↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/4

一話

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇


 魔王直属の配下、キングビル。


 クロウドベリーより北へ続く街道を塞ぐその魔物を討伐するため、勇者アルベルト、僧侶セシル、そして魔戦士の俺、マッツンの三人は魔窟へ入った。


 結果だけを言えば、惨敗だった。アルベルトが撤退を決断しなければ、誰か一人くらい死んでいたかもしれない。


「……マッツン。この先、お前を連れていくことはできない」


「は?」


 だが、アルベルトがテーブルの上に置いた紙を見れば、言わんとしていることは分かった。そこには三人の現在の能力が書かれていた。


 勇者アルベルト レベル38。

 僧侶セシル   レベル36。

 魔戦士マッツン レベル21。


「キングビルだけの話じゃない。このところの戦闘じゃ、俺かセシルがお前を庇うことが増えてる。この先へ進めば、もっと強い魔物が出てくる」


 ◇


 あとは追放系お決まりのパターンだった。


「そんな顔すんなって。俺が弱いのは事実だろ」


 アルベルトとセシルは何か言いたそうにしていたが、別れ際に口から出たのは「元気でね」という、ありふれた言葉だけだった。


 ◇


 勇者パーティーを追い出されたからといって冒険者を辞めるつもりはなかったし、なによりレベル二十一のままで終わることが腹立たしかった。


 翌日から一人で魔物を狩り続けたものの、どれだけ倒してもレベルは上がらない。


(やっぱり俺には才能がないのか……)


 そう思い始めた頃、一万体目の魔物を倒したところで《限界突破》なる固有スキルが解放された。


「とうとう来た! 雑魚敵倒しても一回でレベルが上がるチートスキル! 待ってたぜ!」


 そこからは早かった。


 三日後、一人ではまず討伐不可能とされていたキングビルの首が、俺の足元に転がっていた。


 ◇


 キングビルが消えたことで北への街道は開かれ、商人も冒険者も再び先へ進めるようになった。その魔物を単独で倒した俺はクロウドベリーで英雄扱いされ、いくつものパーティーから仲間にならないかと声を掛けられた。


 そんな時だった。


「マッツン!」


 聞き覚えのある声に振り返る。

 人混みの向こうから歩いてきたのは、アルベルトとセシルだった。


「聞いたぞ! キングビル、一人で倒したんだってな!」


「ああ」


「すごいじゃない! 本当にびっくりしたんだから」


「お前のおかげで、俺たちもようやく北へ進めるよ。本当にありがとう」


「……おう」


「それでさ、マッツン。良かったら――」



(来たーーーーー!!)

 


 アルベルトがゴソゴソと腰の鞄に手を入れ差し出されたものは、一本のダガーだった。


「――これ、持っていってくれよ」 


「……これは?」


「覚えてるだろ? お前が俺たちとパーティーを組んだ頃に使ってたマッツンの初期装備」 


「この前、道具袋の整理してたら出てきたんだ。捨てるのもなんか違うなって思ってさ。それでキングビルを倒したって聞いたから、お祝いも兼ねて返そうと思ったんだ」


「……」


「ちゃんと鍛冶屋で磨いてもらったんだぜ。結構綺麗になっただろ?」

 

「じゃあ、私たちは行くね」


「キングビル、本当にありがとう。マッツンも元気でね」


「……」

   

『良かったら、また俺たちと一緒に来ないか』



 アルベルト御一行は、俺にそう言ってくれなかった。



 ◇


 それからしばらく、俺は誘われたパーティーに仮加入して冒険を続けた。

 ところがある日、依頼を終えて街へ戻ると、勇者から仮加入は今日までにしたいと言われた。


「本当に助かったよ。お前がいたから俺たちじゃ無理な依頼もこなせた。でも、俺たちじゃもうお前の足手まといだろ?」


 仲間たちからも礼を言われ、報酬まで多めに渡されて、俺はまたパーティーを外れた。


 その夜、宿屋のベッドでアルベルトから返されたダガーを眺めた。


 弱かったから追放された。だから強くなった。


 なのにアルベルトたちは俺を誘わず、今度は強すぎるから外された。


「…………もしかして悪いの、俺なのか?」


 初めてそんな疑問が浮かんだ。


 ◇


 俺は独立ってわけではないが、個人傭兵にしばらくなることにした。

 クエストをこなしたり、レベル上げに勤しんで、音を置き去りにする目標は一旦中断。


 そして今は報酬が残っていないわけではないんだが、この世界冒険者は戦っていないと結構きついんだ。

 武器や防具のメンテナンス、ただひたすらガチって連続して戦えばいいってものでもない。

 身体が資本だから、一番メンテナンスがいるのが自分だ。


 ある日、レベル上げが目標ってことでパーティに経験値を多く渡すって依頼があった。

 

 一人で倒していた時の俺は百パーセント。

 そしてパーティを組むと倒した奴が五十%、残りの五十%をいるメンバーで割った経験値が入る。

 それがこの世界の常識である。


 このパーティは重症を負った魔法使いが復帰したのだが、他のメンバーとレベルの差が生まれてしまったので、均一にある程度戻したいって依頼だった。


 俺がギリギリまでドラゴンを痛めつけ、最後魔法使いの女性がとどめを刺さして、経験値を五十%入れる。結構イージーな依頼で、報酬も高かった。


 そんな中、経験値の高いゴールドドラゴンと遭遇した。激しすぎる炎攻撃は、現在のパーティが食らったら一発でお陀仏だ。

 当然俺は依頼者に飛び火しないよう、避けるのではなくあえてガードして近づいてゴールドドラゴンに攻撃……ってしまった!


 思わずガードしながら攻撃したら倒しちゃった。


「ゴメン、ゴメン!わざとじゃないんだ」

 俺はニコリと笑ってみんなへ謝ったが、意外にもそこにあったのは『ドンマイ』ではなくため息だった。


「じゃ、今日の報酬」


 二五〇〇〇ゴールドももらった俺に充足感はなかった。……違う!充足感ではない、俺はこのため息をつくパーティから教えてもらえた。


 その夜、酒場に行きアルベルトのことを思い出しながら酒を飲んでいた。

 俺とアルベルト達のレベル差が少しずつ開いていた時、同じように俺にとどめを刺させてくれている時期があったと思う。いや、あれはアルベルトとセシルが上手く誘導してくれていた?


 とどめを刺さしゃいいのに、ダメージを与えた敵を残し「あとは任せた!俺は向こうの敵が危険だからそっちを止めてくる」勇者アルベルトってそんな感じのセリフが多かった気がする。


 僧侶は常に何故か俺の後ろにいた。

 レベルが全然低くて、俺の攻撃が当たらなくても、後ろでずっと回復していてくれていたような気がする。そう気がするのだ。


 あの時、俺はなにも見えていなかった。

 

『キングビルだけの話じゃない。このところの戦闘じゃ、俺かセシルがお前を庇うことが増えてる。この先へ進めば、もっと強い魔物が出てくる』


 アルベルトが俺をパーティから外すときに言っていた言葉。この時、アルベルトは笑っていたか?

 怒っていたか?それとも……


 俺は道具袋から初期装備のダガーを取り出した。


 俺達は魔王討伐で結成したのが九年前。

 当時俺とアルベルトは十六歳。

 セシルだけ一つ上で十七歳だった。


 あの時俺達は、そんな気を使い合っていたか?

 いや、みんな必死でモンスター倒して、次の街についたらみんなで大騒ぎして、俺は身体がデカいからみんなの前に立ち塞がって、アルベルトが毎回……毎回……ありがとうっていってくれ……セシルは……


 俺は戦士で現在二十五歳の戦士だ。

 なのに、止めようと思っても涙が溢れて溢れて止まらないのだ。


「アイツは、本当の勇者だ……」


 出来ることは全部やってくれていた。

 自分のことしか見なくなったのはいつの頃だっただろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。