25話・俺の撫で撫で(カノン先輩)
「これが大丈夫に...見えるのか...キミには...?」
カノンは、ムムッとした顔をして、さっき転んで打った頭を痛そうに
触って相手に見せる。
「はは...そうですね。あ...頭のここ...コブができてますね...?大丈夫...
ですか?」
「はうっ!?ちょっと、キミ!いきなり何をするんだ...!?」
カノンを心配して喋りかけてきた相手が、いきなり自分の頭に手を
ポンッと乗せると、そのまま優しく撫でてきた...。
「こういうのはこうして...人から撫でてもらった方が、痛みも何となく
ですが取れる感じがしてくるものなんですよ...。手を当てると書いて、
手当てと言いますしね♪どうです...痛みが少し楽になってきたでしょう?」
「うみゅ......そ、それは...その...楽と言うか...落ち着く...と言うか、
照れる...かな。でも、安心感が...うん、いい気分だな...」
たんこぶの出ている箇所を優しく撫でられていると、カノンの心が
ふわふわとした気持ちになっていく。
「どうです、先輩?そろそろ、痛みが落ち着いてきましたか?」
「ああ...落ち着いて...きた。でも、もうちょっと...そのまま撫でて
くれたまえ...」
ほわ~っとした顔で、カノンが相手に続きの撫で撫でをプリーズと
催促願う。
「あ、もうちょっとですか...わかりま―――ばうっ!?」
「こら!コー!!知らない女性の頭をそんな気安く、撫でるんじゃ
ありません!」
カノンの頭を撫でていた人物の頭上に、別の誰かがゲンコツを食らわせる。
「あいてて...。あ、ああ...それもそうだよな!お前を撫でる時の癖で、
つい反射的にやっちゃったよ...!本当にすいません、先輩!」
ナナに言われてハッとなった俺は、慌てる様に目の前の先輩へ
ペコペコと頭を下げて謝る。
「ん...気にするな。私も気持ち良かった...これからも―――」
「ったく...コーは目を離すといつも、いつも...」
「ちょっとナナ~!?首根っこを掴んで運ぶなって~!?イテテテテ...
けつが~おケツが割れる~!?」
カノンがコウに声をかけようとした時、目線に映るコウの姿は既に
遠くの方に映っていた。
◇◇◇◇◇◇◇
「...と、言うのが、私とコウの出会い...そして、コウを好きになった瞬間...」
その時の思いをくすぐったい気持ちになって思い出すと、カノンの表情が
恍惚へと変わっていく。
「なるほど、つまり...カノン先輩も、コウ君の撫で撫でにやられたクチですか...」
カノン先輩のその恍惚感、わかりますよ...。
だって私も、コウ君のあの撫で撫でにハートを全部持っていかれたもん...。
「なんだ?この口振りは...もしかしてクーナちゃんも同じムジナか...?」
「はは...そんな所ですね♪」
カノンの言葉に肯定すると、クーナが真っ赤に染めた頬をポリポリと掻きながら、
その表情をカノンと同じ様な恍惚へと変えていくのだった...。




