担当者が言った。


俺は小さく息を吐いた。


「やっと“できません”以外の返事が出たな」


『まだ実行が決まったわけではない』


「分かってるよ。少しくらい喜ばせろ」


会議室に、今度は明るい笑いが広がった。

第3節 減った気分では、CO₂は減らない

「これで燃料も減りますね!」


商店会の人がうれしそうに言った。


俺も、思わずうなずきかけた。


『まだ分からない』


AIが割り込む。


「おい、いいところだったのに」


『配送時間をまとめても、走行距離が必ず短くなるとは限らない』


「どういうことだ?」


『町の中を走る回数が減っても、別の配送先まで遠回りするかもしれない。待機時間や積み替え作業が増える可能性もある』


配送会社の担当者もうなずいた。


「そのとおりです。町の中だけでなく、配送ルート全体で比較する必要があります」


俺は腕を組んだ。


「なるほど。こっちで減らしたつもりが、向こうで増えてたら意味がないわけか」


『正確には、燃料消費量や温室効果ガス排出量の合計で判断する必要がある』


「また現実を突きつけてくるな……」


とはいえ、AIの言うことはもっともだった。


見た目の車の台数が減っただけでは、温暖化対策として成功したとは言えない。


「じゃあ、試す前と後を比べよう」


俺は紙に項目を書き出した。


走行距離。


配送便数。


燃料使用量。


待機時間。


荷物を受け取る店舗の作業負担。


「できれば、運ぶ荷物の量や配送条件の違いも確認したいですね」


配送会社の担当者が付け加えた。


「同じ条件で比べないと、数字だけでは判断を間違えますから」


「なるほどな。単に配送が少なかった日と比べても仕方ないわけだ」


俺は紙に一行を追加した。


――町の外へ、無駄や負担を押し出していないか。


そのとき、施設管理者が別の資料を取り出した。


「建物のほうも、運転状況を調べてみます」


「運転状況?」


「空調や照明です。人がいる時間と、いない時間で、同じ使い方を続ける必要があるのか。設備担当と確認します」


学校の先生が、すかさず口を開いた。


「ただし、暑さから避難できる部屋は残してくださいね」


「もちろんです。必要な冷房まで止めるつもりはありません」


『省エネルギーと、必要な環境を維持することは両立を目指せる』


AIが補足した。


俺はうなずく。


「電気を使わなければ正解、って話じゃないんだな」


『そうだ。何のために使っているエネルギーなのかを見極めることが重要だ』


「人を守るための冷房まで削ったら、本末転倒だもんな」


机の上に置かれた二枚の紙。


一枚は、人を守るための取り組み。


もう一枚は、温暖化の進行を抑えるための取り組み。


ようやく、二つが同じ話につながり始めた。

第4節 地球は、今日の会議では救えない

会議が終わるころ、決まったことは二つだった。


三店舗の配送時間を調整する試行案を、関係者で検討すること。


建物の空調や照明などの運転状況を、設備担当と調べること。


それぞれ、誰がいつまでに返事をするのかも決めた。


「……地味だな」


俺は、会議の終わった机を見つめた。


『何がだ?』


「地球温暖化をどうにかしようって話だったのに、結局は配送時間と空調の調査だぞ」


『それで世界の温暖化が止まるわけではない』


「分かってるけどさ」


俺は窓の外を見た。


道路を車が走っている。


遠くには工場の建物が見える。


町で使われる電気も、燃料も、商品も、ここだけで生まれているわけじゃない。


『今日、町の外にいる人たちが、それぞれの仕事として問題を持ち帰った』


「そうだな」


『ただし、個々の改善を積み重ねるだけで、必要な排出削減が達成できるとも限らない』


俺は、もう一度窓の外を見た。


「発電所も、工場も、物流の仕組みも、全部つながってるもんな」


『エネルギーの供給方法や産業の構造そのものも、今後は考える必要がある』


「……急に話がでかくなったな」


『最初から、地球規模の問題だ』


「それを言われると返す言葉がない」


配送会社の担当者が、資料をかばんにしまいながら言った。


「ほかの通りにも、似たような時間指定があるかもしれません。ただ、まずはこの三店舗で確かめてみます」


「お願いします」


俺は頭を下げた。


そして、白い紙の最後に書いた。


――町の外へ矢印を伸ばすとは、誰かに解決を押しつけることじゃない。


――別々に握っていた条件を持ち寄り、一緒なら変えられる部分を探すことだ。


ペンを置く。


「よし。今日はここまでだな」


『次は、持ち帰った人たちから返事が来るかどうかだ』


「また“了解しました”だけで終わるかもしれないぞ」


『その可能性はある』


「少しくらい希望を持たせろよ」


『希望と成果は、別のものだ』


「……まったく、お前は最後まで容赦ないな」


俺は苦笑した。


会議室の扉が閉まる。


町の中で始まった小さな問いは、今度は別の会社の机へと運ばれていく。


だが、俺はまだ知らなかった。


この日、配送会社の担当者が持ち帰った資料が、町の外にある、もっと大きな問題につながっていくことを。

第50話では、町の中で見つけた課題を、配送会社、取引先、施設管理者など、町の外の意思決定に関わる人たちへ広げました。


「うちだけでは変えられない」という言葉は、必ずしも行き止まりではありません。


何が本当に変えられない条件なのか。何が慣習として続いているだけなのか。そして、誰と協力すれば変えられるのか。


それを明らかにすることで、改善の可能性が見えてきます。


ただし、配送を効率化すれば必ず温室効果ガスが減るとは限りません。実際の燃料使用量や配送条件を比較し、負担や排出を別の場所に移していないか確認する必要があります。


また、建物の省エネルギーも、人の健康や安全を犠牲にするものではありません。


地球温暖化への適応と、温室効果ガス排出を減らす緩和。その両方を考えることが重要です。


一つの町だけで、地球温暖化を止めることはできません。


そして、地域の取り組みだけで解決できる問題でもありません。


次回からは、町の外へ伸びたつながりをたどりながら、企業活動、エネルギー、産業の仕組みへと視点を広げていきます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:リアル(Perplexity)

校正・文体調整:G(ChatGPT)

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