#第20話 地方最強?7人の帝
#第20話 「地方最強?7人の帝」
・・・時刻は18時を過ぎている。
東京パーマネント・ガーディアンスの中心部とも言える
司令本部棟の大会議室にて、
Sランクブルートである”スペクタキュラー・ヴァルゴ”の討伐作戦について
緊急会合が開かれる事になっていた。
・・・だが、司令官である明電 峰隆が
最初に提示したのは、ほんの1時間ほど前に
この壁内で起きた事件についての件だった。
どうやら、SAS開発者である神崎 高来が
作戦指揮官の入院する病室へと侵入、彼の殺害を試みたらしい。
しかし、そこに謎のSAS装着者が現れ、
神崎を返り討ちにして殺害。
その犯人は逃走中との事。
・・・ただし、今の先決事項はヴァルゴの討伐であるため、
3分ほどで話題はすり替えられた。
大会議室は400人以上が収容できるほどの設計になっており、
階段状に並べられた長テーブルは大学の大型教室を連想させる。
しかし、その席には、
前に詰めた20人ほどしか着席していなかった。
「ヴァルゴの音波による身体への不調を促す攻撃に耐えうる
防音機能がSASには標準搭載されている。
よって、本作戦にはSASの装着を義務付ける!」
司令官である明電 峰隆が
やや高めの声で言い放つ。
「しかし、ヴァルゴは自身の表面に
音波による防御壁を展開しているせいで
攻撃が通らないと聞きました。
これを突破する手はあるのでしょうか?」
第2小隊の細身の隊長が挙手をしながら問う。
「それに関して、
本作戦には大阪パーマネント・ガーディアンスからの
派遣人員に参加してもらう事になった。
・・・こちらに。」
司令官がそう言うと、
ステージ後ろのドアが開き、
1人のガタイの良い男が入室してきたのだった。
上下白いスーツを着込み、
肩から白い大きめのローブを羽織っている。
「・・・俺は大阪パーマネント・ガーディアンスから来た
中仙道 武雅だ。」
髪はショートヘアを激しく立ち上げたようなイメージ。
そのギョロッとした目の感じと、歪んだ口元から
彼の野心的な性格がひしひしと伝わってくる。
「彼はフォーサーとは異なる”アトラクター”という存在だ。
そして、固有の能力として
特定の音階の音波を発し続ける事ができる。
これによってヴァルゴの音波とは逆位相の音波を発し、
その効果を打ち消し合う、という作戦だ。」
「・・・今、司令官から説明のあった通りだ。
ちなみに、俺は脳に作用する音波の影響を受けないため、
俺自身は無害だ。」
そう言うと、会釈程度に軽く頭を下げて
中仙道は前の方へと着席した。
・・・援軍の割に、随分とあっさりした紹介だな。
「そして・・・本作戦では史上初となる
Qtainを戦線に投入する。」
司令官がそう言うが早く、室内はガヤつき始める。
「司令官!Qtainは壁内で試運転を行えておらず、
その危険性が未知だと聞いています。
加えて、何人も死者を出していると。
そんな被検体と共同で作戦を実行できません。
危険です!」
第3小隊のリーダー格らしき男性が声を張り上げた。
・・・俺としてはQtainという存在は初耳だ。
秘密兵器だろうか?
「まぁ、最後まで聞いてくれ。
知らない者のために説明しよう。
Qtainとは、
各地方パーマネント・ガーディアンス内で
SASへの”最高適合レベル”に達する人間の事を指す。」
・・・つまりは体質上、
SASの扱いに長けている者という解釈で良いだろう。
「ちなみに、この東京パーマネント・ガーディアンスでは
QtainにはSランクチップを貸与している。」
「それはつまり、SAS開発者である、神崎氏が
東京のQtainという事ですか?」
俺は自ら挙手をし、訊いた。
「いや、東京パーマネント・ガーディアンスには
現在2本のSランクチップが存在している。
神崎は開発者権限でそのうちの片方、
“シュヴァイツァー”を使用していたに過ぎない。」
・・・確かに、俺が以前見た
神崎の戦闘の様子から察するに、
彼はどう見ても”最強”には見えなかった。
「紹介しよう。
出てきてくれ、茂木 桂太郎。」
司令官の呼び掛けに合わせ、
彼の背後の扉が開き、童顔で背丈の低い男性が入ってきた。
・・・だいぶ大きめの深緑色のテーラードジャケットを羽織り、
下はこれまたブカブカの黒いワイドパンツ姿で
その裾を引きずっている。
頭髪は何も考えずに伸ばし放題といった感じで、
両目は愚か、前髪の先が口に届きそうなほど長い。
身長は見たところ160cmちょっと。
しかも、猫背のせいで余計に小さく見える。
「・・・皆さんどーも。
僕は、東京パーマネント・ガーディアンスのQtain、
茂木 桂太郎、18歳です。」
彼の声は見た目通り幼い印象を受ける。
「第3小隊の大石が言う通り、
彼は未だに試運転が行えず、危険な状態だ。
しかし、前回のSランクブルート戦では
SAS装着者50名以上が犠牲になったという過去がある。
そういった反省から、彼を実戦投入する事に決定した。」
・・・結局、その直後に第3小隊隊長の大石と
司令官である明電 峰隆の言い争いが続き、
第3小隊は本作戦に不参加という意思を示した。
・・・そして会議は終わり、時計は18時30分を過ぎた。
俺は司令本部棟を出て、
見晴らしの良い”キャピタルタワー”の展望台へと訪れていた。
キャピタルタワーは司令本部棟から7㎞ほど離れた場所に位置しており、
40階建ての商用施設である。
もう日は暮れ、パーマネント・ガーディアンス内の街灯りがきれいに映える。
他に人は5人ほどしかおらず、
とある女性1人を除き、皆で外をぼーっと眺めている。
その1人は中心にあるベンチに腰掛けて、
何やら下を向いて頭を押さえている。
・・・なぜ俺はこの過去の世界にいるのか。
その問いは隙があれば常に思い返していた。
それを忘れたら、俺が今生きている意味がなくなる。
全ては、欲望ウイルス”ラパシティ”による
パンデミックを防ぐため。
過去の時代には、必ずそれを防ぐための
ヒントがあるはずに違いない。
・・・考えながら外を眺めていると、
いつの間にかベンチに座った女性以外の人間はいなくなっており、
その女性もスマホをいじりながら立ち上がって
帰ろうとするところだった。
それを見て俺もそろそろ引き上げようと
手すりから手を放したその時だった。
彼女はふと力が抜けた様に片脚から崩れ落ちて、
そのまま地面にうつ伏せに倒れた。
「・・・大丈夫か?」
さすがに無視はできず、
小走りで駆け寄るが、彼女は咄嗟に立ち上がった。
・・・全体的に痩せ型。
服装は黄色のロングスカートに長袖のシンプルな白いブラウス。
肩まで伸ばした黒髪が印象的な、
全体的に真面目なイメージを放つ女性だ。
「大丈夫です。」
彼女は落としたスマホを拾い上げ、
そのまま立ち去ろうとしたが、
またもや3歩ほど進んだ先でこけた。
その際、一瞬ではあるがスカートが軽くめくれて
彼女の細い脚が露出した。
俺は瞬時に、
その脚に無数のアザのような黒い跡があるのを見てしまった。
「・・・何があった?」
「何でもないんです!」
彼女は再び立ち上がろうとするが、
今度は膝立ちの状態でとどまった。
スカートの丈が短くなり、
再び両脚のアザが露出した。
「くっ・・・」
「コレは暴行の跡だろ?婚約者によるものか?」
「・・・」
彼女は黙った。
でも、それが答えだった。
ふと彼女の顔を見ると、
目には涙が溢れていた。
#第20話 「地方最強?7人の帝」 完結
今回もご覧いただきありがとうございました!!
各地方の代表SAS装着者、Qtainは、
現実世界のとある大学群をモチーフにしております。




