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【終わらない脅威】

エルゼ達が魔王を倒した頃。

ルナルロッカではーー。


「魔物が消えた!?」


安堵した冒険者が、その場に座り込む。


「まだ気を抜くな!」


別の冒険者は剣を構えたまま、

周囲への警戒を解かなかった。


街を襲っていた魔物が忽然と消えた。

何が起きたのかは分からない。


状況を掴めないまま、

ほとんどの冒険者達はしばらくその場から動けずにいた。


ミラベルを含む一部の冒険者は、

アリアンネとエルゼが、

何かしらの方法で魔物を止めたのだろうと察していた。


ギルドの職員達は街中を駆け回り、

住民や冒険者達に安全を伝えて回った。


アグニード達はギルドの前に集まっていた。


ミラベルが状況を説明していた。

「ギルマスとエルゼちゃんは、

魔の森へ向かったまま戻っていません」


「大丈夫かな?」

心配するヘレナ。


「あの二人なら平気でしょ!」

リゼが強がるように言った。


その時、街の入口の方から声が上がった。


その声につられて入口を見ると、

アリアンネとエルゼが戻ってきていた。

衣服は破れ、身体のあちこちに傷を負っていた。

それでも二人は、ゆっくりと街の中へ歩いてくる。


二人の姿を見た瞬間、

街中から大きな歓声が上がった。


歓声に包まれながらも、

二人はすぐにギルド内へ運ばれ、治療を受けることになった。


「二人とも無理しすぎです」

治療を担当していたギルド職員が、ため息をついた。


「魔王と戦って、生きて戻るとはな……。

本当に、とんでもない奴らだ」

アグニードは呆れたように二人を見つめた。


「正直、私は途中で心が折れかけていたわ」

アリアンネが静かにエルゼを見る。


「あなたに気づかされた」


「剣聖なんて呼ばれていても、

まだまだね……。

あなたには、礼を言わないといけないわ」


「そんな……」

エルゼが照れる。


応急処置を受けたあと、

二人はしばらくギルド内で休むことになった。


夕方になり、ようやく宿屋へ戻ることを許された。


宿屋へ戻ろうとするエルゼ達に、

ミラベルが話しかける。


「今回の件について、

ギルドで話し合いの場を設けます。

明日の午後、改めて顔を出してください」


エルゼ達は頷きギルドを後にした。

外に出ると壊れた建物の修復が始まっていた。


重い体を引きずりながら、

宿屋へ戻っていく。


部屋に入ると、エルゼはベッドに腰を下ろす。


ベッドに腰を下ろした瞬間、

エルゼの身体から力が抜けた。


歓声を浴びた実感よりも、

まだ生きているという事実の方が大きかった。


(琴音、怪我の具合はどうだ?)


(そこまで酷くはないわ、

あの魔王の攻撃も直撃は避けられてたから……)


(あれだけの魔王の力を、いくらスキルとはいえ

再現するなんて普通じゃないな)


翌日。

エルゼ達は午前中を宿屋で休んで過ごし、

午後になってからギルドへ向かった。


街の中を移動していると……

街の住人や冒険者達が、次々と声をかけてくる。

その反応に、エルゼは少し照れくさくなった。


「エルゼちゃん、すごいことになってますね」


「ほんとほんと、もう英雄扱いじゃない」


そんな話をしているうちに、ギルドへ到着した。


エルゼ達が入ってくるのを見るなり、

ミラベルはすぐに奥の部屋へ案内した。


アリアンネが話し出す。

「全員集まったわね」


「昨日の一件だが、

以前現れたカミラが関係しているのは間違いない」


「彼女はスキルの力で、

古代の魔王ゼルヴァディオンを再現した」


「街を襲った魔物達は、

その魔王が生み出したものと考えていいだろう」


「エルバルトの力も異常だった。

あの男は、魔王や魔物達の力を自身の力へ変えていた可能性がある」


「普通の冒険者に出来ることではないだろう。

もう彼らは人間でもないかもしれないが……」


「ただ、一つ気になることがある」


アリアンネの言葉に、部屋の空気が重くなる。


「倒したはずのエルバルトの痕跡が、ほとんど残っていなかった」


「それだけじゃない。

魔の森にも、魔王や魔物達の痕跡は何も残っていなかった」


「カミラの行方は分かっていない。

残りの者達も、まだどこかに潜んでいる可能性がある」


「それと、カミラのスキルについてだが、

なぜ古代の魔王を再現できたのか。

そのスキルの詳細は、まだ分かっていない」


ヘレナが不安そうに尋ねる。

「カミラのことですが、

以前、アリアンネさんや私達も再現されていましたよね」


「再現されたのは一度きりなので、

同じ人物を何度も再現することはできないとか、

何か制限はありそうな気がします」


「あれほどの存在を再現できるなんて、

脅威としか言いようがありませんね」


「再現だろうが何だろうが、魔王級を出せる時点で危険だ」

アグニードが低い声で言った。


ミラベルが口を開いた。

「今後しばらくは、街の警備を強化します。

冒険者の皆さんには、交代で見回りに出てもらうことになります」


「それと、エルゼちゃん達の今回の功績については、

正式にギルド本部へ報告します」


「エルゼちゃん達の評価も、見直されることになるでしょう」


アリアンネは全員を見渡した。


「魔王は倒した。けれど、脅威が消えたわけではない」


「カミラ達が何を企んでいるのか、まだ分かっていない。

だから全員、しばらくは警戒を怠らないで」

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