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カレンの魔力

初級魔法(オリジナル)・『解析』」


 持ち帰ったスノーフェアリーを合成室へと誘導し、解析しながらルミネスに説明していく。


 この魔法は光を通す事で、物質に込められた魔法陣や魔法の原理を細かく知る事ができる。


 スノーフェアリーを解析魔法の光が包むと、その魔力情報が頭に流れ込んでくる。


 体を構成しているのは氷の魔力と僅かな水分だ、自然発生した精霊魔法により、一時的にただの水が知性と命を与えられているだけだ。


 生物と言うよりは、自然現象に近い存在みたいだな。


「って感じなんだけど、大体解ったかな?」

「ええっと、全然解りません……私は召喚魔法以外は得意な方では無いので」


 確かに精霊魔法は規模が低い割に、人間が使う魔法よりも難しいからなー。ルミネスは苦笑いで頬を掻いていた。


 合成室に置いてある巨大な鍋に魔法で浄化した聖水を入れ、加熱の魔法で沸騰させる。


《グツグツ》

 

 煮える鍋に、クリスタルとスノーフェアリーを投入する、ぽいっと!


《キシャー!?》


 加えて適当な伝説っぽい水属性モンスターの素材をぶっ込む。


 モフモフの白い『雪男の毛皮』に、高い魔力を秘めた『クラーケンの瞳』をボチャボチャッっと!


 最後に合成魔法を使い、鍋の中のスノーフェアリーを各素材と合成させ、クリスタルの魔法石へと封じ込める。


「上手くいくかなー、

 初級魔法(オリジナル)・『合成』&『召喚契約刻印(サモンコントラクト)』」


《キ! キシャー!?》


 合成の鍋に魔法陣が刻まれ、中の素材が光を放ちながら合成されて行くと、ポーン!っと勢い良く『クリスタルの精霊石』が鍋から飛び出して来た。


 上手くいったぞ、成功だ!


 落下し床を転がる精霊石をルミネスが摘み上げ、光に透かし観察している。


「見た目はただのクリスタルですね、実態のない精霊か何かですか?」

「そんな感じかな、妖精を精霊に進化させたんだよ。使用者と融合して魔力と身体を強化できるんだ」


 合成精霊・『アイス・スピリット』


 召喚すると使用者の体内の魔力を宿にして現れる融合型の精霊だ、ちなみに分離も出来る。


 カレンはまともに魔法が使えないし、冒険者になるなら少しは強くならないとね。


「ああ見えてカレンの戦闘能力は、だいたいハムスターと同じくらいだからね」

「見たまんまですけどね」



 ※



 狭い畳の部屋でゴロゴロと雑誌を読んでいたカレンを、転移魔法で家の裏庭まで連れてきた。


 万が一に備え、僕とルミネスでカレンの召喚魔法を見守る。クリスタルの精霊がカレンの体に上手く馴染むか確認しておかないと。


「さぁカレン、召喚してみて!」


 カレンも初めての召喚魔法に、気合を入れて構えている。


「ふんっ! 行くよー、出でよ!

 精霊召喚・『アイス・スピリット!』」


 召喚魔法により、クリスタルの魔法石が輝きを放つ。するとカレンの背中からモソモソと、漆黒の毛並みをした『暗黒の翼』が生えてきた。


 うまく召喚されてるな、実体は無いけどカレンの体内に精霊の力を感じる。


《我が主人カレン様、我は聖なる暗黒の精霊。

『暗黒氷の精霊、ディープダーク・アイス・スピリット』です》


「はじめましてー、何これ可愛い! もふもふの翼だよ」

「可愛いけど、何か名前が長いな……」


 厨二病全開な暗黒の翼に、嬉しそうに小躍りを始めたルミネス。


「改心されてます! 正にあれは暗黒の翼!!」


 何でだろ? 白い毛皮を使った筈なんだけど……あ! 多分スノーフェアリーがルミネスに噛み付いたせいだ!


 あの時、ルミネスの指から出た血が鍋に混じっちゃったのか。


 遺伝子レベルで中二病なんだな……


「融合中は精霊魔法が使える筈だから、試しに使ってみたら?」

「うん、やってみるよー」


 カレンは着ていたワンピースの袖をまくり、慣れない手付きで魔法陣を描いた。


「んー、なんかいけそうだよ!

 精霊魔法・『ブリザード・スピリット』」


 詠唱と共に裏庭に巨大な氷の竜巻が現れ、ズバッ!と地面を抉ったその瞬間、瞬きする間も無く竜巻が一瞬で消滅した。


 無表情で抉れた地面を見つめる僕とルミネス。


 消えた……魔力切れのせいだな、どんだけ魔力無いんだよ!


「で、でも、まあまあ凄いな……カレンの魔法とは思えない」

「ええ、最弱の地味娘とは思えません」


《我の魔法ですが何か?》


 カレンは無表情の僕達を見て、申し訳無さそうに呟いた。


「何かごめん、普通に褒めてよ……」


 カレンの放った魔法は氷属性だった。ダークスピリットは雪の妖精をメインに合成した精霊だから、それが上手く現れたのかな。


 無事に精霊石の試運転を終え、実技試験の時に渡したネックレスにクリスタルの精霊石を取りつけた。


 さて……試運転も終わったし、カレンの機嫌取りの開始だ。


「実はそれ、カレンへの入学祝いのプレゼントなんだ」

「そうだったんだ!? 嬉しい……大事にするよー」


 昨日の事などもう忘れたのか、涙目で抱きついて来るカレンをルミネスが強引に体で遮った。


「こらっ、ドミニク様から離れろ地味娘!」

「えー、邪魔だよ、ルミネスー」


 バタバタと喧嘩が始まった、頼むから仲良くしてくれ……


 ※


 転移の狭間を潜り、帰宅するカレンに手を振る。


「首席合格おめでとう、またね! ドミニク」

「ありがとうカレン、またねー」


 ふぅ、良かった。すっかり機嫌は直ったみたいだ。


 それからリビングに戻り新入生代表の挨拶を考えていたら、ルミネスと意気投合したダークスピリットが謎の会話を繰り広げていた。


 カレンから分離したダークスピリットは、全身半透明で翼のある獣人型の精霊だ。


「成程、では天界の波動を感知しこの地に舞い降りたと」

「いや、我を導いたのは正しくは暗黒の満ち潮、いや、暗黒の万有引力により」


「出て行ってもらえるかな……明日の入学式のスピーチの内容を考えてるんだけど」


 なんだよ暗黒の万有引力って、会話の内容が気になって全然集中できない、くそー。


「僕はもうご飯にするから、ダークスピリットはカレンの所に戻ってね」

「もうそんな時間でしたか。 暗黒よ、帰宅するのです」

「えー、我まだ遊びたいー」


 駄々をこねるダークスピリットを追い返し、ルミネスと適当にご飯にした。


「明日から僕は学校に通うから、ルミネスはお留守番だよ」

「そんなぁ、そもそもドミニク様が養成学校に通う必要はあるのですか?」


「将来的に仕事に就く時に有利になるからね。資格とか色々と必要になってくるんだよ」


 養成学校では、冒険者として生きて行くための知恵と技能を身につけるだけでなく資格も取れる。


 資格を持っていないと、依頼や生産品の販売等にも制限が付く。


 僕が生活の為に販売しているポーションも、冒険者ギルドに指定されたレシピで作り、ギルドにしか販売する事が出来ない。


 食事も終わり部屋に戻ると、机に向かい集中してスピーチを書き上げる。


 静かだ、あの2人が居ないと進むなー!

《カキカキ》


『天空を駆けるドラゴンの訪れと共に、僕達、普通の冒険者の卵は無事に一般的な養成学校の平凡な1年として迎えられる事と成りました!つきましては一一一一』


 出来た、こんな感じかな? 普通の学生が書いた普通のスピーチに仕上がってるな! よし、明日に備えて今日はもう寝よう。


 部屋の明かりを消すと、すぐに眠気が襲ってきた。


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