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とらわれお姫さまのゆるふわ日記  作者: 猫の玉三郎


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50 いざ婚約式

 今朝はそわそわして目が覚めました。


 簡単に朝食をすませたあと(この時に魔王さまとはお会いできず)、身支度のために一度お風呂にはいってメイドたちがこれでもかとキレイにしてくれました。


 ぽかぽかした気持ちでバスローブを着て、それからフロスとパピリスが待つ部屋へと向かいました。部屋につくとふたりとも気合十分といった感じで、いつにもまして楽しそうです。


 トルソーに着せてあるのは特注のドレス。美しいティアラにそろいの首飾り。ビーズの刺繍が美しいローヒールの靴。ため息がでるほどに素晴らしい出来です、これがこの日のためだけに作られたというのだから、覚悟して着ないといけません。


「お美しいですわ、姫さま!」


 支度を終えるとメイドたちもわたしをほめてくれます。


「あなたたちのおかげです。ありがとう」


 みんな、朝早くから本当にありがとう。みなさんが頑張ってくれているんですから、わたしもしっかりと前を向いて歩こうと思います。


 婚約式は城から少し離れた神殿で行われるので、わたしとフロスとパピリスは馬車にのって会場へ向かいました。城下町もこの日に行われる婚約式のことを知っていて、あちこちに花がかざってありました。ちょっとしたお祭りのよう。町の人たちは馬車を見るなり笑顔で手をふってくれました。


 この時も魔王さまとは別々に行動していて、まだお顔を拝見できていません。


 神殿につくと時間まで休憩することになりました。フロスたちとお茶をのんでいると途中で神官長がお見えになり、お祝いの言葉をくださいました。


「次は結婚式ですね。いやはや、まちどおしい」


 神官長は気が早いです。でもまちどおしい気持ちはわたしも一緒でした。ふふ。


 そしてやっとお会いできた魔王さまはとても凛々しいお姿でした。ありきたりですけど本当に素敵で、わたしが詩人だったのなら言葉のかぎり褒めたたえることができたのに。


 わたし、ぽーっと見とれていたのです。それこそ周りが目に入らなくて、魔王さまだけが輝いて見えて……すると魔王さまはわたしに身をよせ、ほほに口づけをされました。


「本当に美しい。誰の目にも触れさせたくないくらいだ」


 魔王さまは罪なお方です。


 それから行われた婚約式はおごそかなものでした。立会人のもと、婚約のあれこれを記した羊皮紙にふたりのサインをいれて、指輪を交換して、参列者の方々にあいさつをして。……そうなのです。魔王さまの婚約者になってしまったのです。


 実感がわかないまま控室に戻って少し休憩をすると、今度は夜にあるパーティーに向けての準備です。国内からはもちろん、周辺国の要人もお招きしているので粗相があってはいけないとみな走りまわっているようです。わたしも人の目がなければ落ち着かずに走っていたことでしょう。


 お城に戻るとすぐに頭の飾りをとって着替えました。動きやすいデイドレスです。それから軽食をつまんで、今日お越しになるお客さまについてパピリスとおさらい。頭が煮詰まってくるとフロスと一緒に美容体操です。料理長が差し入れにと持ってきてくれたイチゴたっぷりのタルトは舌がとろけるくらいにおいしかったです。このときにはユニちゃんが遊びにきていて、いっしょにおやつを頂きました。


 あとでまたドレスを着替え、髪にいろんな飾りをつけつつお化粧をしなければいけません。婚約式のときとはまたタイプの違うドレスで、これも華やかで美しいのです。


 いま待ち時間に日記を書いています。

 もうすぐ着替えがはじまるでしょう。緊張でもう胸がどきどきしています。今日は落ち着くひまがありませんね。


 わたしが作ったブレスレットは入場の前に魔王さまへ渡そうと思っています。わたしのこの弱気もパーティーのにぎやかさに紛れてしまえば何とかなる気がするのです。


 ブレスレットも、パーティーも、どうかどうかうまくいきますように。魔王さまの足手まといになりませんように。





 さあ、そろそろ時間です。

 いってまいりますね。

ずっと続けられそうな気はするんですけど、ここでいったん完結にしたいと思います。ありがとうございました!

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