30.氷姫との出会い(アルゲイ・ミシャルゲ視点①)
昔から本が好きだった。本は僕にいろんな世界を教えてくれる。行ったことのない国のこと、平民たちの暮らしについて、生き物のことだって本を読めばなんでも知れる。
自分の知っている知識を周りに話すと周りの人はいつだって目を輝かせてくれる。
「すごい!」「知らなかったっ」とね。
それが嬉しくて僕はどんどん本を読んだり、そのことを尊敬する父上とお話しするのも好きだった。
そうしているうちに、周りがある事を言うようになった。
「さすがはミシャルゲ公爵様の御子息様ですな。我々とは違って元が違うと来た。天才の子は天才。いいですなー」
元が違う?
そんな、僕は僕が好きで本を読んだり、そのことが知りたくて学んだらしているだけなのにっ!
なのに…まるで僕が何もしてないのに出来がいい、それは父上の子供だからと言われているようだった。
言われるたびに苦しくて、いつしか、次期宰相になるのは当たり前なこと。
勉強しなくても賢い、それこそが宰相の息子である資格なのかとも思えてきた。
そして僕は人前でむやみに本読んだり学んだりするのをやめた。
恥ずかしい。
そう思うようになった。家でももちろんやめた。でも、僕は天才なんかじゃないと知ってる。
だから勉強しなきゃとの夜な夜な国立図書館に通うようになった。
まぁ、本が好きって言うのが本音でもあるけどね。
今日は殿下と国立図書館に来ている。王子とは父上の仕事について行っている時に王宮の図書館でばったり会って…そこからまぁ仲良くなった。
2人の時はフィリクスと呼び捨てにさせてもらうくらいには仲がいい。
超えなきゃいけない壁が高いもの通し、お互い近いものを感じた。
フィリクスだけは知ってる。僕が夜な夜な国立図書館に通ってるのを。そして今日は、僕が通ってる図書館に行ってみたいと言い出したことから始まった。
ついた途端、フィリクスはキョロキョロと周り見渡した。そして、「なんだ、国立図書館とは意外と小さいものなんだな」とつぶやいた。
そりゃーーそうなるよねぇ?
だって、君のお家王宮だよ。王宮にはここより立派な図書館あるじゃんか。
それにのか言ったよ?王宮の図書館で十分だと思うよ?って。なのに君がどおしても行きたいというからぁ。もーー。
ドン。
「わわっ!いひぃー、もうっ!急に立ち止回らにでよぉ」
前を歩いていたフィリクスが急に立ち止まり鼻をぶつけてしまうアルゲイ。
「見つけたっ!」
フィリクスは瞳を輝かせ、つぶやく。
見つけた?…なになにぃ。
何を見つけたのさ。
アルゲイがフィリクスの目線の先を追う。
そこには椅子に座って本を読んでいる長い黒髪の女の子の背中があった。
あの黒髪…スフィーク家の者か。黒髪はスフィーク家特有のものだ。
メルナ・スフィーク、黒髪に猫目がちの赤い瞳。なかなか笑わない無表情なことから氷姫と言われているらしいね。ふーーん。
ってか、図書館に来た理由それかよ!!フィリクスめ!僕が学んでいるところに行ってみたいとか言ってたくせにさっ。
僕はフィリクスにくっついていくことにした。
どこにって?もちろん、王子様が会いたくて仕方がなかった氷姫とやらにだよっ。




