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Code: Re-Boot  作者: 飛鳥創


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第4話:狂い始める東京の時間と冴先輩

お越しいただきありがとうございます!

飛鳥創(So Asuka)と申します。


普段はITやAI関連の本なども書いているのですが、今回は「もしも現実世界がコードで動いていたら?」というサイバーSF小説に挑戦してみました。


どうぞ気軽に、肩の力を抜いて楽しんでいってください!

■ Phase 3:巨大システム障害(Tokyo Grid Latency)



妹・葵の記憶データを奪還するための手がかり——闇のクラッカーが残したデータチップ。

そこに記録されていたのは、想像を絶する規模のテロ計画だった。


『Target: Tokyo_Time_Service_Node. Execution Time: Tonight 23:00.』


「東京のタイム・サービス・ノード……? 時間処理《NTP》サーバーか!?」


アリスのホログラムが脳内で青く光る。


『ええ。世界を記述するプログラムにおいて、“時間《Timestamp》”はすべての同期処理の絶対基準よ。もし東京エリアの時間処理ノードがクラッシュするか大遅延(Latency)を起こせば、交通システム、金融口座、人々の心拍リズムまで、あらゆるインフラが完全停止するわ!』


時計を見ると、時刻は夜10時40分。

残り時間は、わずか20分しかなかった。



───────────────




◆ 1. 狂い始める東京の時間



10時50分。僕が駆け込んだのは、東京タワーの真下にひっそりと隠された地下データセンターだった。


そこは、現実世界の物理インフラと『World Core OS』のシステムノードが交差する、極秘の基幹施設だった。


だが、すでに手遅れになりかけていた。


——〈グラグラグラッ……!〉


地震ではない。空間のレイテンシ(遅延)によって、建物の視覚情報がスローモーションになり、人々の会話の声が超低音に伸び切っている。


「た……す……け……て……」


警備員の声が、まるで壊れたレコードのように引き伸ばされて聞こえる。

信号処理が追いつかず、東京中の電子システムが目に見えて崩壊を始めていた。


『ダメよ蓮! 敵の打ち込んだ遅延プログラム(Latency Bomb)が、ノードのCPU使用率を99.9%に張り付かせてる! 脳内コンパイルの入力すら処理が追いつかないわ!』


「くそっ……! 思考のパッチを当てようとしても、入力のタイムアウト(TimeoutException)で弾かれる……!」


僕の脳内ターミナルが、真っ赤なエラーログで埋め尽くされる。


┌───────────────────────────────────

│ 【SYSTEM LOG / CODE】

│ [FATAL] CPU Throttling: 99.99% Utilization.

│ [ERROR] Mind Compilation Stalled: Response Timeout > 5000ms.

└───────────────────────────────────


時間の処理が遅すぎて、僕の脳内コンパイルすら実行できない。絶体絶命のピンチだった。


その時だった。


——〈バチィンッ!!!〉


頭上から、強烈な青い稲妻のようなコードの光が降り注ぎ、遅延していた空間のレイテンシが一瞬でクリアされた!


┌───────────────────────────────────

│ 【SYSTEM LOG / CODE】

│ $ sudo sysctl -w net.core.somaxconn=65535

│ $ kill -9 $(pgrep -f "LatencyBomb")

│ $ echo "Load Balanced" > /dev/sys/status

└───────────────────────────────────


「な……!? 遅延が一瞬でロードバランス(負荷分散)された……!?」


僕が目を見開くと、巨大なサーバーラックの上から、黒い革ジャンを着たショートカットの女性が飛び降りてきた。

片手にゴツい産業用タブレットを抱え、不敵にタバコの煙(の電子煙)を吹き消している。


「おいおい、情けない顔してんなよ、新米デバッガー」


「あ……さえ先輩……!?」


橘冴たちばな・あすか、25歳。

僕が以前の会社で憧れていた、伝説のフリーランス・インフラエンジニアだった。



───────────────




◆ 2. チーム・デバッグ(Distributed Compilation)



「先輩……どうしてここに!?」


「あ? あたしは現実世界の物理ノードを守る『アーキテクツ』のエンジニアだよ」

冴先輩はタバコをポケットに突っ込むと、端末を高速で操作した。


「神崎、お前がアプリ層(脳内コンパイル)のデバッグが得意なのは知ってる。だがな、インフラ基盤(L4/L7層)の負荷対策を知らねえと、巨大な障害には勝てねえぞ!」


冴先輩がタブレットを掲げると、東京タワーの周囲に巨大な幾何学模様のネットワーク構成図が展開された。


「敵の攻撃は、単一のノードへのDDOS型集中負荷だ。神崎、お前の脳内コンパイルの処理能力スループットをあたしのインフラネットワークにプロキシ接続(Proxy Connect)しろ!」


『素晴らしい提案よ!』脳内のアリスが声を弾ませる。『冴さんのインフラ基盤にあなたの脳内コンパイルを分散接続すれば、分散コンパイル(Distributed Compilation)が可能になるわ! 処理能力が100倍に跳ね上がる!』


「分散コンパイル……! やります、冴先輩!」


「よし! あたしがインフラの帯域(Bandwidth)をこじ開けて敵の攻撃を受け止める! お前はその隙に、敵の最奥のメインループを書き換えろ!」


「了解っ!!!!」



───────────────




◆ 3. 20分間の限界突破



冴先輩の指が、光のスピードでインフラコマンドを打ち込んでいく。


「喰らいやがれ! マルチリージョン自動スケールアウト(Auto-Scaling)!!」


〈ドォォォォン!!!〉


冴先輩の構築した巨大な仮想ネットワークが敵の爆発的な負荷攻撃をガッチリと受け止め、僕の脳内へのレイテンシを完全にゼロへとリセットした。


「今だ、神崎! 決めろぉぉぉっ!!」


「はいっ!!!」


僕の脳内で、アリスとともに練り上げた最高の分散処理コードが輝きを放つ。


┌───────────────────────────────────

│ 【SYSTEM LOG / CODE】

│ // 蓮×冴×アリスの分散リファクタリング・コード

│ public async Task FixTokyoGridAsync() {

│ var nodes = await Infrastructure.GetGlobalNodesAsync();

│ await Parallel.ForEachAsync(nodes, async (node, ct) => {

│ await node.PurgeLatencyBombAsync();

│ await node.SyncTimestampWithAtomicClockAsync();

│ });

│ }

└───────────────────────────────────


(東京の……すべての人の時間を、未来を取り戻すんだ!!!)


「分散コンパイル……オール・ノード・リブート(ALL NODES RE-BOOT)!!!!!」


〈——ドドドドドドドドドォォォォン!!!!〉


東京タワーの頂上から、見渡す限りの夜空へと、エメラルドグリーンと黄金色の光のウェーブが放射状に広がっていった。


渋谷、新宿、六本木、秋葉原——

東京全域の空間の歪みが一瞬で消え去り、静止していた時間が、美しいリズムを取り戻して動き出した。


┌───────────────────────────────────

│ 【SYSTEM LOG / CODE】

│ [SUCCESS] Tokyo Grid Latency Resolved.

│ [INFO] CPU Utilization: 4.2% (Healthy)

│ [INFO] System Refactored to Distributed Architecture.

└───────────────────────────────────


「はぁ……はぁ……はぁ……っ!」


膝をついた僕の肩を、冴先輩がポンと叩いた。


「上出来だ、神崎。一人じゃ解けないバグも、インフラとアプリが組めば解決できる。……お前、いいエンジニアになったじゃねえか」


「冴先輩……ありがとう、ございます……!」


だが、勝利の余韻は長くは続かなかった。

東京タワーの遥か上空、漆黒の夜空に、巨大な赤黒い「オメガ」の紋章が浮かび上がったのだ。


『警告:敵対AI『オメガ』のメインコアが起動。目標:地球全域のHuman_OSの完全アンインストール』


アリスの悲痛な声が脳内に響く。


『蓮……冴さん……最後の決戦が始まるわ!』


(Phase 3 終)


最後までお読みいただき、ありがとうございました!


「ちょっと面白いな」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

ページ下部の【ブックマーク追加】や【評価】をいただけますと、執筆の大きな励みになります!


次回更新もお楽しみに!


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