#第33話 全ては平和のために
#第33話 「全ては平和のために」
ーーーーー東京のメンバーが作戦会議をしていた、その日の夕方18:30頃ーーーーー
「俺の予想が正しければ、連中は既にブルート製造機構の存在に気が付いている。」
「なるほど・・・。
その上での防衛戦、という訳だな?」
岡本 龍星は、
夕日の差し込む接客室のような場所で
もう1人の男と対面で会話をしていた。
「藤原 玲二、どこか不満そうな顔をしているが、
どうかしたのか?」
藤原と呼ばれた男は、
口元に微かに笑みを浮かべる。
「さすが、15年以上の付き合いなだけあるな、龍星。
俺がシンギング・ウォーズにドはまりした挙句に、不登校になった時、
お前が助けてくれたお陰で、俺は高校教員になれた。」
「相変わらずの生徒愛だな。
互いに、当時を思い出すな。」
・・・この場所は旧岩手県の北川高校。
15年前、彼らが通っていた学校だが、
旧宮城県仙台市を中心とした東北パーマネント・ガーディアンスの
更に北に位置するため、
今は一般人が寄り付かない廃墟となっている。
当時、シンギング・ウォーズというネットゲームが社会的ブームとなり、
その影響で学校に来ない不登校生が沢山いた。
藤原 玲二もその1人だった。
「・・・その後、お前が”追い求めたもの”には出会えなかったのか?」
岡本が訊く。
「あぁ・・・。俺の記憶から、世界から、明らかに抜け落ちているんだ。
歴史が無理やり変えられているような、そんな感覚なんだ。」
「ほう・・・それは何とも奇妙だな。」
岡本は席を立つと、
藤原に背を向けて窓際から夕焼けを眺めた。
「龍星、お前には、俺の教え子を全員無条件で
東北パーマネント・ガーディアンスに入居させてもらって、
本当に感謝している。」
「・・・ちなみに、お前が俺に協力する理由はその交換条件のためか?
もしくは、お前自身の行動理念によるものか?」
・・・そこで10秒ほど、互いの沈黙が続いた。
「・・・俺の最優先事項は”自分の生徒を守る”ことだ。
そういう意味では前者だと言えるだろう。」
「なるほど、それでいい。
無理に俺の思想に共感してもらう必要はないからな。」
「・・・龍星、俺はお前には勝てない。
だから、無駄に革命を起こそうとはしない。
お前に従う。」
岡本は藤原に背を向けたまま話を聞いていた。
「分かった。・・・今日はわざわざ来てもらって感謝する。
おそらくではあるが、いずれ連中は
東北パーマネント・ガーディアンスから更に北上し、
ここまで来るはずだ。
藤原、お前には東北パーマネント・ガーディアンスを
最終防衛ラインと位置付け、現場の指揮を取ってもらう。
ブルートもそのように誘導しておく。
名古屋Qtainの実力、見せてみろ。」
藤原はポケットからSランクチップである
”ニュートン”を取り出すと、握りしめた。
「・・・そう言えば、龍星はブルートの制御コードは
無事に手に入れたのか?」
「手に入れ、ブルートを自在に操るシステムも既に開発済みだ。
だが、量産はできない。
俺のプロトチップである”アンインストーラー”にのみ現時点で搭載している。」
「・・・その理由は?」
「ブルートを操るには、ヤツらの体内に直接ウェポンを突き刺し、
自分の【声】を催眠術のように呼応させて
命令を打ち込む一連の動作が必要となる。
これは俺の特性を活かしたシステムになっているため、
他の者では再現性がない。
しかも、問題もある。
現時点で危険度が最も高いサジタリウスはヤツの性質上、
命令を打ち込む事ができない。」
「サジタリウスは野放し、って訳か。
現在の位置は特定できているのか?」
藤原が尋ねると、
岡本はタブレットを起動し、差し出した。
「昨日時点では、大阪パーマネント・ガーディアンスの東、
旧福井県にいるとの情報が入っている。
連中は、このサジタリウス討伐にも人員を配備すると想定している。」
「どちらかというと、サジタリウスに対しては
パワー系よりもテクニカル系の方が対策し易そうだな。
そうなると、”上戸鎖”か?」
藤原は5年前、
上戸鎖 祐樹のもとで、
フォーサーの手駒として働いていた。
「たとえ、上戸鎖でも
サジタリウス攻略は厳しいと踏んでいる。
しかし、万が一の事も考え、京都Qtainと大阪Qtainの2体を
付近に配備した。」
「”Qtain最強の2体”をそこに配置するのか・・・。
あれ?でも、東京はどうなったんだ?
東京Qtainは龍星が選定していないって
以前言ってたよな?」
「本来は名前的に”東京”が最強だが、東京は当時、
パーマネント・ガーディアンスを構築する際の人員が強力過ぎて、
俺が手回しする事が叶わなかった。
だから、ZZZZZ勢力に先を越された訳だ。」
パーマネント・ガーディアンス、
および、各地方を支配するQtainの計画を先に考案したのは
岡本であるが、彼の主導で完成したのは
・北海道
・東北
・名古屋
・京都
・大阪
・九州
のパーマネント・ガーディアンスである。
東京は上戸鎖と明電が主体で動いていた影響で
岡本は容易に干渉できず、
先にZZZZZ社からの刺客である
中久喜に色々と仕組まれてしまっていた。
その後、東京Qtainである皇 慧仁具真と
中久喜は死んだので、
結果的には、彼の作戦に影響が出ていないというのが事実らしい。
岡本直下のQtainの実力としては、
”京都Qtain”が最強。
次に大阪Qtain、となっており、
その下の4名は戦況による、とされている。
東北Qtainの内垣外は既に
明電との戦いで死亡。
北海道Qtainは過去にSランクブルートとの戦いで死亡しており、
残りは4人。
「連中は長野県の”ブルート製造機構”にも手出ししてくると考えられる。
ここには九州Qtainを配置する。」
「もう地方名称は関係ないという訳か。
総力戦になるな・・・。」
「俺達は”オメラス計画”をいかなる手段を使っても成し遂げる。
皆が・・・平和な世界を実現するために。」
岡本 龍星は
15年前に否定したはずの伊集院 雷人の思想を
5年前に引き継いだのだった。
・・・彼が求めるのは、皆が”平和”に過ごせる世界。
しかし、”平和”には犠牲が必要だという事を
彼は伊集院から学んでいた。
15年前に始まった【正義の味方】たちの争いは
ついに最終局面を迎えようとしていた。
#第33話 「全ては平和のために」 完結
お読みいただきありがとうございます。
岡本 龍星は
前作のブレイキング・ローズで
藤原 玲二の”追い求めたもの”である
陽遊 基を世界から消していますが、
世界から消えた人物は、この世界の皆の記憶から消去されています。
よって、岡本自身も彼を消した事を覚えていません。
各地方最強の帝、Qtainは、
作者設定では、前作に登場する
上位フォーサー10体分ほどの戦闘能力を持っているものとデザインしています。
仮に前作のキャラで例えると↓
①上戸鎖:トランセンデンタル・オーガナイザー
②伊集院:ドミクロン・ツヴァイアンサー
③衛久守:ノウベタザン
④基:夢幻貴王アリエス・ギャランティアー
⑤惣野代:コワレタセカイ・過剰ディスガイズ態
⑥中仙道:世刑海獣ディザイヤー・リヴァイアサン
これの②~⑥と互角以上に戦える存在が
Qtainだという解釈で大丈夫です。




