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2ーりのりんと入学式

 由良です、皆さんこんにちは。

 さっきは救世主・佐々木さん(ちなみに由羽も)によって入学式早々遅刻は免れました。いや~、佐々木さん(ちなみに由羽も)、ありがたや~ありがたや~。



 本当にギリギリで新入生点呼に間に合ったから良かったけど、ちょっと目立っちゃったのはまぁ、ね。まぁ本当にギリギリだったし、しょうがないっちゃしょうがないんだけど。点呼から入学式まで少し時間があるようだけど、もう入学式会場である講堂に行っとこう。他に行くところとかないし。

 ところでクラス分けを人混みに紛れながら頑張って見てきたら、[Aクラス]の出席番号1番だった。

 若高には[Aクラス][Bクラス][Cクラス][Dクラス]と4つのクラスがある。多分、学力順とかではないとはおもうけど、都市伝説的な感じで「A>B>C>Dみたいな感じ」って聞いたことあるなぁ。あ、となると私、頭いいって事だな? ふふふ、あとで由羽に自慢しよう。

 …あれ、でももしかして[Aクラス]の1番となると、もしや。


 私、名前最初に呼ばれるんじゃねぇかあああああああああああ。



 い、いや落ち着け。落ち着け、自分。どど、どうせ皆最終的には呼ばれるんだし? たかが最初ってそんなこと関係ない…わけねえええええええ!!

 だって、最初だよ? ファーストだよ、ファースト? 超目立つじゃん!!

 …そう、この私、目立つのは本当に嫌いなんです。ノーセンキューです、ガチで。理由は、と言われると思い当たる節がいっぱいありすぎるくらい、目立つのを嫌っているんです、はい。

 この世には俗に言う、「目立ちたがり屋」という奴がいるみたいだが、気持ちが全くわからん。目立ってどうするんだよ、全く。目立ったってそんなの、百害あって一利なしだ。





 ところでそんなことは置いといて今本当に困っている 。いやー本当に言いにくいのだが、友達がいない。

 い、いや待て! 普通に小学校とか中学校とかいるよ!? いますよ!? うちの中学から来た人が私だけだからこうなっているのであって!

 でも、はっきり言って話し相手ほしいんだよね、切実に。まだ入学式開始まで時間あるし。ってことで! この隣にいる「井岡 莉乃」っていう少女に声掛けたいと思います! 井岡さんは同じ[Aクラス]で出席番号が2番! さっきのクラス分け表でちゃんとチェックしてきたんだよ、私は。まぁ、井岡さんこれから長い付き合いになりそうだし、ぜひともお友達になっていただきたい! よし、気合いでいこう!

「あ、こんにちはー! 浅原 由良って言うんですけど、あなたはなんて名前ですかー?」

 よし、偉い。偉いぞ、自分! ちゃんと噛まずに言えてるし! まぁぶっちゃけ名前知ってるんだけど、いきなり「井岡 莉乃ちゃんだよね?」とか言ったら、何こいつストーカーかよ、とか思われそうで怖いし、まぁこれで合ってるんだよね?

「浅原…? もしかして浅原番長となんか関係あるの? あ、それと私は井岡 莉乃。よろしくね」

 にこっと笑った井岡さんと対照的に背中に汗が流れる。浅原番長とは間違いなくうちの兄の事だ。由斗兄は昔から由羽と同じく武闘派なので元々喧嘩とかには強かったのだろう。しかし、なにも都内一まで登り詰めなくてもよかったのではないだろうか…。現状に戻るけど、ぶっちゃけ私は兄と関係ないということにしておきたい。現にこうやって初対面の自己紹介途中で出てくるほど有名な奴と家族です、なんて言ったら私は目立ってしまう! それだけは嫌! あーでも本人が聞いてないとしても、家族が自分のいない場所で家族に「家族じゃない」って言われたら嫌だよね…、やっぱり。うーん…しょうがないか、最初から正直に…

「あー…いや? 別に関係ないけど? なんで?」

 由斗兄ごめん。つい…っ、つい口から飛び出ちゃったんだよっ! 出来心なんだ…、許してくれ…

「え、そうなの? 関係ないんだー、噂では今年浅原番長の妹さんが若高に入るって聞いたんだけどなぁ。デマだったのかな」

誰だ、一体そんな噂流した輩≪やから≫は!?

「そ、そーだよ! と、ところで浅原番長ってそんなに有名なの? …えと、井岡さん」

「なーに言ってんの! 浅原番長知らないの!? まっさかー! 都内一の不良だよ! この若高も浅原番長が統治してんの。浅原番長はこの学校の生徒じゃないのにだよ? ほんと凄いよね! あ。あとさ、井岡さんって堅苦しくない? 莉乃でいいよ、莉乃で。その代わり私も由良って呼ばせてもらうけどね?」

「え、いいの!? じゃあよろしく、りのりん!」

「え!? りのりん!? いや、それはまぁ…いっか」

「あ、入学式始まるっぽいね」

「あ、ほんとだ」

 そこで途中で会話をきり、2人とも口を閉じて講堂の前方のステージに目を向けた。それにしても、友達できてよかった。りのりん、けっこー良い子っぽいし、てか良い子だし。でもなんで由斗兄についてあんなに知ってんのかな。由斗兄、「目立ちたがり屋」だからなぁー。

「Aクラス、浅原 由良」

「…っ!? は、はいっ」

 急に名前をマイクを通して大声で呼ばれ勢いよく立ち上がる。変じゃないよね、変じゃなかったよね!? 私の返事!

「────?」「────…」「─!───!」

 軽く辺りを見回すと色んな人が自分を見て何かを囁き合っていた。

(…ん? あれ? さっきまでこんなにざわざわしてなかったと思うんだけど。私の返事そんなにヤバかった?)

 りのりんの名前が呼ばれ、それと同時に席に座る。しかし、座っても皆が自分に注目しているような錯覚に陥る。いや、錯覚じゃなくて本当に目立っているのだろうが。

「やっぱりこうなると思った」

 りのりんが急にぼそりと呟いた。

「え」

「浅原って言えば皆そりゃあ浅原番長の身内かなって思うに決まってんじゃん? それに今年、さっきも言ったけど浅原番長の妹さんが若高に入る噂があるって言ったでしょ? あれ結構有名だから、皆、多分由良のことだって思ってると思うよ。さっきの私みたいに」

 おお、なんてこった! 由斗兄め、恨んでやる…。なんでそんなに有名になってんだ! というか、その噂流したの本当に誰だよ! 出てこい、このやろー!

「そんなに有名なんだ…、その噂。誰が流したんだろ」

「…さぁね? それは知らないけど、この噂は結構有名になってるよ」

「まじか」

 そこは嘘でも、一部の人間しか知らないと思うけど、って言って欲しかったよ、りのりん。ていうかまだ色んな人の視線感じるわー…、あはははは。絶対目立ってるよね、目立ってるよね私! …あ、ヤバい。気持ち悪くなってきた…。

「…!? 大丈夫!? ちょっと由良!? 顔色悪いよ!」

「あははは、大丈夫。ちょっと気持ち悪いだけだから。…ぅ。…おぇ…」

「いや大丈夫じゃないでしょ!」

「いやいや、…うぇ。全くだいじょー…ぐぇえ」

「いやいやいや! ちゃんと喋ることさえ出来なくなってんじゃん!」

りのりん…良い子だわぁ…。超心配してくれてるじゃん…!

「あと校長の話だけだから、もう入学式終わるよ! それまで頑張って耐えて!」

うんうん、頑張って耐えます。耐えてみせます、この私!





「そして皆さんが―――――であるのですから――――――――でしょうか。今年は――――――――ようです。とても――――――致しまして――――――…」


……なっげええええええええーーーーーーっ!!

え、もうなに? これは新手の罰ゲームか何かですか、先生。しかも声小さいから何言ってるか聞こえないし! さっき、いきなり1人で笑いだしてたけど、周りをよくみて!? 皆は先生と違って苦笑いしてるだけだからね!?

「由良起きてる? あ、起きてる。 てか、校長の話、ながいね…。眠いんだけど。ていうかよく話題尽きないよねー…。何言ってるか知らないけど」

「いや多分「いつまで話題が続くのか調査」を行ってるんじゃないかな…。いや絶対そうだわ、それしか有り得ない」

りのりんが眠そうに小声で話し掛けてきたので私も小声で話し返す。私の言ったことがつぼったようで少し背中を震わしている。私は真面目に言ってるんだよ、りのりん。

「――――――皆さんが充実した実りのある高校生活を送れるよう願っております」

そう校長が言うとアナウンスが流れた。

『新入生、退場。皆さん、拍手で送りましょう』

すると周りの新入生が一斉に立ち上がった。うわ、私だけワンテンポ遅れちゃった。りのりんも平然と立ってるし…。

拍手が沸き起こる講堂の中、1列になって講堂の外へと出ていくようだ。…で、なんで私が一番最初なんだあああああ。[Aクラス]の出席番号1番だからか!? くそぉっ、この世は理不尽すぎる…っ!

それでも勇気を奮い起こして拍手の沸き起こる講堂の外へと足を動かす。前にも隣にも人がいないからか、凄く孤独だ。自分の心臓の音がよく聞こえる。ドアが遠い。今すぐ走り出したい。そんなことできないのはとっくにもうわかりきっているのだけれど。





「うわー、超疲れたわー。入学式ってこんなに疲れるもんだっけ? 由良、途中しんどそうだったけど、もう大丈夫? 保健室いく?」

「いや、いいよ…。入学式初日だしさすがにいきなり保健室もほら、あれでしょ? それにもう大丈夫だし」

りのりんは私の真後ろの席だ。近くに話せる友達がいるのは本当に心強い。特に私のような人にとればありがたすぎる席順である。

担任は小笠 久という熱血男教師であった。顔や服装、鍛え上げられた筋肉からもう大体見当はつくが体育を教えるそうだ。小笠は短髪にジャージで濃い顔をしていた。ちなみに趣味は筋トレだそうで寝る前は必ず筋トレを欠かさずやっているそうだ。休日も大抵家の近くのジムに通っているらしい。

「なんかもう、暑苦しいって感じ」とりのりんは言ってるがまさにそう。暑苦しい。今日はどちらかというと寒い天気のはずなのにこの教室だけムシムシと肌にまとわりつくように暑いのは果たしてなぜだろうなぁ。


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