033「祭りのあと」
「申し訳ございませんでしたぁぁぁ!」
配信終了直後、すぐに真希名さんは3人の前で正座させられていた。
「まったく何考えているのよ、真希名。いいかげんにしなさい」
「上手くいったからいいものの、一歩間違ったら炎上する可能性は多いにあったんですよ。反省してください」
「すごいビックリしたの。社長、今回はやりすぎなの」
3人からマジギレなコメントが寄せられる。
「本当に、本っ当に、申し訳ございませんでしたぁぁ!!!!」
真希名さんが再度全力で誠心誠意謝る⋯⋯が、
「でもサプライズのおかげで、3人の良い表情とリアクションが撮れたよ!」
と、キラッキラの笑顔でわざわざそんな戯言を言う始末。
もちろんその後は3人から「こいつ全然わかってない」と追加でしっかりしっぽり絞られていた。
真希名さん、墓穴ディガーかな?
「それにしてもまさかイッチ様がウチからデビューするなんて本当に驚いたの!」
興奮してそんなことを言ったのは『長月輝夜』こと、那月香耶ちゃん。
ちなみにこの『なの』という語尾はプライベートでも変わらない彼女の口癖のようなものとのこと。あらかわ。
「あ、そうそう! 何で香耶さんってイッチ君のこと知っていたんですか?」
そんなテンション高い那月に質問したのは『天乃ウズメ』こと、現役JK天野藍ちゃん。
「え? 22ちゃんねるのオカルト板でイッチ様が予告スレを立てて、それから配信を観てファンになったって感じなの」
「オカルト板⋯⋯それってもしかして真希名もそこからイッチ君のネタを仕入れたの?」
そんな真希名の趣味『オカルト板ROM』を知る友人でもある『高天原椿姫こと、姫野椿が真希名を問いただす。
「イエース、ザッツライツ! だからその時点で香耶もイッチ君のこと知っているだろうなとは当たりをつけていた」
「私もイッチ様が出てきたとき、真希名さん私が一人『リアクションおかしくなるの前提』でサプライズにしたなって思ったの」
「さっすが香耶ちゃん! 鋭い!」
「それでも一言入れて欲しかったの! 正直サプライズの衝撃で気を失ってもおかしくなかったの!」
「⋯⋯ご、ごめんなさい」
そう言って、香耶が真希名に本気の訴えをすると真希名はすぐにシュンとなり、ただただ平謝りをする。
そんな真希名の『公開処刑』が一段落したあと、
「「「さて、ここからはイッチ君の話ね(なの)!」」」
そう言って、3人がグッと視線を向けてきた。
「お、お手柔らかに、お願いします⋯⋯」
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「ぶっちゃけ率直にストレートに聞くけど⋯⋯⋯⋯異世界行ったってマジっすか?」
「マジっす」
「「「「⋯⋯⋯⋯っ!???」」」」
いまさらな質問だなと思う琢磨だったが、しかし3人、いや真希名を含めた4人は琢磨の口から「本当に異世界に行った」という証言を改めて聞かされて衝撃を受ける。
「⋯⋯最初、琢磨君をスカウトしたときは異世界に行っていたことを信じていたわけじゃなく、君自身のキャラクターとしての魅力でスカウトしたんだけど、でもこうして人前で君が異世界の証拠となるアイテムや魔法を披露するのを改めて観たら、正直戸惑いしかないわ⋯⋯」
「戸惑い?」
「うん。だって冷静に、冷静に考えたらよ? 君の力ってすごいものじゃない? もちろんすぐに皆が信じるようなことないと思うけど、でも中には冷静に君を分析して『本物』だと確証を得る人も出てくると思う。そうなった時、恐らく君のことを利用しようと近づいてくる人間が出てくる。そうなったらって考えたら少し怖くなったの」
「⋯⋯」
「でもね、だからといって契約を解消しようなんて思ってないわ。むしろ、今回第三者として外から冷静に観て改めて琢磨君を守りたいと思ったの!」
「えっ!?」
琢磨は真希名の言葉が意外だったため、思わず声を張ってしまう。
琢磨はてっきり真希名が「契約解消してほしい」と言うと思っていた。
なぜなら真希名自身が「怖くなった」と言ったから。
それはつまり「命の危機」を感じたということ。だからここで契約解消という話になってもおかしくないだろう⋯⋯琢磨はそう思った。
しかし実際は真希名は「怖くなった」と口にしたその上で琢磨を「守る」と伝えた。そんな真希名の覚悟とも取れる言葉に琢磨は驚いたのだ。
「真希名さん⋯⋯」
そんな彼女の言葉に驚きつつもその気概に感動する琢磨。さらには、
「私たちも同じだよ、琢磨君!」
「そうですよ、琢磨さん」
「私だってイッチ様を守るの!」
と、自分たちも真希名と同じ気持ちだと3人が琢磨に力強く声をかける。
「み、みなさん⋯⋯」
琢磨が4人の言葉に感動し、自然と笑みが溢れる。
「ありがとうございます⋯⋯こんな初対面な俺に対してそこまで言ってくれるなんて思ってもみませんでした⋯⋯」
琢磨の素直な言葉に4人が一度照れ笑いを浮かべる。そして、
「「「「ようこそ。アンダーテイルへ!」」」」
4人が改めて、気持ちを込めて琢磨に歓迎の言葉をかけた。
「は、はい! これからよろしくお願い致します!」
こうして、アンダーテイルの2周年記念と琢磨の新人ライバーデビューイベントが終了した。
琢磨はこれをきっかけにライバーというネット配信者の枠を超え、現実社会にまで影響を及ぼすことになっていくのだが、しかし現時点で琢磨もアンダーテイルメンバーもこれが『ターニングポイント』になるなど知る由もなかった。
第一章 完
<第一章 あとがき>
皆様、ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。
これにて第一章完結となります。
第二章はまだ書き終えていないのでもうしばらくお待ちいただければと思います。
mitsuzo




