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作戦






「いくら相手が族だとしても、規模は大規模。籠城されたらそう簡単に突破は出来ないな……」




「諸侯達が集まっているとはいえ、連携なんてとったこともないですからね~」





黄巾党の本隊がいる城の近くまで来ている、俺達孫策軍。


手柄を立てようと、数多くの諸侯たちが周辺に滞在している。


今回の戦で最も大切なこと、それは大きな手柄をあげること。


つまりは一番乗りを果たすということだ、闘うことだけが目的ではない。




―――そんな思惑は当然、周瑜や陸遜も十分に理解していた。




名声は欲しいが無理はしたくないっていうのが本音だろうしな。





俺達がすることは一つ、最後に参戦しておいしいところだけを持っていく。







――――つまりは漁夫の利。





他諸侯と黄巾党が戦っているところに、最後に参戦し、敵大将の首を討つ。



最も効率的かつ、人身被害は少ない。





しかし、実際そう上手くいかないところが悩みの種だ。















「ふむ……厄介な城だな」




「攻めずらくて、守りやすい、まさに教科書のようなお城ですねぇ……」






守りの基本、責めづらくて守りやすい位置に陣取る。


本城の後ろは断崖絶壁が存在し、回り込むことはまず不可能だ。


……だが日本には例外も存在した、そう源義経の例だ。


崖を馬で駆け降り、平家の裏を取ったといういう例があるため、出来ないわけではない。



……が、この状況でそれをやるのはリスクは高い。








「もう……めんどくさいから正面から突撃でいいんじゃないの?」




「うむ、儂も策殿に賛成じゃ」





「何を馬鹿なことを! タチの悪い冗談を言っている場合ではありません!」







策もなく、単純に正面から突撃しようと提案する孫策と黄蓋を孫権が一刀両断する。







「結構本気なんだけど……」





「なおタチが悪いです」








一言であしらわれ、肩を落とす孫策。



……ふむ、このままじゃ埒が明かないな。







「時雨、お前の意見を聞かせてくれ」





「俺の?」





「そうだ、何でもいい。気がついたことがあったら言ってくれ」






周瑜に促されるまま、俺はその地図を覗き込む。



とにかく、正面突破が出来ないと分かった今、何とかして相手に痛手を負わせなければならない。



 黄巾党も易々とこの城を落とすことなんて出来まいと考えているだろう。だからそれを逆手にとれば形勢は逆転するはずだ。



本陣、城壁と視点移していき、目線を横に移していく。



と、一つの建物に目がとまる。







「これは……倉庫か何かか?」





「ですね~」





「隣にあるのは宿舎かしらね? 飛鳥、何か良い案でも浮かんだの?」








良い感じに死角になっているな……攻めるとするのならここからか。


死角とはいえ、城壁を上り、内部に侵入しなければならない。



何千、何万もの大人数が城壁を上っていくのを黄巾党が気がつかないわけがない。



てことは多数で攻め込むことは不可能……何かないか。


――――少人数でも、城壁で囲まれた相手に大きな痛手を負わせる方法が。






「………火だ」





「火?」





「あぁ、そうだ」





孫策が首をかしげながら、俺に尋ねてくる。








「夜間にまぎれて何か所かに火を放つ。これを行うのは少人数でだな。理論上は可能だとは思うんだが」










俺は一言そうやって呟くと、周囲を見渡す。


この作戦を遂行させるためには、素早く、尚的確に行動する必要がある。そんな探索行動に慣れた人間は………




――――いた。




孫権の部下の周泰と甘寧、この二人ならうまくやれるかもしれない。




確認すると、アイコンタクトで周瑜に伝える。




俺の意図していることを察したのか、周瑜も無言で頷く。







「祭殿。諸候達の軍が引き揚げた後、部隊を正門に集結させてください」








「それは構わんが、夜襲を仕掛けるのか?」




「掛ける振りだけで結構。目をそちらに向けるための偽装です」





「なるほど、囮になるわけか」





「その後に、甘寧と周泰に放火活動を行ってもらう。……二人とも、頼めるか?」





「御意」




「はいっ!」






よし、あとは総仕上げだ。


今回は俺は戦場に武官としては出陣しない。


周瑜に言われたことだが、あまり戦場で目立ちすぎても袁術の目には止まってしまうとのこと。……もう遅い気もするが。


だから今回は俺は指示に回るだけ。


時雨隊と孫策、黄蓋の隊が混乱する城内に突入するという流れになるのだが………


そこに納得しない子が一人。








「し、しかし! 絶対に成功するといった保証がない以上、お姉様が前に出るのは反対です!」






あー……心配なのは分かるが心配症過ぎるのも問題だと思うぞ……








「蓮華。戦に絶対は無い。それぐらい分かっているでしょ?」




「しかし……母様が死んだ時と、状況が良く似ていて……」





……なるほど、母親である孫堅の死がトラウマになっているのか。


それでもトラウマを克服していかない限り、王とはなれない。





「大丈夫、私は前戦には出ないわ。後は祭に任せるつもりだしね」











――――落ち込む孫権に孫策は優しく微笑む。それと同時に見せようとする。自分の王としての戦い方を。

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