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異世界帰還者イッチちゃんねる〜異世界も魔法もあるんだよ!〜  作者: mitsuzo
第一章

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22/33

022「期待と不安」



——真希名 綾瀬の場合


「どうやらイッチ⋯⋯じゃなかった琢磨君うまいことやったみたいね(モグモグ)」


 彼女は夕食用に買ってきたコンビニのおにぎり(ツナマヨ)を頬張りながら22ちゃんねるのオカルト板を眺めていた。


「それにしても琢磨君、私のこと『美人』だなんて⋯⋯くぷぷ」


 さっきの配信で琢磨が事務所に入る決め手となった理由に「社長が美人」と言ったことを思い出すと、せっかくの美貌が残念仕様となる含み笑いの真希名。


「おっといかんいかん(じゅるり)。さてと、とりあえずこれで舞台は整ったわ。あとは明後日の本番に備えるだけね!」


 おにぎりをあっさり食べ切った真希名が今度はその横にある缶ビールに手を伸ばす。


 プシュ!


「んぐんぐ⋯⋯ぷはぁー!」


 ひとしきり喉ごしを楽しんだ真希名は、今のところ計画通りに順調に事が進んでいることに満足していたのだが、


「あ、そういえば《《あの子》》⋯⋯イッチのことは知っているのかしら?」


 ここで1つの懸念材料を思い出す。


「あの子がイッチを知らない⋯⋯なんて《《ありえない》》か。だってあの子も『オカルト板』を巡回している《《古参》》の一人だものね」


 PCデスクでトントントンと一定のリズムで奏でるソレは真希名が考え事をしているときの癖。そして、その考え事の主役は『あの子』。


「あの子がイッチに対してどう思ってるかはわからないけど、でもいずれにしてもイッチを認識しているあの子がどう反応するのか今から楽しみね、くぷぷ!」


 そういってまたもや残念くぷぷ笑いで2日後の『アンダーテイル2周年記念イベント』のことを想像して一人悦に浸る真希名であった。



********************



——???の場合 ※あの子


「な、何ですとー!」


 普段の私ならよっぽどのことがない限り、こんな大きな声で叫ぶことはない。

 しかし、この日は私にとってちゃんと『よっぽど』なことが起きた。


「ほ、本物だ。《《イッチ》》は本当に異世界に⋯⋯行ったんだ⋯⋯!」



 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいっ!!!!



 現実に異世界に転生した人がいただなんて!



 しかも今回の配信、あまりに情報量が多すぎるんだがっ!?

 いやイッチらしいっちゃイッチらしいけどもさぁ!



 さっきまでリアタイで『異世界帰還者イッチちゃんねる』の第3回配信を観ていた私は最初呆然として固まっていた。

 だって、あまりにも今回の配信が衝撃、且つ情報が膨大だったから。

 そのため、私の脳内処理が追いつかず配信終了後しばらくフリーズしていたのだ。


「イッチの今回の配信はこれまでの常識を軽々とK点突破してたし、何よりファンタジーが現実化した歴史的瞬間だったの⋯⋯」


 そう、今でも信じられないことだけどでもイッチは配信でちゃんと異世界の証拠を観せてくれた。最初アンチがそれについて「マジックだの」「CGだの」と騒いでいたけど後半はすっかり鳴りを潜めていた。


 そりゃイッチからあれだけ非常識なものが次々と出されたらアンチが静まるのも無理もないというもの。


「あのアイテムボックスのようなもの『収納ストレージ』だっけ? そんなまさにファンタジーの定番アイテム⋯⋯イッチのはスキルか⋯⋯が実在しただなんて! しかも現実でこの目で見る日が来るとか誰が想像できようか、いやできるわけないのー! それにその後出してきた『ポーション』、そしてその効果の実演⋯⋯何なのあれ!? 逆再生で傷が治っていくあれがCGやマジックであるわけないのー!」


 興奮して思わず一息に捲し立てる彼女。


「はあはあはあはあ⋯⋯もはやもうイッチなんて軽々しく呼べないの⋯⋯いや、呼びたくないの! これからは『イッチ様』と呼ぶの! そして私はこれからずっとイッチ様を推し続けるとここに宣言するのー!」


 彼女がガッツポーズを決めながらついにイッチを『様』付けするそれは『イッチ信者』が誕生した瞬間でもあった。


「そういえばイッチ様が次回の配信でライバー事務所からデビューするって言ってたけど、でも一体どこの事務所からデビューするんだろ?」


 一度、思いの丈を出し切ったおかげで冷静になった彼女はイッチがライバー事務所からデビューする話を思い出した。


「大手じゃないって言ってたけど⋯⋯でもそれだと何百ってあるから探すのは無理なの〜」


 とすぐに探すのは現実的に厳しいとわかり落ち込む彼女。しかし、


「あれ? でもそれでいったらもしかしたら《《アンダーテイル》》もワンチャンあるのでは? うん、全然その可能性あるの! ウチの事務所まだ2年しか経っていないし、大手事務所ってわけでもないし! あれ? マジで条件に当てはまるのでは?⋯⋯なのー!」


 と、先ほど事務所が特定できないと落胆していた彼女だったがすぐさま別の可能性を見出すとテンションが上がった。


「も、もしもウチの事務所で本当にデビューとかだったらイッチ様とぜひコラボしたいの! いえ絶対にするの! どんなことがあってもコラボ実現させるのー!」


 こうして、彼女の予想は2日後に見事的中するのだがしかしそうなったらそうなったで彼女⋯⋯アンダーテイル所属ライバー『長月(ながつき)輝夜(かぐや)』の中の人『那月(なつき)香耶(かや)』は当日、生イッチに出会ってある意味やらかすハメになるのだが⋯⋯はてさて、どうなることやら。


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