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ブルームーン  作者: 葡萄
8/17

8話 シャムロック

約束の日の夕方。

駅の改札前で、絢香(あやか)はスマホをいじりながら(かおり)を待っていた。

人の流れの中で、ふと名前を呼ぶ声が聞こえる。

「絢香さん」

顔を上げると、少し離れた場所で薫が片手を上げていた。

笑顔を浮かべながら手を振るその姿に、絢香の口元も自然とほころぶ。

「早いですね。まだ三十分もありますよ」

「まぁね。遅れるのは嫌だから」

「そうなんですね。じゃあ、行きましょうか」

薫は軽くうなずくと、絢香の歩調に合わせて歩き出した。


薫は談笑しながら、絢香を自宅へと案内していた。

並んで歩く二人の前に、高級住宅が整然と並んでいる。

どの家も手入れが行き届いていた。

やがて、薫がふと足を止める。

「つきました。ここが私の家です」

絢香は思わず目を見開いた。

薫の家は、先ほどまで見たどの家よりも大きく、高い塀に囲まれていた。

「どうぞ、こちらです」

薫が扉を開けて先に入る。

絢香はその後を追いながら、思わず呟いた。

「薫ちゃんの家、大きいね」

「はい、よく言われます」

敷地の奥には、ガレージにずらりと並ぶ四台の高級車。

「運転するの?」

「いえ、免許持っていなくて・・・全部お父さんの車なんです」

そんな会話を交わしながら玄関に着く。

薫がドアノブを回して、扉が開いた。

中に入ると、正面に吹き抜けの階段と、天井から下がる大きなシャンデリア。

白い壁には整然と絵画が飾られ、柔らかな照明が金色の縁を照らしていた。

「すごいね・・・絵画、好きなの?」

「いえ、お父さんが好きなんです。昔、よく美術館に連れていってもらいました」

「そうなんだ」

奥へ進むと、広々としたリビングが現れた。

目の前に広がる空間の大きさに、絢香は謎の安心感を感じた。

「飲み物を持ってきますね。少し待っていてください」

薫が台所へ向かうと、絢香はゆっくりと室内を見渡した。

白いカーテンが風に揺れ、窓際には観葉植物とピアノ。

棚にはトロフィーや家族写真。

幼い薫と、その隣で微笑む男性の姿が写っている。

(幼稚園生の頃かな?)

そんなことを思っていると、

「お待たせしました」

と声がして、薫が紅茶を運んできた。

ティーカップを二つ置くと、薫は絢香の隣に腰を下ろす。

「そういえば・・・絢香さんが家に来るの、初めてですね」

「そうだね」

絢香は紅茶を口に含んだ。

「美味しいね、この紅茶」

「はい、少し良い茶葉を使ってみたんです」

薫が少し誇らしげに笑う。

絢香は紅茶を半分ほど飲むと、軽く首を傾げて言った。

「薫ちゃんって、料理できるんだよね?」

「はい、レシピを見ながらなら」

「そっか。せっかくだし、薫ちゃんの手料理、食べてみたいな」

絢香の笑みに、薫の鼓動が一気に早まった。

「は、はい、いいですよ・・・」

「ありがとう。楽しみにしてるね」

絢香は穏やかに笑い、薫はティーカップを持った。

(私・・・絢香さんの笑顔に弱いな・・・)

そんなことを思いながら、紅茶の一口飲んだ。

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