48 吟遊詩人の物語
いま城下町でウワサになっている吟遊詩人が、お城にきて物語を披露してくれました。
吟遊詩人というのは楽器を片手に歌をうたい物語を聞かせてくれるのです。そういう生業の人がいるというのは知っていましたが、実際にお会いするのは初めてでした。背中に翼をもつ中性的な方でした。
彼のもつ弦楽器もはじめて見るもので、つま弾く音色はとても軽やかで美しかったです。そんな彼が聞かせてくれた物語はとても興味深いものでした。思い出しながら書き起こしてみます。
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砂漠の王はあまりに欲ばり。
気に入った女は次々とハレムへいれ、黄金の後宮は美しい女たちでいっぱいだった。だというのにまだまだ欲しいと目を光らせる。
ある日、旅途中である異国の少女を見そめた王は、またしても強引にハレムへ連れて行こうとする。少女はいやだと首を振ったが、砂漠の王は聞く耳もたぬ。ああ少女の運命やいかにと思ったそのとき、一緒に旅をしていた少女の兄が王の前に立ちふさがった。
兄は巧みな剣術で王の護衛を次々と倒し、その剣先を王ののど元へと突きつける。
「砂漠の王よ。あなたはなぜそうもたくさんの妃を求める」
王は憤怒した。
だが突きつけられた刃になにも手が出せない。
「妹は返してもらう」
そう言って異国の兄妹は王の前から消えていった。残された王は怒り狂い、追手を差し向けようとしたところで先ほどの問いが頭をかすめた。
なぜ自分は女を求めるのだろう。その問いはのどに引っかかった小骨のように、不快さを残し存在し続ける。
気分がそがれた王は王宮へ帰ると、その足で後宮へ向かった。そして突き動かされるまま言ってしまったのだ。
「後宮から出たいものは出ていい。咎めはせん。金も持たせる」
それから上へ下への大騒動。ハレムの女たちは王の気が変わらぬうちにとさっさと出て行き、広い後宮に残ったのはたった四人だった。あ然としつつも残った妃たちにわけを聞くと、ひとりは国のためと言い、ひとりはここでの暮らしが好きだからと言い、ひとりは帰る場所がないからと言った。そして最後のひとりは心底あきれたような顔をして「あなたを支えるため」と答えた。彼女は、王が歳若く苦労していた時から一緒にいた最初の妃だった。
王はこの残った妃を大事にすると誓ったそうだ。
あっぱれ、旅の兄妹は王の心に大事なものをとり返してくれたようだ。金と砂の国はこれからもどんどんと輝きを増していくことだろう。
物語はこれでおわり。
ああそうだ。出て行った女たちの中には、後宮でのよい暮らしが忘れられず、戻りたいと嘆くものもいるんだとか。
自分の行動がどういう結果につながるのか、後悔しないためには私たちもよく考えたほうがいいのかもしれない。
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こんな感じのお話でした。
砂漠の国はわたしが嫁ぐはずだった場所で、勇者さんたちが旅しているところです。遠いような近いような、不思議な感覚。
吟遊詩人の方はあちこちを旅しながら歌や物語を披露し、そして現地の人たちから話を聞きながら新たな物語をつむぐそうです。となると、砂漠の王のお話にはモデルとなった実話があるということでしょうか。
砂漠の国によい治世が続くことを祈りたいと思います。勇者さんもお元気でありますように。
勇者「へっくし」




