26話・俺の幼馴染の邪魔
「でもひとつ疑問なんですけど、カノン先輩はこんな大胆な告白を
しちゃうくらい積極的なのに、どうして今の今までコウ君に告白を
しなかったんですか?」
それを不思議に思ったクーナが、人差し指を頬に当てながら首を傾げて
ハテナ顔をする。
「ん...勿論、あの後...速攻で告白行動に出たさ...。出たのだが......
コウの近くにいる、あの幼馴染ちゃんに...尽く邪魔をされてしまった...」
「あの幼馴染ちゃんって...ナナさんの事ですよね?」
「あの子...中々のやり手...。私のあの手、この手を先読みして、それを
全て阻止してくるのだよ...本当、残念無念だった...!」
ナナと繰り広げた数々のバトルを思い出すと、カノンは握りしめた
その拳をブルブルと震わせている。
「だが、その戦いも終焉を迎えた...。噂であの幼馴染に彼氏ができたと
聞いた私は、再びその行動を開始したのだ...!」
ブルブルと震わせた拳をカノンが天高く突き出すと、鼻息荒く興奮する
姿を見せてくる。
「そっか...カノン先輩、そんな昔からコウ君を好きだったんですね...?」
「うむ...愛してると言った方が正しい!...キャッ!言っちゃった...♪」
カノンが恥ずかしそうに両手を頬に当てると、その身体をクネクネ
くねらせて照れている。
「でもカノン先輩、そこまでコウ君の事を好きなのに...どうして私の
告白は阻止しなかったんですか?それどころか、一緒にコウ君の恋人に
なろうって言っちゃうし...?」
「ん...それは私とクーナちゃんが、さっき述べた言葉...同じムジナ...だから。
それに私の直感がこの子となら、一緒にやっていける...そう思ったから...だ!」
カノンが阻止しなかった理由をクーナに語り終わると、腕を前にゆっくり突き
出し、サムズアップをビシッと決める。
「カ、カノン先輩...。カッコ良すぎです!その懐の大きさに感涙ですっ!」
サムズアップしてドヤ顔をしているカノンに対し、瞳をキラキラとさせた
クーナが崇拝する様に、へへ~と頭を垂れる。
「あの二人...一体なにを話しているんだろう...?」
あ...カノン先輩が、満面の笑みを浮かべてサムズアップしてる...?
あ...今度はクーナさんがカノン先輩に対し、頭を垂れている......?
う~ん、めっちゃ気になる...!
気にはなっちゃうけど...流石に女子達の談笑へ割って入る程...俺の度胸は
大きくないし......
「そんな事より今の俺は、恋人が二人問題をどう処理すればうまくいくのかを
考える方が先だよな......」
そりゃ~ナナに去られた俺にとって、彼女が出来るのは嫌じゃないし、
正直嬉しいさ......
でも...なんでその彼女が、あの憧れのカノン先輩に...クラスの中でもトップの
可愛さを誇るクーナさん...この二人ともなんだよ......!
例えどちらかひとりだったとしても、目立つであろうこの女性達が...何故
俺みたいな、しがない男の彼女なんだよ......
うん...これは絶対に、みんなからの嫉妬と蔑みの目線が...山の如しだっ!
ハア...参った...明日が憂鬱だぞ......
一体どう説明したら、ことが穏便に済むかな...?
彼女ができて憂鬱って、シャレにもなってないよね...ははは。
幸せであろう恋人ができた状態なのに、不幸状態へのカウントダウンに
入っている今の状態に、俺は思わずニガ笑いがこぼれるのだった。




