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村へ戻り宿屋で豆のスープを注文し食べる。これもまた調味料の入っていない健康なスープだ。豆の旨味が存分に出ている。食べ終わってから銅貨5枚支払う。
宿を出ると辺りは薄暗くなり始めている。日が沈むと途端に気温が下がる。浄化を自分にかけてから村の入口へ向かい、村の護衛を交代する。これから日の出まで村を守らねばならない。<感知結界>を張り直す。
昨夜の野営場所、村と森の丁度半分辺りに行き丸太を<アイテムボックス>から取り出す。それから薪を取り出し、<発火>のスキルで火をつける。火がつき始めるとパチパチと音が鳴る。これで準備は出来た。
<セカンドサイト>のスキルを発動し視点を飛ばす。空から見下ろす。村から<感知結界>までの間をくまなく探す。モンスターが紛れ込んでいないか確認する。モンスターはいなかったので今度は<感知結界>から森まで探す。村に近付くモンスターがいれば倒したが今夜はまだいないらしかった。
日の出前になると村の入口へ向かう。しばらく待って現れた冒険者と護衛を交代し広場の近くにある村長の家へむかう。そこで昨日のダンジョンと昨夜の護衛について報告し銀貨1枚の報酬を貰った。ダンジョンをどうするかは村長や村人次第。余所者が考えることではない。
村長の家を出て自身に<浄化>をかけ汚れを落とす。汚れが落ちてスッキリする。
宿屋へ向かい野菜のスープを食べる。銅貨5枚支払う。銅貨40枚払って部屋へ行く。
<浄化>をかけて歯がスッキリする。
8時間後起き出す。<魔術の目>と<魔術の手>と<魔術の足>を発動し魔術エネルギーでそれぞれ右目と左手と右足を作り出す。それから宿屋で豆のスープを食べ森へ出掛ける。やはり豆の旨味が存分に引き出されている。<転移>で森の入口へ。ここからダンジョンまで歩き森のモンスターが多ければ間引き村への被害を抑える。
森に入り上を見上げると、葉っぱの生い茂る天井の樹冠が見える。隣り合う木は枝先までしか枝を伸ばしてはいない。天然の森に見る光景だ。隣り合う木同士の光合成を邪魔しないための。太い枝は仲のいい友達の木の方向には伸ばさず友達ではない木の方向へ伸ばしている。
こういった光景は植林地では見られない。植林される際に根を切られ根の先端付近にある脳に似た部分も切られてしまい、コミュニケーションが上手く出来ず一生を孤独に過ごす一匹狼となるからだ。そもそも一生を過ごす前に伐採されるので植林地の木は老木になる前に死ぬことになる。伐採されると木の細胞に必要な糖分の供給も絶たれ葉っぱがないと光合成も出来ない。助けてくれる仲間もいない。
天然の森では木と木が協力し合う。それが生き残るための生存戦略に適しているからだ。木1本では強風で倒れる場合でも2本3本と増えていけば強風に耐え生き残りやすくなる。木1本1本が自分のことばかり優先していたら木の生存環境に適した森というコミュニティは育まれないし、そこで育つ生物、薬草なども生存できない。あの農村がこの森の木をあまり伐採していないのはそれを知っているからだろうか。森の木を伐採せず森の資源を有効活用することがあの村の今の生存戦略なのだろう。事情が変われば生存戦略も変わる可能性はある。そう、例えばダンジョンの資源などの有効に利用できる利益が目の前に現れたならどうするだろうか。森を切り開くのか、それとも?
襲ってくる歩く雑草や歩く枯れ木を徒手空拳で倒しつつそういったことを考えながら手入れされていない森の中を進むと、地面に違和感を感じる。違和感というより罠の気配を感じとった。落ちていた石を拾い違和感のある場所へ投げる。すると、石が落ちると同時に地面から上に向かってトゲが出て石を串刺しにした。それからトゲは白いモヤになって霧散した。
跡形もなく消えたということは、罠術系のスキル<串刺しの罠>だ。罠術は発動に条件があるためか効果が高い場合が多い。他にも<落とし穴の罠>や<トラバサミの罠>や<振り子丸太の罠>や<振り子斧の罠>や<吊り天井の罠>や<矢の罠>や<毒矢の罠>などがあるが初心者が食らえばどれもただではすまない。当たりどころが悪ければ即死するかもしれない。串刺しの罠は足元からの攻撃なので足を怪我する場合も多く、そうなるとモンスターから逃げるのも一苦労だ。回復手段のリソースを削られるのも痛手になる。
これを仕掛けたモンスターがいるなら、倒したほうが安全だが歩く罠の木のように森の中を歩き回りながら罠を仕掛けているなら探すのに苦労するだろう。広大な森林を全て回るわけにもいかない。それに一体とは限らないしスキルレベルが1でも1日1個罠を仕掛け続けることができる。罠にはまるモンスターなどが引っ掛かって消耗すれば罠の数は減るのだが。
いずれにせよ今の目的はダンジョンまで歩きで行くことと、森のモンスターが多ければ間引くことだ。そちらの仕事をまずは済ませたほうがいいだろう。1つ1つ確実に済ませていくべきだ。
そう考えながら襲ってくるモンスターを倒し、罠を潰し歩いた。




