37 フユ将軍のお出ましです
フユ将軍とお会いしました。
見た目は熊のように大きくて雪のように白いヒゲが立派なお方なのですけれど、優しい人柄で初対面のわたしにも大変よくして頂きました。
将軍とお会いしたのは城門をでてすぐのところ。到着の知らせを受けて魔王さまと一緒にお迎えにあがったのです。周囲には朝から降りはじめた雪が辺りにうっすらと積もり、寒さがぐんと身に迫る気温でした。ユニちゃんもやってきて降ってくる雪を珍しそうに追いかけていました。今日はユニちゃんのお母さまも一緒に来ていて凛とした姿が美しかったです。もしかしたらユニコーンたちもフユ将軍のお出迎えにきたのかもしれませんね。
外の空気は冷たいのですけど、澄んでいるというか、清らかな感じがしました。不思議です。
「将軍、今年も会えて嬉しいぞ」
「主上こそ健在で何より」
おふたりががしりと握手を交わすと、辺り一体に雪の混じった風がびゅうと吹きつけます。寒さで思わず肩をすくめてしまいました。
「して、こちらにいらっしゃる可愛らしいお方はもしや……?」
「我が婚約者だ」
「なんと」
紹介いただいたのでご挨拶をしました。フユ将軍はお顔をくしゃりとして笑顔を浮かべます。表情豊かな方なのかもしれません。
「今代は独身を貫くのかと思っていたが……よかった。いやよかった。こりゃ大盤振る舞いをしてやらにゃいかんな」
にししと笑うフユ将軍はとても嬉しそうでした。
将軍がこちらへいらっしゃるのは交易もかねているらしく、北の名産品が手に入るのを楽しみにしている方たちがたくさんいらっしゃるのだとか。料理長は「将軍が持ってくる鹿肉ジャーキーにかなうツマミはない!」と言い切るほどです。堅いけれど、塩気と肉のうま味がかむたび口の中へ広がって、それを度数の高いお酒でくいっと流し込む。ジャーキーもお酒も口にしたことはありませんが、料理長がそこまでおっしゃるのならとても美味しいものなのでしょうね。
今夜は大広間で将軍の歓迎パーティーが開かれるそうです。今まではそういう催しものには参加していなかったのですけれど、体力もついてきたし、魔王さまの婚約者ということもあるので、がんばって出席したいと思います。
はあ、緊張してきました。




