49 ブレスレット完成です
魔王さまへ渡すブレスレット、できました!
最後にちょんと糸を切った瞬間、大きな達成感に包まれました。とっても嬉しい。職人が作ったものには敵わないけれど、フロスが丁寧に教えてくれたからそれなりにキレイに仕上がったと思います。作る時間も楽しかったし、あとは魔王さまが受け取ってくださるかなのですが……
その不安をもらすと、フロスもパピリスもくすくすと笑ってしまいます。
「ぜったいに魔王さまは受け取ってくださいますよ。とてもお喜びになるんじゃないかしら」
「そうですわ。むしろここでお渡しにならなかったら、ショックで寝込まれてしまうかも。それくらい楽しみにされているんですから」
そうでしょうか。
そうだったらわたしも嬉しいです。
パピリスとフロスは魔王さまのお話を少しだけしてくれました。
「姫さまがこのお城へ来られて数日は魔王さまも落ち着きがなく、私たちにずっと姫さまの様子を聞かれるのです。ケガはしていないか、食欲はあるか、怯えてはいないかと」
「そうでしたね。あんな魔王さまを見るのはわたくしたちも初めてで……姫さまもそのころはお痩せになって体力もないようでしたし、魔王さまにつられるように城全体がそわそわしていました」
そんなに心配されていたとは……なんだか申し訳ないです。でもあの頃は城のみなさんがとても優しくしてくださるから、まるで天国にきたような心地でした。もちろん魔王さまもお優しくて、魔王さまがわたしにほほ笑んでくださった時なんかは胸がトクトクと高鳴ったものです。あ、これは今もそうでした。
少し話がそれたので戻します。
ふたりの言葉をあらためて文字にすると気恥ずかしさもあるのですが……でもわたしにとっても嬉しいものだったので、このまま書いていきましょう。
「だからわたくしたちは魔王さまのお心がすぐにわかったのですわ。姫さまは魔王さまにとって特別な方であると」
パピリスは嬉しそうに笑みを浮かべて両手を胸の前でくみました。夢見る少女のようにほおを赤くそめて。
「はあ、とってもステキ。いよいよ明日が婚約式なのですね。姫さまと魔王さまの小さな恋模様を見守っておりましたが、もう自分のことのように胸がときめいてしまいます」
フロスも嬉しそうに、でもそれ以上にキリっとしたお顔でつづけます。
「ええ、ほんとに。明日はうでによりをかけて姫さまをより美しく、魔王さまが惚れ直してしまうくらいドレスアップいたしますわ」
もう、ふたりには感謝しかありません。
「ありがとう」と子どもみたいなことしか言えなくて、しかも感極まって涙も出てきてしまって。どんなにはらっても出てくる不安や緊張を、ふたりの優しい言葉があたたかく包んでくれました。
「明日の婚約式、がんばります。魔王さまにもちゃんとブレスレットを渡しますね」
ふたりの応援してくれる気持ちを無駄にできません。
明日にそなえて今夜は早めに眠ることにしましょう。
おやすみなさい。




